← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

ServiceTitan「職人・施設工事向けOS」に学ぶ業種特化SaaSと決済の事業設計

空調・配管・電気などの工事会社向けに業務ソフトを月額で提供し、決済と消費者ローンの紹介でも収益を得る構造です。売上9億6,100万ドルとGTV821億ドルの関係を、米国SEC提出の10-Kから確かめます。

分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS

この事例の要点

  • ServiceTitan, Inc.は、住宅・商業設備の工事や保守を担う「トレード」事業者向けに、顧客管理、現場管理、基幹業務、人事、フィンテックを一つの基盤で提供しています(Form 10-K、2026年1月期)。
  • 主力は「Core」製品のサブスクリプションで、Pro製品の追加機能と、決済処理や第三者の消費者ローンを含むFinTech製品を重ねる構造です(Form 10-K、2026年1月期)。
  • 2026年1月期の売上高は9億6,100万ドル(前期7億7,190万ドル相当)で、顧客が同社基盤で請求した金額(GTV)は821億ドルでした(Form 10-K、2026年1月期)。

どんな事業か

ServiceTitan, Inc.は米国カリフォルニア州グレンデールに本社を置き、Nasdaq(ティッカー TTAN)に上場しています。同社は自社を「トレードを動かすオペレーティングシステム」と説明し、従業員数人の家族経営から全国展開の大企業、フランチャイズ網までを顧客として挙げています。購入の意思決定者は多くの場合、事業主本人です(Form 10-K、2026年1月期)。

2026年1月31日時点のActive Customer(年間請求額が1万ドルを超える顧客)は約10,800社で、2026年度の年間請求額の97%超を占めると記載されています。従業員数は3,414人です(Form 10-K、2026年1月期)。

収益の仕組み

同社は主に直販チームを通じて、Core製品のサブスクリプションを販売しています。提供の入り口から継続までは、次のように読み取れます。

  • 入り口:事業主向けの直販営業でCore製品(顧客管理・現場管理など)を導入してもらう。
  • 課金:サブスクリプション料金は、顧客が雇う技術者の人数にも一部連動すると説明されています。
  • 拡張:Pro製品で機能を追加し、FinTech製品で決済処理と第三者の消費者ローンを提供する。
  • 継続:決済処理は第三者の決済事業者と接続する従量型のサービスで、FinTechの収益は提携先からの紹介料やISO(独立販売組織)としての収益に由来すると記載されています。

2026年度の収益は、プラットフォーム収益925,418千ドル、プロフェッショナルサービス等35,547千ドルで、合計960,965千ドルでした(Form 10-K、2026年1月期)。

数字で確かめる

  • 売上高:960,965千ドル(2026年度)、771,878千ドル(2025年度)で、増加率は約24%です。基盤収益が大半を占め、導入支援などのサービス収益は小さいことが読み取れます(Form 10-K、2026年1月期)。
  • GTV:2026年度821億ドル、2025年度685億ドルです。顧客の請求額が増えるほど、決済関連の収益機会も広がる設計であることが読み取れます(Form 10-K、2026年1月期)。
  • 売上総利益:673,739千ドル(2026年度)、500,927千ドル(2025年度)で、売上総利益率は資料の数値から約70.1%と約64.9%と計算できます。規模の拡大とともに粗利率が改善していることが読み取れます(Form 10-K、2026年1月期)。
  • グロスダラーリテンション:2024〜2026年度のいずれも「95%超」と記載されています。一度導入した顧客がほとんど離れない業務基盤であることが読み取れます(Form 10-K、2026年1月期)。
  • 純損失:2026年度159.9百万ドル、2025年度239.1百万ドルで、累積赤字は13億ドルです。成長を優先してきた一方で、損失幅は縮小していることが読み取れます(Form 10-K、2026年1月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「業種特化SaaS」の型で読むことができます。電話受付、見積もり、日程調整、請求、入金といった工事会社の一日の流れを一つの画面にまとめると、ソフトは事務ツールではなく、売上が通る道そのものになります。顧客が請求する金額(GTV)が同社基盤の上を流れるため、離脱しにくいと読めます。

収益面では、月額の利用料に加えて、請求金額の流れに連動する決済と消費者ローンの紹介が重なります。サブスクリプションだけでは顧客1社あたりの収益はユーザー数で頭打ちになりますが、顧客の売上が増えるほど決済側の収益機会も増える構造に見えます。入り口は軽いソフト、伸びしろは顧客の取引額、という二段の設計です。

一方で、事業主向けの直販営業と導入支援には手間がかかります。売上総利益率が上がっても純損失が残っている点は、営業と開発への先行投資が大きいことを示していると考えられます。業種に深く入るほど価値は高まる一方、顧客獲得のコストも重くなるという両面があります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の顧客の「一日の業務の流れ」のうち、自社のサービスが通っている工程と通っていない工程はどこでしょうか。
  • 顧客の売上や取引額が増えたとき、自社の収益も自然に増える課金の仕組みはありますか。
  • 導入が重い顧客に対して、導入支援の手間を小さくする入り口の製品はつくれますか。

小さく試すなら

  1. 既存顧客3〜5社に、受注から入金までの流れを聞き取り、自社が関与していない手作業の工程を書き出します。
  2. その中から1工程を選び、スプレッドシートやフォームなど軽い道具で代行または支援する試作を2〜4週間で用意します。
  3. その工程を使った顧客の作業時間と抜け漏れの件数を、使う前後で記録します。
  4. 効果が確認できた工程にだけ、月額の料金案を提示して反応を確かめます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:ServiceTitan, Inc. / トレード事業者向けプラットフォーム。参照資料:Form 10-K(2026年1月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗