この事例の要点
- Vail Resorts, Inc.は、Mountain、Lodging、Real Estateの3つの報告セグメントで事業を営み、2026年度の純収益のうちMountainが約88%、Lodgingが約12%を占めています(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
- 「Epic Pass」などのパス商品は、2026年度のリフト収入の約70%、来場者数の約73%(無料来場を除く)を占めています(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
- 2026年度は主要な収益項目がそろって前年を下回り、2026/2027シーズンのパス販売数も前年同時期に比べ約12%減と開示されています。会員を先に集める型は、更新と新規が落ちると収益に強く響くことが読み取れます(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
どんな事業か
Vail Resorts, Inc.は、スキー場などの山岳リゾートを運営する米国の企業です。10-Kによれば、Mountainセグメントでは42の大型リゾートと地域スキー場を運営し、スキースクール、飲食、小売・レンタルも手がけています。Lodgingセグメントでは、RockResortsホテルや管理するコンドミニアム、国立公園局の営業権にもとづく宿泊施設などを運営しています(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
Real Estateセグメントは、主に第三者の開発業者への土地区画の売却です。10-Kはこのセグメントが純収益に占める比率を0%と記しています。つまり収益の中心は、スキー場の入場権であるリフト券とパス、そしてその周辺で現地消費される飲食・スクール・小売の組み合わせです(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
収益の仕組み
収益は、入口で入場権を売り、現地でさらに買ってもらう二段の構造です。
- 入り口:Epic Passは全リゾートを無制限に利用できるパスで、リフト券より先に、シーズン前に販売されます。
- 課金:パス商品はリフト収入の約70%を占め、残りが当日券などです。
- 継続:パス保有者は来場者の約73%を占め、来場した人にスキースクール(約278百万ドル)、飲食(約223百万ドル)、小売・レンタル(約283百万ドル)が売れます。
- 周辺:約280の飲食店舗と約330の小売・レンタル拠点を持ち、約4,500の宿泊ユニットも運営します。
10-Kは、第2・第3四半期にMountainとLodgingの純収益の約81%が発生すると記し、季節変動が大きい事業であることも示しています(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
数字で確かめる
- Mountainの純収益は2,503,184千ドルで、前年の2,629,873千ドルから4.8%減りました。リフト収入は1,451,068千ドル(3.5%減)で、Mountain純収益の約58%にあたる(リフト収入÷Mountain純収益の計算)ことが読み取れます(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
- スキースクール収入は278,050千ドルで10.3%減、飲食は222,518千ドルで7.6%減、小売・レンタルは282,774千ドルで6.5%減でした。入場の落ち込みより付帯収入の落ち込みのほうが大きいことが読み取れます(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
- Resort Reported EBITDAは745,671千ドルで、前年の844,136千ドルから11.7%減りました。収益の減少幅より利益の減少幅が大きいことが読み取れます(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
- 親会社に帰属する純利益は147,535千ドルで、前年の280,004千ドルから47.3%減りました。固定的な費用を抱える施設運営で、収益の変動が利益に増幅されて表れることが読み取れます(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
- 2026/2027シーズンのパス商品は、2026年9月18日時点で販売数が約12%減、販売額が約6%減でした(前年同時期比、販売税を含む)。販売数より販売額の減少が小さいことが読み取れます(Form 10-K、2026年7月31日終了年度)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「会員制(パス)」の型で読むことができます。シーズン前にパスを売って収入を確定させ、その来場者に現地で飲食やスクールを買ってもらう形です。リフト収入の約70%がパス商品という開示は、収益の多くが来場前に決まっていることを示しており、天候が読みにくい事業の収入を先に固める役割を果たしていると考えられます。
一方で、この型は固定費の重い施設運営と組み合わさっています。2026年度のように収益が数%動くと、利益はその数倍動きます。パスは安定収入の源であると同時に、更新と新規の数が落ちたときに翌年度へ影響が及ぶ構造でもあると読めます。付帯収入の落ち込みが入場の落ち込みより大きかった点は、パスの価値を「来場の回数」だけで測ると、現地での消費を見落とす可能性を示しています。
なお、減少の原因について、本稿は10-Kの記載を超えて断定しません。数値の変化を事業設計の観点で読むことにとどめています。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上のうち、サービスを提供する前に確定している割合はどのくらいでしょうか。
- 先払いの会員やパスを買った人は、そのあと別の商品をどれだけ買っているでしょうか。
- 会員の更新と新規が1割落ちたとき、固定費を含めた利益はどこまで動くでしょうか。
小さく試すなら
- 過去1年の売上を、事前に支払われたものと当日に支払われたものに分け、その比率を出します。
- 先払い顧客と当日顧客の、その後の追加購入額を比べます。
- 期間限定の先払いプラン(回数券や年間利用など)を既存顧客の一部に2〜4週間案内し、申込数を記録します。
- 先払い顧客の追加購入を促す導線(予約時の提案など)を1つ決め、効果を確認します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Vail Resorts, Inc. / Epic Pass。参照資料:Form 10-K(2026年7月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25