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Delivery Hero SE「フードデリバリーと自社倉庫Dmart」に学ぶ手数料と配送料と直営小売を重ねる事業設計

料理の宅配仲介に、自社配送の料金と広告、さらに自社倉庫の食料品販売(Dmart)を重ねるDelivery Heroの事例です。2026年上期の半期財務報告書から、流通額に対する収益の厚みの変化を確かめます。

分類:企業事例 › マーケットプレイス

この事例の要点

  • Delivery Heroは、MENA、アジア、欧州、アメリカの4つの地域プラットフォームと、自社倉庫(Dmart)を中心とするIntegrated Verticalsの合計5つのセグメントで報告しています(Half-Year Financial Report 2026)。
  • 2026年上期のGMV(流通総額)は25,675.2百万ユーロで4.3%増、売上は7,752.2百万ユーロで12.7%増と、売上の伸びがGMVの伸びを上回りました(Half-Year Financial Report 2026)。
  • 手数料に加えて、消費者の配送料・サービス料、広告(AdTech)、自社倉庫の販売を重ねることで、1注文あたりの収益の厚みを増やす設計が読み取れます。

どんな事業か

Delivery Hero SEは、ドイツ・ベルリンに本社を置き、2017年からフランクフルト証券取引所に上場し、MDAX指数に含まれる企業です(Half-Year Financial Report 2026)。料理や日用品などのオンデマンド配送を仲介するプラットフォームを、各地域のブランドで運営しています。

報告書は、Integrated Verticalsを「主に自社の倉庫運営(Dmart)からなり、Delivery Heroが主たる当事者として商品を販売する事業」と説明しています。2026年6月30日時点で、Dmartは45か国に855店です(2025年12月末は46か国に811店)(Half-Year Financial Report 2026)。

収益の仕組み

報告書の売上の内訳を整理すると、収益は次の層になっています。

  • 入り口:消費者がアプリで飲食店や小売店を選んで注文します。
  • 課金:仲介の手数料(バウチャー控除後)、配送料、サービス料、広告の収入などです。GMVは消費者が支払った総額(割引を含む)で、購読料やチップなどは含まれません。
  • 継続:自社配送の拡大と、自社倉庫の取扱いで、注文頻度を上げて収益を積みます。

報告書は、売上がGMVを上回って伸びた要因として、注文頻度の上昇、クイックコマースの拡大、消費者向け料金(配送料・サービス料)の貢献の拡大、自社配送の展開、AdTechの増加を挙げています(Half-Year Financial Report 2026)。

数字で確かめる

  • グループGMV:25,675.2百万ユーロ、4.3%増(比較可能ベースで5.4%増)。調整後EBITDAは426.7百万ユーロで、GMV比は1.7%(前年同期も1.7%)(Half-Year Financial Report 2026)。流通額に対して薄い利益率で運営されていることが読み取れます。
  • 手数料収入(バウチャー控除後):2,534.4百万ユーロ、売上の32.7%を占め最大の構成要素(Half-Year Financial Report 2026)。仲介手数料が依然として最大の柱であることが読み取れます。
  • 消費者向け料金:配送料1,735.6百万ユーロ(前年同期1,635.6百万ユーロ)、サービス料399.0百万ユーロ(同253.5百万ユーロ)(Half-Year Financial Report 2026)。特にサービス料の伸びが大きく、手数料以外の収益が厚みを増していることが読み取れます。
  • Dmartの売上:1,780.7百万ユーロ、売上の23.0%で30.2%増(前年同期は19.9%)(Half-Year Financial Report 2026)。直営の小売の比重が高まっていることが読み取れます。
  • フリーキャッシュフロー(特別項目調整前):348.3百万ユーロ(前年同期は7.7百万ユーロのマイナス)(Half-Year Financial Report 2026)。キャッシュの面で改善が見られることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、オンデマンド仲介(ギグ型)、垂直統合、広告の型が重なっていると読めます。注文が集まる場所を持つと、仲介手数料に加えて、配送料やサービス料、広告枠を足すことができます。さらに、需要の大きい商品(食料品や日用品)は自社倉庫で持つことで、仲介にとどまらず販売の利益も取りにいく構成です。

ここでの要点は、仲介の収益率が薄いことだとOtsumuは見ます。調整後EBITDAがGMVの1.7%という水準では、注文頻度や1注文あたりの収益を少し上げるだけで結果が大きく変わります。そのため、料金の設計、広告、自社配送、直営小売など、1注文に載せる収益の種類を増やす方向に動くのは合理的と読めます。

トレードオフは、直営に近づくほど、在庫、店舗、配送員といった固定的な負担が増えることです。Integrated Verticalsの調整後EBITDAは−25.3百万ユーロ(前年同期−17.3百万ユーロ)と、売上が増えてもまだ赤字です(Half-Year Financial Report 2026)。また、地域によって成長の速さも利益率も異なり、アジアのGMVは6.2%減でした。直営の拡大は、規模が出るまでは収益を押し下げる可能性があります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が仲介している取引で、1件あたりに追加できる収益(手数料以外の料金、広告、関連商品)は何があるでしょうか。
  • よく売れる商品を自社で持つ場合、在庫や運用の負担に見合う利益が出るでしょうか。
  • 地域や顧客層ごとに利益率が違うなら、どこに力を入れ、どこを縮小するでしょうか。

小さく試すなら

  1. 直近3か月の取引を、1件あたりの収益(手数料、追加料金、広告、関連販売)に分けて集計し、層ごとの比率を確認します。
  2. 顧客に、手数料以外で払ってもよいと思う追加サービス(急ぎ対応、まとめ配送など)を5〜10名に聞きます。
  3. 候補の追加サービスを1つ選び、少数の取引だけに任意の追加オプションとして出します。
  4. 2〜4週間で、選択された割合と、追加コストを引いた後の利益が出るかを確認し、続けるか、料金を変えるかを決めます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Delivery Hero SE / フードデリバリー、クイックコマース、Dmart。参照資料:Half-Year Financial Report 2026(2026年1〜6月)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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