この事例の要点
- Nextdoor Holdingsは、認証済みの近隣住民(Verified Neighbors)1億500万人超、11カ国・35万超の近隣地域をつなぐ地域特化のネットワークを運営しています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 収益は「実質的にすべて」が広告で、2025年12月期の売上高は257.6百万ドル、純損失は54.2百万ドルでした(Form 10-K、2025年12月期)。
- 近隣という地理的な単位で利用者と広告主をつなぐ点が特徴で、2025年に投稿中心のフィードからニュースや警報を加えたフィードへの転換(new Nextdoor)を進めています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Nextdoor Holdings, Inc.は米国の企業で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。同社は自社を、近隣住民と地域の人・場所・情報をつなぐネットワークと説明しています。2025年12月31日時点で、Platform Weekly Active Users(Platform WAU)は21.0百万人で、米国の世帯の3分の1に到達しているとしています(Form 10-K、2025年12月期)。
提供する機能は、ニュース、リアルタイムの安全警報、近隣の人からのおすすめ、売ります・あげます(For Sale & Free)、イベントなどです。利用者は近隣住民のほか、中小企業、全国ブランド、出版社、消防・警察・自治体などの公的機関です。4,000を超える地域ニュースの出版社の記事がフィード量の約7%を占め、WazeやWeather.com、米国地質調査所などの警報パートナーもいると記載されています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は、収益の実質的にすべてを広告から得ていると記載しています(Form 10-K、2025年12月期)。構造は次のように整理できます。
- 入り口:近隣住民は無料で利用します。企業も無料のBusiness Pagesを開設でき、ここが企業との最初の接点になります。
- 課金:広告主は自社の広告プラットフォーム(Ads Manager、ネイティブ広告サーバー、計測・APIツール)で、スポンサー投稿、リード獲得フォーム、ネイティブ・ディスプレイ、動画といった形式の広告を出します。配信は自社のオークションで、広告の関連性や品質、利用者体験を優先すると説明されています。
- 継続:広告主は近隣単位や興味・行動で対象を絞り、ピクセルやAPIによる成果計測で効果を確かめます。利用者のデータは、認証済みの第一者データです。
2025年にはAIを使い、広告主が地域に合った文面や画像を大量に作る機能も加えたと記載されています(Form 10-K、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 売上高は2025年12月期が257.6百万ドルで、前年比4%増でした。2024年は247,276千ドル、2023年は218,309千ドルです(Form 10-K、2025年12月期)。増収ペースは緩やかになっていることが読み取れます。
- 純損失は54.2百万ドルで、前年の98.1百万ドルから45%減りました。調整後EBITDAは0.6百万ドルの黒字(前年は18.2百万ドルの赤字)です(Form 10-K、2025年12月期)。費用の抑制が損益の改善につながったことが読み取れます。
- 総費用は329.6百万ドルで、前年比11%減です。2025年8月に費用削減計画を発表し、第3四半期末までにおおむね完了したと記載されています(Form 10-K、2025年12月期)。組織の規模を事業の優先度に合わせ直した動きだったことが読み取れます。
- 地域別の売上高は、米国が248,610千ドル、海外が9,036千ドルで、米国が約96%を占めます(248,610÷257,646、Form 10-K、2025年12月期)。収益は米国にほぼ集中しており、11カ国への展開はまだ収益化の途上であることが読み取れます。
- 現金・現金同等物・有価証券は404.8百万ドルです(Form 10-K、2025年12月期)。損失が続く中でも、手元の資金には一定の余裕があることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、広告モデルとコミュニティ型プラットフォームの組み合わせとして読めます。広告の価値は、広告主が「誰に届くか」に支払う意思を持てるかで決まります。Nextdoorの場合、実名認証と住所に紐づく近隣という単位が、地域の店やサービスにとって分かりやすい対象になります。全国規模のSNSでは作りにくい「商圏」という単位を、プラットフォーム自体の設計に組み込んでいると読めます。
課題は、利用者の関心を保つ内容の幅です。10-Kは、投稿中心のフィードにニュースや警報を加える転換を進めていると述べています。近隣の投稿だけでは頻繁に開く理由が足りず、ニュースや警報で日常的な利用を補う狙いがあると考えられます。ただし、その効果は数字で確認する段階にあり、売上の伸びが4%にとどまる点は、慎重に見る必要があります。
また、収益が実質的にすべて広告で、米国に集中していることは、景気や広告主の予算に左右されやすい構造を意味します。無料の企業ページから有料広告へ進める道筋を持つ点は強みですが、小さな事業者がどの段階で広告に支払うかは、資料からは分かりません。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客や利用者を、地域・商圏のような「分かりやすい単位」で区切ると、どんな価値の伝え方ができるでしょうか。
- 無料で使える入り口(企業ページのようなもの)から、有料に進む理由を、顧客の言葉で説明できるでしょうか。
- 日常的に開いてもらうための内容を、自社だけでなく外部の情報源(ニュースや警報のような)で補う余地はあるでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の顧客一覧を、地域(市区町村など)ごとに集計し、集中している地域を三つ選びます。
- その地域の顧客3〜5社に、新しい顧客が自社を見つける経路と、地域での口コミの有無を聞き取ります。
- 聞き取った内容をもとに、特定の地域だけを対象にした簡単なチラシまたはメール案内を一つ作り、小規模に配布します。
- 2〜4週間で、問い合わせ数や反応を地域別に記録し、「地域を絞った方が反応が良いか」を、絞らない案内と比べて確かめます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Nextdoor Holdings, Inc. / Nextdoor。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25