分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム
この事例の要点
- 収益の中心は、ストリーミング配信に対する会員の月額会員料です。広告収入や関連商品、ライブイベントからの収益もありますが、同社は重要な構成要素ではなかったとしています。
- 価格は一つではありません。国やプランの機能で価格が変わり、広告付きの低価格プランや、アカウントに人を追加する料金も用意されています。
- 同社は会員の解約を前提に置き、解約分を補って成長するには新しい会員を加え続ける必要があると述べています。
どんな事業か
Netflix, Inc.は、映画やドラマなどの映像作品をインターネット経由で配信するサービスを、世界各国の会員に提供しています。同社は単一の事業セグメントで運営していると記載しています(Form 10-K、FY2025)。
以前はDVDを郵送で貸し出す事業も持っていましたが、2023年に終了したと記載されています(Form 10-K、FY2025)。現在の同社は、配信という一つのサービスに会員が毎月お金を払う形に絞られています。
届け方の特徴は、同じ配信サービスに対して複数の入口を用意している点です。同社は、広告付きの低価格プランを含む複数の価格プランを用意することで、さまざまな消費者のニーズに応えることを目指していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
お金の入口は、会員が毎月支払う会員料(monthly membership fees)です。2025年12月31日時点で、有料プランの価格は米ドル換算で月額1〜37ドル、追加メンバー(extra member)の料金は月額2〜9ドルの範囲だったと記載されています(Form 10-K、FY2025)。
- 月額会員料:国とプランの機能によって価格が異なります。
- 追加メンバー料金:一つのアカウントに利用者を加える場合の料金です。
- 広告収入、関連商品、ライブイベントなど:同社は、月額会員料以外の収益はFY2023〜FY2025のいずれの年度も収益の重要な構成要素ではなかったとしています(Form 10-K、FY2025)。
費用の側では、売上原価の増加の主な要因はコンテンツの償却費の増加などと説明されています(Form 10-K、FY2025)。作品への支出が先にあり、それを会員料で回収していく構造だと分かります。
数字で確かめる
- FY2025の売上高は451億8,300万ドル(前年比16%増)でした(Form 10-K、FY2025)。同社は増収の要因に会員数の増加、値上げ、広告収入の増加を挙げており、人数と単価の両方が動いていることが読み取れます。
- 営業利益率は29.5%(前年は26.7%)でした(Form 10-K、FY2025)。売上の伸びが利益率の改善を伴っていることが読み取れます。
- 売上原価は売上高の52%(前年は54%)でした(Form 10-K、FY2025)。コンテンツの費用が増えても、売上に対する比率は下がっていることが読み取れます。
- 同社は2025年から有料会員数や会員1人あたりの月間平均売上の開示をやめ、売上高と営業利益率を主な指標にしたと記載しています(Form 10-K、FY2025)。価格帯が増えると、人数や平均単価だけでは事業の状態を表しにくくなるとも読めます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。サブスクリプションの型で見ると、この事業は「同じ価値に対して、支払い方を複数用意する」設計になっています。視聴できる作品群は共通でも、広告を見る代わりに安く払う人、機能の多いプランに払う人、アカウントに追加するメンバーの分を払う人がいます。支払える金額や使い方が違う人を、一つの価格で取りこぼさないための工夫と考えられます。
ただし、価格帯を足すたびに別の仕事が生まれます。広告付きプランを置けば、広告主を集め、広告を配信し、効果を説明する仕事が必要になります。これは広告モデルの運用であり、会員向けのサービス運営とは別の能力です。プランが増えれば、違いを利用者に説明する手間や、問い合わせ対応も増えると考えられます。
もう一つの条件は、原価の性質です。コンテンツの費用は会員が増えても同じ割合では増えにくいため、低価格の会員が加わっても採算が合いやすいとOtsumuは見ます。逆に、利用者が増えるほど原価も比例して増える事業では、安いプランの追加がそのまま利益の圧迫になります。自社の原価がどちらの性質かを先に確かめる必要があります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の継続サービスに、払う意思はあるが今の価格では加入しない層はどのくらいいるでしょうか。その人たちは何と引き換えなら安い価格を受け入れますか。
- 低価格プランを加えたとき、既存の会員が安いほうへ移る可能性をどう見積もりますか。
- 利用者が一人増えたとき、原価はどれだけ増えますか。固定的な費用と、利用に比例する費用を分けて把握できていますか。
- 解約の理由を、利用頻度の低さ、家計の節約、内容への不満、他サービスへの乗り換えのように分けて記録していますか。
小さく試すなら
- 継続サービスを一つ選び、既存の利用者について利用頻度と支払っている理由を調べます。利用記録に加えて、少人数への聞き取りで「何に対して払っているか」を言葉で集めます。
- 利用頻度が低い層や、加入を見送った人に向けて、機能や条件を絞った低価格案を一つだけ作り、案内への反応を見ます。2〜4週間程度で、申し込みの数と、既存プランからの乗り換えの数を分けて記録します。
- 低価格案で増えた利用が、原価と問い合わせ対応にどう響いたかを確認します。利用が増えた分の費用を、増えた収入でまかなえているかを見ます。
- 新しく入った人と乗り換えた人のその後の解約の動きを追います。新規の加入が乗り換えによる減収を上回り、解約が増えていなければ、価格帯を正式に加える検討へ進みます。
資料の位置づけ
企業・サービス:Netflix, Inc. / 動画配信サービス「Netflix」。参照資料の対象:Form 10-K(FY2025、2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。
編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20