← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

MarketAxess Holdings Inc.「債券の電子取引プラットフォーム」に学ぶ手数料依存の事業設計

社債などの電子取引プラットフォームで売上の86.8%を取引手数料から得るMarketAxessの構造を、Form 10-K(FY2025)で確かめます。取引量は増えても1件あたり手数料が下がる局面から、手数料型の強みと弱みを学べます。

分類:企業事例 › 証券・保険・資産運用

この事例の要点

  • MarketAxess Holdings Inc.は、グローバルな債券などの電子取引プラットフォームを運営し、約2,100社の機関投資家・ブローカーディーラーが利用しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年の売上の86.8%は、プラットフォーム上で執行された取引のコミッションです。残りは情報サービス6.3%、取引後サービス5.3%、技術サービス1.6%です(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年は売上が前期比3.6%増でしたが、純利益は9.9%減でした。取引量が増えても1件あたりの手数料が下がる局面があることが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

MarketAxess Holdings Inc.は、NASDAQ Global Select Marketに普通株式(銘柄コードMKTX)を上場しています。Form 10-Kでは、取引効率を高める主要な電子取引プラットフォームを運営していると説明しています。利用者は約2,100社の機関投資家とブローカーディーラーで、うち1,000社超が米国外の顧客です(Form 10-K、FY2025)。

同社の特徴の一つが「Open Trading」です。参加者同士が取引できる仕組みで、約1,800社が参加し、2025年には約1.2兆ドルのクレジット取引を同機能で執行したとされています。これは対象となるクレジット取引高の37.0%にあたります(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

収益の柱は、取引が成立するたびに得るコミッションです。そのほかに、データ商品である情報サービス、取引後の処理を支える取引後サービス、技術サービスがあります(Form 10-K、FY2025)。

  • 入り口:投資家とディーラーがプラットフォームに参加します。
  • 課金:執行した取引にコミッションが発生します(売上の86.8%)。
  • 継続:情報サービス(6.3%)と取引後サービス(5.3%)が、取引の周辺で収益を補います。
  • 変動要因:同社は、米国ハイグレード債の取引から売上の約37.8%を得ていると記載しています。

数字で確かめる

  • 売上高:846,268千ドル(2024年は817,097千ドル、3.6%増)(Form 10-K、FY2025)。取引量の拡大が売上を押し上げた一方、伸びは緩やかであることが読み取れます。
  • 費用:504,430千ドル(5.9%増)、営業利益341,838千ドル(0.3%増)(Form 10-K、FY2025)。費用の伸びが売上の伸びを上回り、営業利益がほぼ横ばいであることが読み取れます。
  • 純利益:246,912千ドル(2024年は274,181千ドル、9.9%減)。法人税等が86,365千ドルから120,083千ドルへ増えています(Form 10-K、FY2025)。税負担の増加が純利益の減少に影響していることが読み取れます。
  • 平均日次取引高:米国ハイグレード債は7.2十億ドル(5.2%増)、ハイイールド債は1.5十億ドル(12.0%増)(Form 10-K、FY2025)。主要商品で取引量が増えていることが読み取れます。
  • 1件あたり手数料:取引量が増える一方、変動取引手数料の平均(100万ドルあたり)は下がったと記載されています(Form 10-K、FY2025)。量が増えても単価が下がると、売上の伸びが鈍ることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、参加者が増えるほど場の価値が上がる「取引所型」で読むことができます。Open Tradingのように参加者同士が直接取引できる機能は、投資家とディーラーの双方が集まるほど使いやすくなるため、利用の積み上がりが場の強さにつながると考えられます。

一方で、売上の約87%が取引ごとのコミッションという構造は、取引の中身が変わると単価が動く弱さも抱えます。同社自身が、ポートフォリオ取引の拡大は低い手数料体系の取引が増えるため平均手数料に下押しの影響を与えうると説明しています。取引量を増やす施策が、単価を下げる施策と表裏一体になりうるという点が、この型の難しさだと読めます。

そのため、情報サービスや取引後サービスのように、取引量に左右されにくい周辺収益を育てる意味があります。構成比はまだ小さいものの、手数料一本足の揺れを和らげる土台として位置づけられていると推測できます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上は、1件ごとの手数料や単価に依存していませんか。単価が下がる局面は何がきっかけになりますか。
  • 取引量や利用者数を増やす施策が、単価を下げる副作用を持っていないでしょうか。
  • 本業の周辺で、取引量に左右されにくい収益(データ・処理・技術提供)はどこに作れますか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の主要な取引・案件について、件数と1件あたり単価の推移を月ごとに並べます。
  2. 件数が増えて単価が下がった月の理由(値引き、取引形態の変化など)を洗い出します。
  3. 本業の顧客に、取引のたびに必要としている周辺サービス(データ、事務処理)を3〜5社に聞きます。
  4. 2〜4週間で、周辺サービスの試作版を1つ決めて数社に提示し、有料にしても使うかを確かめます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:MarketAxess Holdings Inc. / 債券の電子取引プラットフォーム。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗