この事例の要点
- Hasbro, Inc.は、玩具の事業(Consumer Products)、MAGIC: THE GATHERINGなどのゲーム事業(Wizards of the Coast and Digital Gaming)、映像などのEntertainmentの3セグメントで構成されています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年はゲーム事業の売上高が21億8,690万ドル(44.7%増)、営業利益が10億680万ドルと伸びた一方、玩具事業は売上高が4.2%減り、営業損失9億4,260万ドルを計上しました(Form 10-K、2025年12月期)。
- 同社は「ブランドが玩具を動かし、ライセンスが第三者の投資を呼び込む」という相互の強化を自社の強みとして説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Hasbro, Inc.は米国ロードアイランド州ポータケットに本社を置くゲーム・IP・玩具の会社で、NASDAQ Global Select Marketに上場しています。MAGIC: THE GATHERING、MONOPOLY、PLAY-DOH、TRANSFORMERS、DUNGEONS & DRAGONS、NERF、PEPPA PIGなどのIPを持つと説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
同社は戦略として、ブランドを軸に新旧のIPから価値を引き出す「franchise-first」の考え方、デジタルとダイレクト(直販)の拡大、IPのライセンスを挙げています。自社開発のデジタルゲームスタジオを持つ一方で、MONOPOLY GO!のように第三者のゲーム会社に自社ブランドを貸し出す取り組みも行っています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益源は、売り方の異なる三つの層に分かれます。
- 玩具・ゲームの販売:Consumer Productsセグメントが、小売業者を通じて玩具やボードゲームを販売する。
- カード・デジタルゲーム:Wizards of the Coast and Digital Gamingセグメントが、Tabletop Gaming(MAGICやDUNGEONS & DRAGONSなど)とDigital and Licensed Gamingから売上を得る。
- ライセンス:第三者が消費者向け商品やデジタルゲームに同社ブランドを使い、売上連動またはユーザー数・利用量連動のロイヤルティ、あるいは最低支払額や固定料を支払う。
逆に、他社IPを借りて商品化する場合は、最低支払額つきのロイヤルティの負担が生じ、売上が見込みに届かなければ評価損のリスクがあると同社は説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 連結の売上高は47億130万ドルで、前期の41億3,550万ドルから13.7%増えました(Form 10-K、2025年12月期)。事業の重心が動いても、全体としては増収だったことが読み取れます。
- Wizards of the Coast and Digital Gamingの売上高は21億8,690万ドル(44.7%増)、営業利益は10億680万ドル(前期は6億3,200万ドル)でした(Form 10-K、2025年12月期)。連結の営業利益の大半を、一つのセグメントが生み出していることが読み取れます。
- そのうちTabletop Gamingは16億8,660万ドル(62.2%増)、Digital and Licensed Gamingは5億30万ドル(6.1%増)でした(Form 10-K、2025年12月期)。カードゲームの新セットと他社IP連携の成否が、年度の数字を大きく動かすことが読み取れます。
- Consumer Productsの売上高は24億3,760万ドル(4.2%減)で、営業損益は9億4,260万ドルの損失でした。10億2,190万ドルの非現金ののれん減損と、約4,490万ドルの関税費用が含まれます(Form 10-K、2025年12月期)。玩具の需要減に減損が重なり、連結の営業利益が1,110万ドルにとどまったことが読み取れます。
- 上位5顧客が売上高の約35%で、Amazon.comとWal-Martが合計20%でした(Form 10-K、2025年12月期)。玩具の販売先が集中していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は「資本負担の重いモノの事業」と「資本負担の軽いIP・ゲームの事業」を同じ会社で持つ型で読めます。玩具は在庫、製造、小売との価格交渉の負担が大きく、流行に応じて数字が上下します。一方、カードゲームやデジタルゲーム、ライセンスは、同じIPを繰り返し使い、商品の追加(新セットなど)や相手先の開発力で収益を伸ばせる構造です。同社が「capital-light」と説明するライセンスや、営業利益の大半を占めるゲーム事業は、その重心の移動を示しています。
ただし、この構造には注意点もあります。収益が一つのブランドの新セットに寄るほど、そのブランドの失速が全体に響きます。また、IPを第三者に貸すと、利用のされ方への統制が弱まると同社自身が述べています。玩具事業の減損は、モノの事業の価値を保つ難しさも示しています。これらは公開資料から読み取れる範囲での解釈で、企業自身の見解とは区別しています。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の利益の大半は、どの商品・サービス・顧客群から生まれていますか?
- 在庫や設備を抱える事業と、同じ資産を繰り返し使う事業の収益を、別々に把握できていますか?
- 自社のブランドや知見を、他社に使ってもらって収益にする余地はありませんか?
小さく試すなら
- 直近の売上と利益を事業別・商品別に分け、利益の上位1〜2位が全体に占める割合を出す。
- それぞれの事業に必要な在庫・設備・人員を書き出し、売上1円あたりの負担を比べる。
- 自社のノウハウ、名称、コンテンツのうち、他社が使えるものを3つ挙げ、使ってもらう条件の案を作る。
- 最も近い相手1〜2社に打診し、小さな期間限定のパイロットで反応を確かめる。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Hasbro, Inc.(ゲーム・IP・玩具)。参照資料:Form 10-K(2025年12月28日終了会計年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25