この事例の要点
- CoStar Group, Inc.は、不動産のオンラインマーケットプレイス、情報・分析、3Dデジタルツイン技術を提供し、2025年のrevenueは$3,247 million(前年比19%増)、income (loss) from operationsは$(72) million、net incomeは$7 millionでした(Form 10-K、FY2025)。
- 事業はCommercial Real Estate(売上$1,787 million)とResidential Real Estate($1,460 million)の2セグメントです(Form 10-K、FY2025)。
- 売上の約93%がサブスクリプション契約からで、料金は利用量やクリック数ではなく月額固定が原則です。1年以上の契約の更新率は約89%でした(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は、建物固有の情報を集めたデータベースを基盤に、情報へのアクセス・分析・活用のための専用ツールを提供していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
Commercial Real Estateの主なブランドは、商業不動産インテリジェンスの統合プラットフォーム「CoStar」、商業物件の売買・賃貸広告のマーケットプレイス「LoopNet」、3Dデジタルツインのホスティングを主にサブスクリプションで提供する「Matterport」、事業売買の「BizBuySell」、オークションの「Ten-X」です。Residential Real Estateは、賃貸・購入を探す消費者を集めるマーケットプレイス(米国のApartments.com、Homes.com、Land.com、オーストラリアのDomain、英国のOnTheMarket)を運営し、エージェント、オーナー、管理会社にマーケティングとリードを販売します(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上の大半は、自動更新され、多くが1年以上の期間を持つサブスクリプション契約から生まれます。顧客に定期的に使ってもらうため、同社は利用量や有料クリック数に応じた課金ではなく、月額固定の料金を課すのが原則だと説明しています。料金は、拠点数、ユーザー数、対象物件数、契約するサービスの数、広告する物件数、検索結果での表示の目立ちやすさなどに基づいて決まり、売上は契約期間にわたって定額で計上されます(Form 10-K、FY2025)。
取引ベースの売上は、個別物件のプレミアム掲載、デジタルツイン作成のデータ取得サービス、Matterportのカメラ販売、Ten-Xのオークション手数料が中心です。1年以上の契約からの売上比率は約76%(前年81%)に下がり、取引ベースのDomainとMatterportの影響と説明されています。費用面では、cost of revenueが$686 million(売上の21%)、selling and marketing(customer base amortizationを除く)が$1,560 million(売上の48%)です(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- revenue $3,247 million(19%増)、Commercial Real Estate $1,787 million(18%増)、Residential Real Estate $1,460 million(20%増)(Form 10-K、FY2025)。両セグメントが伸びていることが読み取れます。
- CoStar $1,259 million(9%増)は加入者増とインフレ連動の値上げ、LoopNet $312 million(11%増)は有料掲載数と掲載単価の上昇による(Form 10-K、FY2025)。データ事業の成長が「数」と「単価」の両方で生まれていることが読み取れます。
- annualized net new bookings 約$308 million(前年$250 million)、契約更新率約89%(Form 10-K、FY2025)。翌年の売上の先行指標となる新規受注が増えていることが読み取れます。
- Commercial Real Estate Adjusted EBITDA $672 million、Residential Real Estate Adjusted EBITDA $(230) million(前年から$131 million改善)(Form 10-K、FY2025)。商業側の利益で住宅側の投資を支える構造が読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「データ事業」と「サブスクリプション」の型を組み合わせたものと読めます。建物単位の情報を継続的に集めて標準化する仕事は費用がかかりますが、一度整えたデータベースは、情報サービス(CoStar)、広告マーケットプレイス(LoopNet、Homes.com)、分析やAI機能といった複数の商品に使い回せます。
料金を月額固定にしている点は、データ事業の収益を安定させる設計だと読めます。定額なら顧客は日常的に使い、使うほど乗り換えにくくなり、更新率約89%はこの設計の結果として読めます。裏側では、多くの軸で料金を決めるため、契約条件の設計と更新交渉を担う営業組織が必要になり、selling and marketingが売上の48%を占めていると考えられます。
トレードオフは、住宅側のマーケットプレイスへの投資です。Residential Real EstateはAdjusted EBITDAで$230 millionの損失であり、商業側の利益で賄っています。また、取引ベースの売上が増えるとサブスクリプション比率は下がるため、継続収益の比率と成長のどちらを優先するかの判断が問われると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が集めているデータのうち、複数の商品に使い回せる「基盤」になっているものは何か。
- 料金を利用量連動にするか月額固定にするか、顧客の利用頻度と継続率の観点で選んでいるか。
- 新規受注(bookings)と更新率を、売上とは別の先行指標として追っているか。
- 利益の出る既存事業から、赤字の新領域にどれだけ・いつまで投資するかを決めているか。
小さく試すなら
- 自社の保有データを一覧にし、既存商品以外に使える用途を2〜3個書き出す。
- そのうち1つを、少数の既存顧客に月額固定の追加サービスとして4〜6週間提供し、利用頻度と継続意向を測る。
- 利用頻度と継続意向の関係を確認する。頻度が高い顧客ほど継続意向が強ければ、定額制での正式提供と料金軸の設計に進む。
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資料の位置づけ
企業・サービス:CoStar Group, Inc. / 商業不動産データと住宅マーケットプレイス「Homes.com」。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末 2025-12-31)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27