この事例の要点
- 株式会社NSDは、金融IT、産業IT、社会基盤IT、ITインフラの4分野のシステム開発事業と、ソリューション事業を営んでいます。注力事業は、DXやAI等の新技術を使ったシステム開発とソリューション事業を合わせた「DAS事業」と定義されています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 2026年3月期の売上高は117,813百万円(前期比9.3%増)、営業利益は19,073百万円(同13.2%増)で、DAS事業の売上高は57,578百万円(同15.8%増)でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- ソリューション事業の営業利益は1,488百万円で、前期の772百万円から92.6%増えました。小さな柱が、増収効果で利益を大きく伸ばしています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
株式会社NSDは東京証券取引所に上場する企業で、コード番号は9759です。決算短信によると、同社グループは直近の5ヵ年の中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)で、売上高1,000億円を超える企業グループになることを目標とし、AI・DX領域への対応強化とM&Aを活用して、2024年3月期に2年前倒しで達成しました(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
システム開発事業では、新技術を利用した社会的ニーズの強いDX関連の開発を成長ドライバーとしており、工場の化学物質の使用量把握をAIで行うシステムや、製造業の生産計画立案の自動化、倉庫・物流業の棚配置のアルゴリズム化などの取り組みが挙げられています。ソリューション事業は「第2の収益の柱」とする方針で、オンプレミスなどの自社専用環境で使えるプライベート生成AIプラットフォーム「BizInsight」を開発・提供しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
決算短信のセグメント別実績から、収益の構造は次のように整理できます。数値は2026年3月期の売上高と営業利益で、セグメント間取引を含みます。
- 金融IT:売上高35,073百万円(前期比8.0%増)、営業利益6,774百万円。受注が高水準で推移。
- 産業IT:売上高28,286百万円(同10.3%増)、営業利益4,410百万円(同17.7%増)。
- 社会基盤IT:売上高24,200百万円(同7.8%増)、営業利益4,759百万円。
- ITインフラ:売上高13,296百万円(同7.2%増)、営業利益2,309百万円。
- ソリューション事業:売上高17,720百万円(同15.0%増)、営業利益1,488百万円。セキュリティ製品等の受注が大きく伸びた。
システム開発事業が売上の大半を占める一方、ソリューション事業は増収率が高い構造です(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上高・営業利益:売上高117,813百万円(前期比9.3%増)、営業利益19,073百万円(同13.2%増)、営業利益率16.2%(前期は15.6%)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。売上の伸びを上回って利益が伸び、利益率が上がったことが読み取れます。
- DAS事業:売上高57,578百万円(前期比15.8%増)。うちDX・AI等新技術関連は39,870百万円(同16.2%増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。注力領域が全体より速く伸びていることが読み取れます。
- 5年間の変化:2021年3月期から2026年3月期にかけて、売上高は66,184百万円から117,813百万円へ(年平均成長率12.2%)、DAS事業は18,004百万円から57,578百万円へ(同26.2%)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。注力領域の売上が約3倍になり、売上高全体の伸びを引っ張ったことが読み取れます。
- セグメントの利益率:金融ITの営業利益6,774百万円を売上高35,073百万円で割ると約19.3%、ソリューション事業の1,488百万円を17,720百万円で割ると約8.4%(いずれも2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)の数値から計算)。ソリューション事業はまだ利益率の面で伸びしろがあることが読み取れます。
- 自己資本比率:75.7%、ROE:18.4%(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。財務に余裕を持ちつつ、資本に対する利益も確保していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「プロジェクト受託(一括請負)」の型を土台に、自社ソリューションを第2の柱に育てている構造と読めます。受託開発は顧客の予算に沿って案件が生まれるため、業種を分けて金融、産業、社会基盤、ITインフラと複数の分野を持つことで、特定の業界の動きに売上が偏らないようにしていると考えられます。4分野すべてが増収という結果は、その分散が数字に現れた例といえます。
一方、ソリューション事業は利益の伸びが売上の伸びを大きく上回っています。売上高は15.0%増でしたが、営業利益は92.6%増でした。製品やサービスは、売上が一定の水準を超えると利益が急に伸びやすい、という傾向がありますが、これは一般的な見方で、同社が決算短信で説明している内容ではありません。ただ、ソリューション事業の営業利益率が受託の分野より低いことから、この事業はまだ育成の途中にあり、今後の見極めが必要な領域と読めます。
生成AIを自社専用環境で使えるプラットフォームとして提供している点も特徴です。顧客が外部へのデータ送信を懸念する業種で、受託の信頼関係をそのまま製品の入り口に使える、という見方もできます。ただし、これは決算短信の記述から推測した仮説です。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の受託や個別対応の中で、繰り返し同じ課題が出てくる領域はどこでしょうか。
- その課題を、製品やサービスとして切り出すと、売上と利益率はどう変わりそうですか。
- 製品を育てる間、既存の受託がその資金と信頼の土台になっていると説明できますか。
小さく試すなら
- 過去1〜2年の受託案件から、似た要望が3回以上出たものを抜き出します。
- そのうち1つについて、共通部分の仕様と、顧客ごとに変える部分を分けて書きます。
- 2〜4週間の間に、共通部分だけを使った簡易版の説明資料を作り、該当しそうな既存顧客3〜5社に見せて反応を聞きます。
- 反応が良かった場合のみ、価格の案と、導入に必要な工数の見込みを書き、受託のまま対応した場合と比べます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社NSD / システム開発事業、ソリューション事業。参照資料:2026年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25