この事例の要点
- Materialise NVは、3Dプリント用のソフトウェア、医療向けの計画ソフトと個別化医療機器、3Dプリントの受託製造という三つのセグメントで事業を展開するベルギーの企業です(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上高は267.6百万ユーロで、うち医療セグメントが134.2百万ユーロと半分ほどを占めます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 売上総利益率は約57.1%と高い一方で、純利益は7.7百万ユーロにとどまりました。粗利が研究開発・販売・管理の費用に使われ、利益として残る割合は小さいことが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Materialise NVは、ベルギーのLeuvenに本社を置き、Nasdaqに米国預託株式(ADS)を上場している企業です(Form 20-F)。同社は、積層造形(3Dプリンティング)と医療のソフトウェアツール、そして高度な3Dプリントサービスの提供者であると自らを説明しています。顧客は医療、自動車、航空宇宙、アート・デザイン、民生品などの業界にいます(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は深く関わる用途として、整形外科、頭蓋顎顔面、アイウェア、フットウェア、測定用の治具を挙げています。2025年12月31日時点で、従業員とフルタイム相当のコンサルタントは2,556人、取得済みの特許は529件でした(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
事業は三つのセグメントに分かれています。
- 入り口:ソフトウェア(3Dプリント用の一般向けと医療向け)。使い始めの敷居が低い。
- 課金:ソフトウェアの利用料、医療機器とサービスの販売代金、受託製造の部品ごとの代金。
- 継続:ソフトウェアの利用が続くことで、医療機器や製造サービスの案件にもつながる。
- 広がり:病院での計画ツールの導入を広げ、心臓血管や呼吸器の分野へ対象を拡大する方針。
同社は成長戦略として、パーソナライズされた患者ケアの傾向が、デジタルの計画ツールと個別化医療機器の需要を高めると見込み、既存のソフトウェアの病院市場での浸透と、新しい分野への計画ツールの拡大を進めるとしています(Form 20-F、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 2025年12月期の売上高は267,633千ユーロで、前期の266,765千ユーロから0.3%増にとどまりました(Form 20-F、2025年12月期)。売上は横ばいに近いことが読み取れます。
- セグメント別の売上は、医療が134,239千ユーロ、ソフトウェアが40,907千ユーロ、製造が92,486千ユーロでした(Form 20-F、2025年12月期)。医療が売上の約50.2%(計算値)を占め、事業の中心であることが読み取れます。
- 医療セグメントの内訳は、医療向けソフトウェアが37,299千ユーロ、医療機器とサービスが96,941千ユーロです(Form 20-F、2025年12月期)。医療でも、機器・サービスが大半であることが読み取れます。
- 売上のうち、期間にわたって計上されるものは71,460千ユーロ、一時点で計上されるものは196,172千ユーロでした(Form 20-F、2025年12月期)。継続的に計上される収益の比率は約26.7%(計算値)であることが読み取れます。
- 売上総利益は152,949千ユーロで、売上高に対する比率は約57.1%(計算値)でした。研究開発費46,089千ユーロ、販売費61,591千ユーロ、一般管理費40,122千ユーロを差し引き、営業利益は8,936千ユーロでした(Form 20-F、2025年12月期)。粗利が高くても、開発と販売の費用が大きく、営業利益の比率は小さいことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、ソフトウェア、医療、製造という三つの柱を持ち、それぞれが互いの入り口や根拠になる設計と読めます。ソフトウェアは使い始めやすい入り口になり、そこで培った知見が、医療向けの計画ツールや、個別化した医療機器の提供につながると考えられます。
医療向けでは、患者ごとの形状に合わせた計画と機器が価値になります。一般的な製品との違いが分かりやすく、価格を材料費だけで決めなくてもよい余地があります。その一方で、同社自身が医療機器の品質管理体制(ISO 13485や米国の品質システム規制への適合)が費用のかかる要件であると、リスク要因に挙げています。専門性の高い領域は、競争から守られる面と、規制対応の負担が重い面を併せ持つと読めます。
売上が横ばいで、営業利益の比率が小さい点も事実として残ります。三本柱は、事業の安定感を支える面があるものの、それぞれに投資が必要で、費用の負担も広がります。柱の数を増やすほど、どこに資源を集中するかの判断が重要になるとOtsumuは見ます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の事業のなかで、広く使ってもらえるソフトウェアや道具はあるでしょうか。
- 顧客ごとに個別化することで、価格を材料や工数だけで決めずに済む領域はどこでしょうか。
- 複数の柱を持つとき、それぞれにどれだけの投資を割り当てるかを、何を基準に決めるでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の売上を、道具やソフトウェア、個別対応の製品・サービス、受託の作業の三つに分け、直近の金額と粗利を並べます。
- 個別対応の案件のうち、他の案件よりも高い価格で受注できたものを数件選び、価値が伝わった理由を担当者に聞き取ります。
- その理由が、特定の専門領域に限られるのか、他の領域にも広げられるのかを、一枚のメモにまとめます。
- 2〜4週間のあいだに、広げられそうな領域の顧客2〜3社に、個別対応の提案を試しに出し、価格への反応を記録します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Materialise NV/3Dプリント用ソフトウェア、医療事業、製造事業。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25