この事例の要点
- Oddity Tech Ltd.は、イスラエルのテルアビブに本社を置き、ナスダックに上場する美容・ウェルネス企業です。ブランドはIL MAKIAGE、SpoiledChild、2025年に始めたMETHODIQです(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の純売上は8億1,000万ドルで、前年は6億4,700万ドルでした。販売は主にオンラインで、独自のAIで顧客に合う製品を提案する「PowerMatch」を使います(Form 20-F、2025年12月期)。
- 購入前に試せる「Try Before You Buy」で顧客獲得を進める一方、主要な広告パートナーのアルゴリズム変更で顧客獲得コストが上がり、2026年の業績に影響すると同社は記載しています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Oddity Tech Ltd.は、美容・ウェルネス企業として、ODDITY、IL MAKIAGE、SpoiledChildなどのブランドを展開しています。米国会計基準で米ドル建ての財務諸表を作成し、2023年7月19日に新規上場しました。生物学モデルと機械学習を使って新しい分子を探すバイオテクノロジー拠点「Oddity Labs」も持つと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は米国での事業を2018年に始め、2020年に黒字化したと述べています。プラットフォームは2025年12月31日時点で約6,800万人のユーザーに利用されました。海外(米国外)の売上は2025年の純売上の約18%です。製造は第三者の供給元に委託し、物流も第三者の倉庫・配送事業者を使っています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益の中心は、自社サイトを通じたオンライン直販です。顧客の顔や髪の特徴を分析するコンピュータビジョンなどのAIで製品を提案し、購入前に試せる仕組みで購入の心理的な障壁を下げています。
- 入り口:デジタル広告、ソーシャルメディア、コンテンツクリエイターによる認知。
- 課金:「Try Before You Buy」では、顧客は最初に送料のみを支払い、試用後に手元に残した製品の代金を支払います(Form 20-F、2025年12月期)。
- 継続:ブランドの追加(SpoiledChild、METHODIQ)による購入の広がりと、顧客データにもとづく提案。
- 返品:見込み返品額を売上から控除して計上します。
数字で確かめる
- 純売上:2025年は8億1,000万ドル、前年は6億4,700万ドル(Form 20-F、2025年12月期)。約25%の増加です(8億1,000万÷6億4,700万、Otsumuの計算)。オンライン直販でも規模が大きく伸びていることが読み取れます。
- ユーザー数:2025年12月31日時点で約6,800万人のユーザーにサービスを提供しました(Form 20-F、2025年12月期)。広い接点の上で販売していることが読み取れます。
- 地域構成:米国外の売上は2025年の純売上の約18%(Form 20-F、2025年12月期)。売上の大半が米国市場に依存していることが読み取れます。
- 有価証券:2025年12月31日時点の市場性有価証券は3億7,400万ドルで、政府債と社債で運用しています(Form 20-F、2025年12月期)。資金面で一定の余裕を持っていることが読み取れます。
- 顧客獲得コスト:同社は「最近、新規顧客を費用効率よく獲得することが難しくなっている」と述べ、2026年の業績に、主に上半期で悪影響があると見込んでいます(Form 20-F、2025年12月期)。広告媒体への依存がリスクであることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。Oddityの設計は、美容のように「自分に合うか分からない」商品で、AIによる提案と購入前の試用を組み合わせて迷いを減らす点にあると読み取れます。顔や髪の特徴に応じた提案は、顧客ごとの違いを製品選びに反映する手段であり、試用後に払う形式は、購入前の不安を下げる役割を担っていると考えられます。
一方で、開示は、この設計が広告媒体のアルゴリズムに強く依存することも示しています。同社は、アルゴリズムの変更後に「Try Before You Buy」が下位に扱われた可能性があり、その理由として返品率の高さが考えられると述べています。試用型の販売は、返品率と広告配信の評価が結びつくため、顧客獲得の設計に返品の管理を含める必要があると読み取れます。
ブランドを増やす戦略は、一つの広告媒体や一つの顧客層への依存を減らす狙いがあると考えられますが、各ブランドで顧客獲得を続ける負担も増えます。AIによる提案は価値の源泉である一方、顧客データに依存するため、プライバシー規制への対応が前提になります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品で、顧客が「自分に合うか分からない」と迷う場面はどこか。提案や試用でその迷いを減らせるか?
- 顧客獲得を特定の広告媒体に頼っていないか。媒体の仕様が変わったとき、どの入り口で補えるか?
- 返品や試用後の不成立が、集客の評価や費用にどう影響しているか把握できているか?
小さく試すなら
- 1週目:問い合わせや返品の理由を集計し、顧客が迷う点を三つに絞る。
- 1〜2週目:迷う点に答える診断フォーム(質問5問程度)を作り、結果に応じて商品を提案する。
- 2〜3週目:少数の顧客に小さな試供や返品しやすい条件を試し、購入率と返品率を記録する。
- 3〜4週目:集客経路別の獲得単価と返品率を比べ、広告以外の入り口(メール、紹介など)を追加するか判断する。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Oddity Tech Ltd.(イスラエル)のAI活用のオンライン美容ブランド。参照資料:米国SEC提出のForm 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25