この型の要点
- 売り物は「顧客が自分では出せない判断」と「その判断を実行に移す支援」です。時間を売っているように見えても、顧客が払っているのは判断の質に対する対価です。
- 収入は担当者の稼働に結びついており、単価を上げるか人を増やさなければ売上が増えません。この制約をどう緩めるかが事業設計の中心になります。
- 提案から受注までにかかる労力が料金に含まれない場合、受注できなかった案件の費用は受注した案件の利益で賄うことになります。
収益が生まれる仕組み
お金を払うのは、新しい事業の判断、組織や業務の見直し、専門領域の課題解決などを抱えた企業や組織です。対価の形は大きく分けて、担当者の人数と期間に単価を掛ける人月型、あらかじめ決めた成果物に対する一括型、顧客の成果(削減額や売上増)に連動する成果型があります。人月型は受託側の費用と請求が揃うため赤字になりにくい反面、顧客から見ると「時間を買っている」感覚になり、価値の説明が難しくなります。成果型は価値が伝わりやすいものの、成果の測り方と顧客側の実行力に左右されます。
費用の中心は担当者の人件費で、これに提案活動の時間、知見を整える時間、担当者の育成が乗ります。利益が出る構造は単純で、担当者の単価と稼働している時間の割合が利益率を決めます。稼働していない時間、つまり提案・学習・待機の時間が多ければ、単価が高くても利益は薄くなります。
- 収入:人月単価×期間、成果物一括、成果連動、継続的な相談枠。
- 費用:担当者の人件費、提案活動、知見の整理と教材化、育成。
- 見えにくい費用:受注に至らなかった提案の作成時間と、案件の合間の待機時間。
成り立つ条件と、裏側の仕事
顧客側の条件は、判断を誤ったときの損失が大きく、自社の中にその判断を下せる人がいないと自覚していることです。判断の重みが小さい場面では、社内で考えたほうが早いと感じられます。供給側の条件は、その領域で判断を下してきた経験を持つ人がいることと、その人の経験を別の担当者が使える形に変えられることです。
自社の能力として問われるのは、案件で得た知見を、次の案件で使える型に落とす力です。診断の手順、論点の整理の枠、資料の雛形などを整えていくと、経験の浅い担当者でも一定の質で支援できるようになり、人を増やして売上を伸ばす道が開けます。逆に、全てが特定の人の頭の中にあるうちは、その人の時間が売上の上限です。
裏側の仕事は、まず提案です。顧客の課題を聞き、進め方と成果の見通しを文章にし、見積もりを出す。この工程は対価を受け取らずに行う場合があり、受注できるかも分かりません。次に、案件の途中で起きる範囲の変化への対応です。当初の想定と違う課題が途中で出てくることがあり、どこまでを契約内とし、どこからを追加とするかの調整が続きます。さらに、顧客の担当者が社内で説明できるように資料や言葉を整える支援も、表からは見えにくい仕事です。
向く事業・向かない事業
向くのは、特定の領域で繰り返し似た判断を求められ、その判断に手順や枠を作れる余地があるものです。領域を絞ることで知見が蓄積しやすくなり、提案の際にも「この課題ならこの進め方」と即座に示せるため受注の効率が上がります。
向きにくいのは、案件ごとに領域が異なり知見の再利用が起きない場合や、顧客が判断ではなく手を動かす人手を求めている場合です。また、成果を顧客側が実行しないと出ない構造なのに、成果連動の対価だけに頼る設計は、受託側が制御できない要因で収入が決まるため、注意が必要です。
追いかける指標
- 稼働率:担当者の勤務時間のうち、請求できる案件に充てた時間の割合です。月ごと、担当者ごとに見ます。
- 提案の受注率:提出した提案のうち受注に至った割合と、提案一件あたりにかけた時間です。
- 案件あたり粗利:請求額から担当者の実際の稼働費用を引いたもので、当初の見積もりとの差を案件ごとに追います。
- 継続・紹介による受注の比率:新規受注のうち、既存顧客の継続や紹介から生まれた割合です。提案費用の重さを左右します。
- 知見の再利用回数:整えた手順や雛形が、別の案件で使われた回数です。人に依存しない度合いを表します。
- 範囲変更の発生率:契約途中で範囲の追加や変更が起きた案件の割合です。
新規事業として小さく試すなら
- 自分たちが判断を下せる領域を一つに絞り、その領域で困っている企業に、短時間の無償相談を数件行います。どんな問いが繰り返し出るかを記録します。
- 繰り返し出る問いに対して、診断の手順と論点の枠を簡単な形にまとめ、次の相談ではそれを使って進めます。手順があることで相談の質と速さが変わるかを確かめます。
- 一社に対して期間と成果物を限定した有償の小さな案件を提案し、実際の稼働時間と請求額の関係を記録します。見積もりと実績のずれの原因を洗い出します。
- 案件で作った資料や手順を、別の担当者が使って次の案件を進められるかを試します。使えるなら人を増やす設計に進み、使えないなら知見の型化に戻ります。
設計時の注意点
価格の面では、人月型と成果型を混ぜる場合、どの部分を固定で受け取り、どの部分を成果に連動させるかを明確にします。成果の定義、測り方、測る時期、顧客側の実行が滞った場合の扱いを契約前に文章で合意しておかないと、後で対価そのものが争いになります。
契約の面では、成果物の範囲と、範囲外の依頼の扱い、成果物に含まれる知見の権利の帰属を定めておきます。案件で得た知見を他の顧客に転用できるかどうかは、事業が続くかに直結する論点です。個別の契約条項については専門家へ確認してください。
運用の面では、担当者の稼働率を上げようとすると提案と学習の時間が削られ、長期的に知見の蓄積が止まるおそれがあります。稼働に充てる時間と、型化や育成に充てる時間の配分を、あらかじめ決めて守ることが必要です。
信用の面では、顧客の内部情報を扱う以上、情報の管理と利害の衝突の扱いを明確にします。競合する顧客を同時に支援する場合の線引きは、事前に決めておくべき事項です。
この型が見られる企業事例
- Booz Allen Hamiltonの政府向けコンサルティングに学ぶ事業設計
- 株式会社ベイカレントのコンサルティング事業に学ぶ事業設計
- 株式会社電通グループの広告・マーケティング事業に学ぶ事業設計:4地域の利益率の差
- 船井総研ホールディングスの経営コンサルティングに学ぶ事業設計:月次支援と経営研究会
- アイ・アールジャパンホールディングスのIR・SRコンサルティングに学ぶ事業設計
この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、収益の構造、成り立つ条件、検証の進め方を中心にまとめています。法務・税務・会計の制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27