この事例の要点
- Full Truck Alliance Co. Ltd.は、荷主とトラック運転手をつなぐ「デジタル化・標準化された貨物プラットフォーム」を運営しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の純収益は12,489,859千元(前年11,238,638千元)、純利益は4,459,076千元(前年3,123,437千元)でした(Form 20-F、2025年12月期)。
- 収益は貨物仲介・出品・取引サービスと、与信などの付加価値サービスの2系統に分かれます。2025年8月に貨物仲介の手数料率を引き上げた結果、取引量と収益が大きく減少したことも資料に書かれています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Full Truck Alliance Co. Ltd.はケイマン諸島で設立された持株会社で、主たる事務所を中国の貴陽(貴州省)と南京(江蘇省)に置き、ニューヨーク証券取引所に「YMM」で上場しています(1ADSはクラスA普通株20株)。同社は「Yunmanman」「Huochebang」「Shengsheng」「Yunmanman Cold Chain」などのブランドで、荷主と運転手をつなぐプラットフォームを運営しています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の区分は、貨物マッチングサービス(貨物仲介サービス、貨物出品サービス、取引サービス)と、付加価値サービス(与信ソリューション、その他の付加価値サービス)です。同社は荷主から受け取る金額と運転手に支払う金額を管理する仲介サービスのほか、小口融資も取り扱っています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社の収益構造は、荷主と運転手の取引に手数料の層を重ねる形です。資料に記載された範囲で整理すると、次のとおりです(Form 20-F、2025年12月期)。
- 貨物仲介サービス:連結関連会社が荷主から受け取る金額と、運転手に支払う金額の差が、プラットフォームのサービス料になります。
- 取引サービス:運転手から手数料を受け取ります。注文価格が得られない場合は、同社の価格モデルによる公正な市場価格を基準にすると説明されています。
- 与信ソリューション:小口融資で、2025年末の貸出残高(オンバランスとオフバランスの合計)は55億元、不良債権比率は2.9%でした。
- 手数料率の見直し:2025年8月から貨物仲介の手数料率を引き上げ、取引量と収益が大きく減少したと説明されています。
数字で確かめる
- 純収益:2025年12,489,859千元、2024年11,238,638千元、2023年8,436,159千元。前年比では約11.1%増(資料の数値からの計算)で、2023年から継続して伸びていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 純利益:2025年4,459,076千元(約6.4億米ドル)、2024年3,123,437千元。純収益に対する純利益は約35.7%(資料の数値からの計算)で、純収益の3分の1を超える利益を残していることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 履行注文数:2025年は236.3百万件で、規模の大きい取引件数の上に手数料が乗る構造であることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 貨物仲介のVAT費用と政府補助金:VAT費用は2024年5,996.2百万元から2025年4,165.7百万元へ、政府補助金は2,102.8百万元から903.3百万元へ減少し、貨物仲介の粗利益が補助金に左右されることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 貸出残高:オンバランスの小口融資は4,851.4百万元、貸出残高の合計は55億元、不良債権比率は2.9%で、与信が付加価値の収益源になっていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、荷主と運転手という二つの利用者の間に立つ「マッチング」が、取引ごとの手数料と、取引データを使った与信という二層の収益を生む型として読めます。運転手にとっては仕事を探す手間が減り、荷主にとっては車両を探す時間が減るため、プラットフォームに取引が集まるほど双方の利便が高まる構造です。
注目したいのは、手数料率の引き上げが取引量と収益の大きな減少につながったという資料の記述です。マッチングの手数料は、利用者がプラットフォーム外へ取引を移さない範囲でのみ引き上げられる、という限界を示していると読めます。また、貨物仲介の粗利益が政府補助金に左右されるという点は、手数料以外の要因が収益性を動かす例です。
日本の中小企業が学べるのは、仲介型の事業で「取引量を増やす」ことと「取り分を上げる」ことのバランスを、数字で見ながら決める視点です。取り分の引き上げは短期の収益を押し上げても、利用者の離脱で取引量が減るリスクがあります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が仲介や紹介を行う場合、取り分(手数料・マージン)を上げたとき、取引がどれだけ他へ流れるかを把握しているか?
- 取引のデータを使って、与信や前払いのような付加価値サービスを提供できる関係が、自社の顧客との間にあるか?
- 売上の一部が補助金や一時的な条件に支えられていないか、費用と収益の内訳を分けて見ているか?
小さく試すなら
- 1週目:直近1年の取引について、取引件数・取扱額・自社の取り分を月別に並べる。
- 2週目:取り分の変更履歴と、その前後の取引件数の変化を確認する。
- 3週目:主要な取引先5〜10社に、現在の手数料や条件への受け止めを聞き取る。
- 4週目:取り分の見直しを行う場合は、一部の取引に限定した小さな試験の条件と、見る指標(件数・継続率)を決める。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Full Truck Alliance Co. Ltd.(中国、ニューヨーク証券取引所上場)の貨物マッチングプラットフォーム。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25