この事例の要点
- Rocket Labは、打ち上げ(Launch Services)と宇宙機・部品(Space Systems)の二つのセグメントで事業を報告し、自社を高度に垂直統合していると記載しています。
- FY2025の売上高601.8百万ドルのうち、Space Systemsが402.8百万ドル、Launch Servicesが199.0百万ドルでした。
- 受注残は1,847.3百万ドルで、最終損益は198.2百万ドルの純損失です。成長のために損失を抱えながら事業を広げている段階と読み取れます。
どんな事業か
Rocket Lab Corporationは、普通株式(RKLB)をNasdaqに上場しています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。主力の打ち上げ機Electronは、300kgまでの宇宙機を低軌道へ運ぶ小型のロケットで、3Dプリントで造った電動ターボポンプエンジン「Rutherford」を使います。2025年12月31日までに、成功した打ち上げは75回、軌道へ投入した宇宙機は200機を超えたと記載しています(Form 10-K、FY2025)。
開発中のNeutronは、再使用型の構成で約13,000kgを低軌道へ運べる中型ロケットで、バージニア州ウォロップス島の発射施設LC-3を建設中です。宇宙機の事業では、低軌道から静止軌道、惑星間までのミッションに向けた宇宙機(Photonなど)を提供し、2025年11月には、NASAのESCAPADEミッションの双子の探査機を軌道に投入しました。部品には、リアクションホイール、スタートラッカー、太陽電池、無線機、分離機構、宇宙用電池、光学系、ソフトウェアがあります(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Form 10-K(FY2025)の記載をもとに、二つのセグメントの関係を整理します。
- 入り口:Electronによる打ち上げサービスを、衛星を運びたい顧客に提供します。
- 課金:打ち上げ1回ごとの役務に加え、宇宙機そのものや部品を販売します。
- 広がり:同社は、打ち上げ機と宇宙機のための多くの部品とサブシステムを自社で設計・製造していると説明しています。
2025年は21回の打ち上げを行い、2024年の16回から増えました(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 売上高は、2025年が601.8百万ドル、2024年が436.2百万ドル、2023年が244.6百万ドルでした(Form 10-K、FY2025)。2025年の前年比は、601.8÷436.2から約38%増と計算でき、売上が年々大きくなっていることが読み取れます。
- セグメント別では、Space Systemsが402.8百万ドル、Launch Servicesが199.0百万ドルでした。Space Systemsの構成比は、402.8÷601.8で約67%と計算でき、売上の約3分の2が宇宙機・部品側にあることが読み取れます。
- 売上総利益は207,181千ドル、売上総利益率は34.4%でした(Form 10-K、FY2025)。
- 受注残は2025年12月31日時点で1,847.3百万ドルで、内訳はSpace Systemsが1,371.7百万ドル、Launch Servicesが475.6百万ドルでした。一方、上位5社の顧客が売上の約49%、上位5社の受注残顧客が受注残の約77%を占めます(Form 10-K、FY2025)。受注残が売上の3倍程度ある一方で、少数の顧客への依存度が高いことが読み取れます。
- 純損失は、2025年が198.2百万ドル、2024年が190.2百万ドル、2023年が182.6百万ドルでした。現金及び現金同等物は828.7百万ドル、有価証券は270.2百万ドルで、債務の元本総額は157.4百万ドルでした(Form 10-K、FY2025)。3年続けて純損失ですが、手元資金を抱えながら事業を拡大していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、垂直統合、ハードウェア+サービスの型が重なっていると読めます。打ち上げは、顧客が宇宙へ行くための最初の接点です。そこで信頼を得たうえで、衛星そのものや部品も同じ会社から調達できれば、顧客は調整先が減り、同社は一件あたりの売上を広げられる設計になると考えられます。
売上の約3分の2が宇宙機・部品側にあるという数字は、打ち上げが入り口で、収益の中心は別にあることを示すと読めます。ただし、これは資料の数字から読み取れる構成であり、同社が打ち上げを入り口と位置づけているかどうかは、資料から断定できません。
トレードオフは、自社で多くを内製するほど、初期の投資が重く、損失が続く期間が長くなることです。顧客と受注残が少数に集中している点も、前提として確認が必要です。内製の範囲は、顧客が自社に任せたい範囲と、コストの重さの兼ね合いで決まると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の入り口になっているサービスは何で、その先に顧客が必要とするものは何でしょうか。
- 外部に任せている工程のうち、内製にすれば顧客への価値や利益が大きく変わるものはどれでしょうか。
- 少数の顧客に売上が偏っているとき、どんな形で顧客層を広げられるでしょうか。
小さく試すなら
- 直近の案件を数件選び、顧客が最初に頼んだものと、その後に追加で頼んだものを時系列で並べます。
- 追加で頼まれたもののうち、他社に依頼している工程を書き出します。
- そのうち一つを自社で提供した場合の費用と、顧客にとっての手間の減り方を試算(目安)として作ります。
- 2〜4週間で、既存の顧客数社にその案を見せ、一括で任せたいと言われるかを確認します。反応が薄ければ、別の工程で再度検証します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Rocket Lab Corporation / Electron、Neutron、宇宙機・部品。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25