分類:企業事例 › 医療・医薬・ヘルスケア
この事例の要点
- Insulet Corporationは、インスリン依存の糖尿病患者向けに、独自のインスリン持続注入システムを開発・製造・販売しています。売上のほぼすべてをOmnipodプラットフォームから得る見込みと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年12月期の総売上は2,708.1百万ドルで、前期の2,071.6百万ドルから30.7%増えました。成長の主因は、顧客基盤の拡大による販売数量の増加と説明されています(Form 10-K、FY2025)。
- 米国では薬局チャネルの拡大が、関連当事者向け売上の減少を一部補ったと説明されています。薬局チャネルは「初期投資が不要」な点でアクセスを広げるとされています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Insulet Corporationは米国で開示を行う医療機器企業で、インスリン依存の糖尿病患者向けに、継続的にインスリンを届けるシステムを提供しています。中核は、小型で軽量の粘着式・使い捨て、チューブなしのOmnipodデバイス(ポッド)で、1つのポッドは最長3日間装着できます。プラットフォームにはOmnipod 5、Omnipod DASH、Classic Omnipodがあり、同社はClassic Omnipodを段階的に終了しています。Omnipod 5は同社提供のハンドヘルド端末か、ユーザーがダウンロードするアプリで操作できます(Form 10-K、FY2025)。
販売先は、米国では主に卸売業者経由で、一部は医療機関、薬局、消費者向けです。世界全体では、Omnipod製品の販売の86%が仲介業者経由でした。Omnipod製品は25か国で利用でき、従業員は2025年末時点で約5,400人(前年比38%増)です。ほかにAmgenのNeulasta Onproキット向けのポッドも製造しており、ドラッグデリバリー売上のほぼ全部がこの契約によるとされ、契約は2028年12月に満了します(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
収益は、装着期間に上限のある使い捨てのポッドを、利用者が使い続ける限り買い続ける構造だと読めます。同社の開示から確認できる入り口と広げ方は次のとおりです。
- 入り口:医師の処方と、保険者との交渉による償還の確保。Medicare Part Dの事業者が対象とする場合は、薬局チャネルで製品を提供するための交渉が必要と説明されています。
- 販売経路:卸売業者が中心です。2025年に売上の10%以上を占めた販売先は3社で、27%、26%、25%でした。
- 広げ方:薬局チャネルは初期投資が不要なため、利用の入り口を広げるとされています。
- 地域:国際売上は、前年に始まったOmnipod 5の各国での発売に伴う数量増が主因です。
数字で確かめる
- 総売上:2,708.1百万ドル(前期2,071.6百万ドル、30.7%増)。米国Omnipod売上は1,919.8百万ドル(27.2%増)、国際Omnipod売上は754.3百万ドル(44.1%増)で、両方が伸びたことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
- 売上総利益率:71.6%(前期69.8%、180bp改善)。売上原価は768.2百万ドルで、売上の伸び(30.7%増)より原価の伸び(22.7%増)が小さかったことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
- 関連当事者向けの米国売上:511.6百万ドル(前期587.8百万ドル)。主因は関連当事者向け販売が1四半期分少なかったことで、薬局チャネルの伸びが一部を補ったことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
- 純利益:247.1百万ドル(前期418.3百万ドル)。売上は大きく伸びた一方で、純利益は前期を下回ったことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
- 現金及び現金同等物:716.1百万ドル(前期953.4百万ドル)(Form 10-K、FY2025)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「消耗品の定期補充」の型で読むことができます。装着は最長3日間という設計なので、一度使い始めた患者は、使い続ける限りポッドを買い続けることになります。売上の伸びの主因が「顧客基盤の拡大による数量増」と説明されているのも、この型では新規利用者を増やすことが、そのまま将来の繰り返し購入につながるからだと考えられます。
もう一つ注目したいのは、入り口の設計です。薬局チャネルについて、同社は初期投資が不要でアクセスを広げると説明しています。高額な機器を一度に買わせるのではなく、薬局で必要な分を受け取れる形にすると、始めるときの負担が小さくなると読めます。一方で、売上の約8割近くを3社の販売先が占めるため、経路の交渉力が事業の安定に関わる構造でもあります。
国際売上の伸びの説明に「Omnipod 5の平均販売価格が、Omnipod DASHより高いこと」が挙げられている点も、継続課金の型らしい特徴だと考えられます。新しい世代に切り替わるたびに単価が上がる余地があり、利用者を引き継ぎながら単価を高められるためです。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品・サービスで、一度使い始めた顧客が「使い続ける限り買い足す」部分はどこですか。
- 最初の購入の負担(初期費用・手続き)を下げる経路を、自社は持てていますか。
- 売上が少数の販売先や経路に偏っていないか、偏っているなら代替の入り口を持てていますか。
小さく試すなら
- 直近1年の顧客を、継続して買い足している顧客と、1回で止まった顧客に分け、継続した顧客の最初の購入条件を洗い出します。
- 最初の購入で顧客が負担している初期費用や手続きを書き出し、取り除ける項目を1つ選びます。
- その項目を2〜4週間だけ取り除いた条件(お試し、後払いなど)を一部の顧客に提示し、継続購入に進んだ割合を記録します。
- 結果が良ければ、売上の上位経路への依存度を見直し、別の入り口を1つ試す計画を立てます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Insulet Corporation / Omnipod。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25