この事例の要点
- 同社グループは、機械・電機、ITインフラ・IT開発、建設などの分野に技術者を派遣し、請負・委託も手がけています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 売上収益は167,483百万円(前連結会計年度比10.9%減)で、前連結会計年度に実施した英国事業売却による剥落の影響が大きかったと説明しています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 売上総利益率は前連結会計年度比2.4ポイント上昇して27.6%となり、営業利益は16,695百万円(同2.8%増)でした(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
どんな事業か
同社グループのセグメントは、機電領域、IT領域、建設領域、海外領域、その他です。当連結会計年度から、従来の「機電・IT領域」を「機電領域」と「IT領域」に分けています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
機電領域は機械・電機の開発・設計・運用保守分野への派遣・請負・委託事業、IT領域はITインフラ・IT開発の設計・構築・運用・保守に対する派遣・請負・委託事業、建設領域は建設業界への施工管理技術者とCADオペレーターの派遣事業です。海外領域は前連結会計年度に英国事業を売却し、中国を中心としたアジア地域へ経営資源を集中しているとしています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
その他には、オンラインプログラミング学習サービスと人材紹介事業を行う株式会社SAMURAI及び株式会社SAMURAI Careerと、障がい者雇用によるグループ内サービスを提供する特例子会社の株式会社オープンアップウィズが含まれます。機電領域では、2025年10月に株式会社エイセブホールディングスの株式を取得し、同社と子会社2社を連結の範囲に含めました(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
収益の仕組み
売上は、顧客企業に技術者を派遣し、または業務を請け負うことで得ています。決算短信では、各領域の業績を左右する要素として稼働人員(稼働人数)、契約単価、稼働率が繰り返し挙げられています。機電領域は在籍エンジニア数の堅調な推移と連結子会社化による稼働人員の増加で増収増益となり、IT領域は稼働人数が前年を下回った一方、契約単価の向上や高稼働率の維持などでセグメント利益が前年を上回ったとしています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
費用面では、採用と処遇が大きな要素として説明されています。機電領域では採用チャネルを紹介会社依存からダイレクトリクルーティングへ移し、採用単価の適正化を進めました。建設領域では稼働人数の減少と処遇改善に伴う売上原価の増加でセグメント利益が前年を下回りました。全社では人件費の増加や生産性向上への投資を行う一方、採用費の適正化を進めたとしています(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上収益は167,483百万円(前連結会計年度比10.9%減)、営業利益は16,695百万円(同2.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は11,829百万円(同5.8%減)です(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。売上が減っても営業利益は前年を上回ったことが読み取れます。
- 売上総利益は46,239百万円、売上総利益率は27.6%です(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。高付加価値案件へのシフトなどで利幅が改善したことが読み取れます。
- 機電領域の売上収益は66,731百万円(前連結会計年度比10.7%増)、セグメント利益は8,364百万円(同15.1%増)です(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。最大の領域が伸びていることが読み取れます。
- 建設領域の売上収益は57,599百万円(同1.2%増)、セグメント利益は6,968百万円(同7.6%減)です(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。処遇改善などが利益を押し下げたことが読み取れます。
- IT領域の売上収益は40,901百万円(同0.8%減)、セグメント利益は4,099百万円(同9.1%増)です(2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。稼働人数が減っても単価と稼働率で利益を伸ばしたことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。技術者派遣の型では、売上はおおむね稼働している技術者の数と単価で決まり、原価の中心は技術者本人の人件費だと考えられます。利益を増やす方法は、稼働人数を増やすか、単価を上げるか、待機の期間を減らすかに近いと読めます。決算短信が各領域で稼働人数・契約単価・稼働率を繰り返し説明しているのは、この型の管理指標がそこにあることを示していると考えられます。
成り立つ条件は、技術者を採り続け、辞めずに働き続けてもらうことです。未経験者に加えて経験者の採用を強め、ダイレクトリクルーティングへの移行やオンボーディング施策で入社初期の定着率の改善を図っているのは、採用単価と定着の両方が利益に直結するためと読めます。裏側では、採用、配属先とのマッチング、配属後のフォローという地道な仕事が欠かせません。
トレードオフは、処遇を上げれば定着は進む一方、単価に転嫁できなければ利益が下がる点です。建設領域では処遇改善と稼働人数の減少でセグメント利益が前年を下回り、反対にIT領域では稼働人数が減っても単価と稼働率で増益でした。人数を追うか、単価を追うかの配分が、領域ごとに異なる判断になっていると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上を「人数×単価×稼働率」のように分解したとき、どの要素がいちばん動かしやすいでしょうか。
- 採用1人あたりにかかる費用と、その人が生む粗利で回収できるまでの期間を把握しているでしょうか。
- 処遇を改善した分を、顧客への単価にどう反映するかの方針はあるでしょうか。
- 入社や参加の直後の離脱を減らすために、最初の数か月で何を支援しているでしょうか。
小さく試すなら
- 直近1年分の案件や担当者について、人数、単価、稼働率(または稼働日数)を一覧にし、売上の変化をこの3要素に分けて確認します。
- 採用や外注の経路ごとに、1人あたりの獲得費用と定着の状況を整理します。
- 2〜4週間、単価を上げる余地のある案件を数件選び、提供内容の上位化とあわせた単価改定を打診します。
- 打診した案件の受け入れ状況と担当者の離脱の有無を記録し、単価改定と処遇改善を同時に進められる見込みが立てば、全案件の見直しに進みます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社オープンアップグループ / 機電・IT・建設分野の技術者派遣。参照資料:2026年6月期 決算短信〔IFRS〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27