この事例の要点
- ResMed Inc.は睡眠時無呼吸など睡眠・呼吸領域の機器、マスク、クラウド型ソフトを提供し、FY2026の売上高(net revenue)は$5,653 millionでした(Form 10-K、FY2026)。
- 売上の大半を占めるSleep and Breathing Healthでは、Masks and otherが前年比13%増と、Devicesの9%増を上回りました(Form 10-K、FY2026)。
- 同社はMatrixCare事業を$490 millionで売却する契約を結び、睡眠・呼吸・在宅医療という中核領域への集中を掲げています(Form 10-K、FY2026)。
どんな事業か
同社は1989年の設立後、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する持続陽圧(CPAP)治療を商業化し、その後、人工呼吸器などの生命維持装置、診断機器、病院・在宅向けのマスクシステム、ヘッドギアなどのアクセサリー、歯科用デバイスへと領域を広げてきたと説明しています(Form 10-K、FY2026)。あわせて、クラウド型のアプリケーションやソフトウェアにより、臨床医がより多くの患者を効率よく管理でき、患者が治療を長く続けられるよう支援するとしています(同)。
セグメントはSleep and Breathing HealthとResidential Care Softwareの2つです(Form 10-K、FY2026)。後者では、Brightreeを通じて米国の在宅医療機器事業者(DME/HME)の臨床業務や請求を自動化するソフトを、MEDIFOX DANを通じてドイツの介護事業者向けソフトを提供しています(同)。2025年には在宅での検査を支える独立診断検査施設(IDTF)のVirtuOxをを取得しました(同)。
同社は、米国でOSAの診断・治療を受けている人は20%未満、その他の市場では10%以下と推計されていると述べています(Form 10-K、FY2026)。従業員は約11,370人で、140を超える国で子会社と独立系販売代理店を通じて販売しています(同)。
収益の仕組み
お金は大きく、睡眠・呼吸領域の機器(Devices)、マスクなど(Masks and other)、在宅・介護事業者向けソフト(Residential Care Software)の3つから入ります(Form 10-K、FY2026)。
費用面では、粗利益率(gross margin)が調達・製造・物流の効率化で改善した一方、Astral機器の一部部品の交換に関するfield safety notificationの費用が一部相殺したとしています(Form 10-K、FY2026)。研究開発には$378 million(net revenuesの6.7%)を投じ、最新機種AirSense 11ではタッチスクリーンや遠隔アップデート(over-the-air update)の機能を導入したと述べています(同)。今回参照した範囲では、営業費用のそれ以上の内訳は示されていません。
数字で確かめる
- 売上高はFY2026で$5,653 million、前年の$5,146 millionから10%増(為替一定で8%増)でした(Form 10-K、FY2026)。為替の影響を除いても伸びていることが読み取れます。
- Devicesは$2,892 million(9%増)、Masks and otherは$2,085 million(13%増)でした(Form 10-K、FY2026)。機器本体よりマスクなどの売上の伸びが速いことが読み取れます。
- Residential Care Softwareは$676 million(5%増)でした(Form 10-K、FY2026)。ソフト事業は睡眠・呼吸領域より緩やかな伸びであることが読み取れます。
- 粗利益率は61.1%で、前年の59.4%から上昇しました(Form 10-K、FY2026)。調達・製造面の効率化が収益性に表れていることが読み取れます。
- 純利益(net income)は$1,523 million、希薄化後1株当たり$10.43でした(Form 10-K、FY2026)。増収が利益の増加にもつながっていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。「ハードウェア+サービス」と「消耗品の定期補充」の観点で見ると、同社の構造は、CPAP機器を入口に、マスクやアクセサリー、クラウドでの治療管理が後に続いていく形と読めます。Masks and otherの伸びがDevicesを上回っている点は、機器を使い続ける患者が増えるほど機器以外の売上が積み上がる関係を示唆していると考えられます。ただし、マスクの交換頻度や補充の仕組みについては、今回参照した資料に具体的な記載はありません。
この形が成り立つ条件は、患者が治療を続けることです。同社がクラウド型ソフトの役割として患者の長期的な治療継続(adherence)の支援を挙げているのは、この条件に直結していると読めます。裏側では、在宅検査という診断の入口、機器の開発と遠隔アップデート、在宅医療機器事業者の業務を支えるソフトまで、患者が治療を始めて続けるまでの流れ全体に手を入れる仕事が必要になると考えられます。
トレードオフは、流れ全体を押さえるほど事業の範囲が広がり、経営資源が分散しやすくなる点です。MatrixCare事業の売却を中核の成長領域への集中と説明していることは、どこまでを自社で持つかを見直し続けている表れと読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の製品は、一度買ってもらった後に、継続して使われる部品や補充品、サービスへとつながる設計になっているか。
- 顧客が「使い続けること」を支える仕組み(データ、アプリ、サポート)があり、それが継続売上とどう結びつくかを説明できるか。
- 診断や導入の前段階など、顧客が使い始めるまでの流れのどこに詰まりがあるかを把握しているか。
小さく試すなら
- 既存顧客を購入時期ごとに分け、本体購入後に発生した付属品・補充品・サービスの売上を洗い出し、継続して購入している顧客の割合を把握します。
- 継続購入が途切れた顧客に短いヒアリングを行い、使わなくなった理由(使いにくさ、交換時期が分からない等)を整理します。
- 交換時期のお知らせや使い方サポートなど、継続を支える施策を一つ選び、一部の顧客に2〜4週間試します。
- 施策を受けた顧客とそうでない顧客の再購入・問い合わせの差を比べ、差が見えれば対象を広げ、見えなければ理由の仮説を立て直します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:ResMed Inc. / 睡眠時無呼吸向けの機器・マスク・ソフト。参照資料:Form 10-K(FY2026)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27