この事例の要点
- 利用者向けアプリ「Roblox Client」と制作ツール「Roblox Studio」を無料で提供し、体験(ゲームなど)の大半をクリエイターが作る仕組みです(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年の平均DAUは127 millionで、そのうち1日あたりの支払い利用者は平均で約1.8 millionでした(Form 10-K、FY2025)。
- 売上は$4,890,551 thousandに伸びた一方、Loss from operationsは$(1,232,342) thousandで、Developer exchange feesなどの費用が大きい構造です(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は自らを、没入型のゲームと制作のプラットフォームと説明しています。構成は、利用者が体験を探して遊ぶ「Roblox Client」、クリエイターが体験を作って公開・運営する「Roblox Studio」、それらを支えるサービスと基盤の「Roblox Cloud」の3つです(Form 10-K、FY2025)。
成長の源泉として同社が挙げるのは、技術への投資と、互いを強め合う2つのネットワーク効果です。1つは、質の高いコンテンツが利用者を集め、利用者の増加が収益化の機会を広げてクリエイターを呼ぶ循環、もう1つは利用者が友人を招き合うつながりの循環です(Form 10-K、FY2025)。
2025年には平均127 millionのDAUが180を超える国から利用し、DAUあたり1日平均2.7時間を過ごしました。安全面では、AIと人による多層のモデレーションに加え、2026年1月からチャットを使える地域で年齢確認を必須にしたとしています。同社は、安全対策の変更が利用や売上に影響しうると述べています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
bookingsのほぼすべては仮想通貨Robuxの販売から生じ、Robuxは最終的にプラットフォーム上の仮想アイテムに交換されます。bookingsはいったん繰延収益に計上され、支払い利用者の平均的な利用期間などにわたって売上として認識されます。広告やライセンスによる額はわずかです(Form 10-K、FY2025)。
クリエイターは、体験内での課金、2025年7月に始まったCreator Rewards Program、広告、IPライセンス、アバターアイテムやStudio用プラグインの販売を通じてRobuxを得ます。同社はRobuxの各取引から一部を受け取り、残りをクリエイターに配分すると説明しています。一定額以上のRobuxをためた認証済みのクリエイターは、Developer Exchange Programを通じて現金を受け取れます。参加に必要な最低額は100,000 Robuxから50,000 Robux、さらに30,000 Robuxへと引き下げられ、2025年9月5日からは換金額を8.5%引き上げました(Form 10-K、FY2025)。
費用について同社は、クリエイターコミュニティ、人材、技術と基盤(安全対策を含む)への投資と、決済手数料が主な営業費用だと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- Revenue:$4,890,551 thousand(前年$3,601,979 thousand)(Form 10-K、FY2025)。売上の伸びが大きいことが読み取れます。
- Developer exchange fees:1,503,106、Infrastructure and trust & safety:1,153,454、Research and development:1,567,747(単位:千ドル)(Form 10-K、FY2025)。クリエイターへの支払いと基盤・開発に費用が集中していることが読み取れます。
- Consolidated net loss:$(1,071,618) thousand(Form 10-K、FY2025)。売上が伸びても損失が続いていることが読み取れます。
- Average daily bookings per DAU:$0.15、per daily unique paying user:$10.36(Form 10-K、FY2025)。少数の支払い利用者が収益を支える構造が読み取れます。
- キャッシュフロー計算書上のDeferred revenueの増減:1,935,318、営業活動によるキャッシュフロー:1,796,358(単位:千ドル)(Form 10-K、FY2025)。売上認識より先に現金が入る仕組みであることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、クリエイター収益分配とアイテム課金(基本無料+少額課金)の組み合わせと読めます。遊ぶのも作るのも無料にして参加の入口を広げ、課金はごく一部の利用者に任せる設計です。1日あたりの支払い利用者はDAUの一部にとどまるため、成り立つ条件は、課金しない利用者も含めた大きな利用者規模を保ち、その中で課金したくなる体験が継続的に生まれることだと考えられます。
裏側で必要な仕事は、クリエイターが稼げる仕組みの運営です。Robuxの配分ルール、換金の条件、報酬プログラムの指標の設計は、どの体験が作られるかを左右すると考えられます。換金の最低額の引き下げや換金額の引き上げは、制作者を増やすことを重視してきたと読めます。加えて、利用者に子どもが多く含まれるため、モデレーションや年齢確認の費用が構造的にかかります。
トレードオフは、クリエイターへの還元と自社の利益の間にあります。Developer exchange feesは売上とともに増え、基盤や開発の費用も大きいため、営業損失が残っています。安全対策の強化が利用や売上に影響しうると同社自身が述べている点も、成長と安全の均衡が必要なことを示すと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 外部の作り手が稼げる仕組みを用意できるか。その配分ルールは分かりやすいか。
- 支払う利用者が一部でも成り立つように、支払わない利用者の価値を定義できているか。
- 利用者の安全を守る費用を、事業計画の中に最初から組み込んでいるか。
小さく試すなら
- 顧客やパートナーから作り手候補を5人ほど選び、参加の条件を聞き取る(1〜2週間)。
- 作り手への配分率と支払い条件を簡単な表にまとめ、2〜3案を提示して反応を比べる(1週間)。
- 小さな作品販売の場を用意し、作り手が作った商品を一部の顧客に試験的に販売する(2〜4週間)。
- 作り手が継続して作りたいと答え、購入者の中で繰り返し買う人が確認できれば、配分ルールを固めて参加者を広げます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Roblox Corporation / ユーザー制作ゲームのプラットフォーム。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27