← 実践記事

OTSUMU KNOWLEDGE

会計ソフトとの連携:freee・マネーフォワードのAPI活用設計

販売・請求データを会計ソフトへ自動連携するときの要点は、勘定科目・税区分・取引先の対応付け、登録の単位とタイミング、締め後の修正と二重登録への備えです。freee・マネーフォワードなどのAPI活用で確認すべき点と導入手順を解説します。

販売や請求のデータを会計ソフトへ自動で連携すると、経理担当者が請求書を見ながら仕訳を手入力する作業や、販売管理と会計の数字を月末に突き合わせる作業を大きく減らせます。freeeやマネーフォワード クラウドのようなクラウド会計ソフトはAPIを公開しており、自社のシステムから取引や請求の情報を登録する連携を作ることができます。

ただし、会計ソフトとの連携で難しいのは、技術的な接続よりも「どの取引を、どの勘定科目・税区分・取引先で、どの単位で登録するか」という仕訳の対応付けと、締めた後の修正や入金の消込といった運用の設計です。ここを経理担当者や税理士と合意しないまま開発すると、自動で登録されたデータを毎月手で直す、という本末転倒な状態になりかねません。

この記事は、自社の販売管理・請求・ECなどのデータを会計ソフトに自動連携したいと考えている事業責任者や、連携の開発を検討している経理・管理部門の担当者に向けて書いています。連携の方式、仕訳の対応付けの設計、入金消込との関係、締め後の修正の扱い、導入の手順、よくある失敗までを整理します。

会計ソフトとAPI連携するメリットと、連携の対象になるデータ

会計ソフトとの連携で自動化できる主な作業は次のとおりです。

  • 売上の計上:販売管理や請求の仕組みで発行した請求のデータを、売上の取引として会計ソフトに登録する。
  • 請求書の作成:自社システムの受注や契約のデータから、会計ソフトの請求書機能で請求書を作成する。
  • 入金の消込:銀行口座の入金の明細と、登録済みの売掛金を照合して消し込む。
  • 経費や仕入の計上:購買や経費精算のデータを、費用や買掛金の取引として登録する。
  • 取引先の同期:顧客管理や販売管理の取引先情報を、会計ソフトの取引先として登録・更新する。

手入力をなくすことで、作業時間が減るだけでなく、転記の誤りや計上の漏れが減り、月次の締めが早くなります。販売の数字と会計の数字が同じ元データから作られるため、両者の食い違いを調べる手間も減ります。

一方で、会計のデータは税務申告や決算の基礎になるため、誤ったデータが大量に自動登録されると、修正の手間も影響も大きくなります。自動化の範囲と確認の手順を慎重に設計する必要があります。

会計ソフト連携の3つの方式

自社のデータを会計ソフトに取り込む方法は、大きく三つあります。

方式仕組み向いているケース注意点
会計ソフトの標準連携会計ソフトが用意している他サービスとの連携機能を使う利用中のECや決済、請求のサービスに標準の連携がある仕訳の細かい指定に限界があることがある
CSV取り込み自社システムから所定の形式で書き出し、会計ソフトに取り込む月に一度など頻度が低い、件数がまとまっている書き出しと取り込みの手作業が残る、形式の調整が必要
API連携の個別開発自社システムから会計ソフトのAPIを呼び出して登録する件数が多い、自社独自の販売データがある、即時に反映したい開発と保守の費用、認証の管理、仕様変更への追従

最初に確認すべきなのは、標準連携で足りるかどうかです。利用中のECサイトの仕組みや決済サービス、請求書の発行サービスが会計ソフトとの連携に対応していれば、設定だけで売上の取り込みができることがあります。

自社で作った販売管理システムや、標準連携のない業務システムのデータを取り込む場合は、CSV取り込みかAPI連携の個別開発を選びます。件数が少なく月次で足りるならCSVで始め、件数が増えて手作業の負担が大きくなってからAPI連携に移る、という段階的な進め方も合理的です。どの方式を選ぶかの一般的な判断基準はSaaS同士をつなぐ方法で整理しています。

freee・マネーフォワードのAPIを使うときに確認すること

freeeやマネーフォワード クラウドなどのクラウド会計ソフトは、開発者向けにAPIを公開しています。ただし、提供されている機能、利用できる料金プラン、認証の方式、呼び出しの制限などは製品ごとに異なり、また変わることもあります。開発に入る前に、各社の開発者向けの最新の資料で次の点を確認してください。

  • 登録できるデータの種類:取引(収入・支出)、仕訳、請求書、取引先、勘定科目や税区分などのマスタのうち、何をAPIで登録・取得できるか。
  • 利用できるプランと事業所:APIの利用に必要な料金プランや権限。複数の事業所を管理している場合の扱い。
  • 認証の方式:多くの場合、利用者の許可を得てアクセス権を受け取るOAuthの方式が使われる。アクセス権の有効期限と更新の仕組み、連携に使うアカウントを誰の名義にするか。
  • 呼び出しの制限:一定時間あたりの回数の上限、一度に登録できる件数。月末に件数が集中する場合に収まるか。
  • テスト用の環境:本番のデータに影響を与えずに試せる事業所やアカウントを用意できるか。

APIの仕様の細部は変わりやすい情報です。この記事では特定の製品の仕様を前提にせず、どの会計ソフトでも共通して必要になる設計の考え方を中心に説明します。API連携の一般的な進め方はAPI連携とは何かで解説しています。

仕訳の対応付けの設計:勘定科目・税区分・取引先・登録単位

会計ソフト連携の設計で最も重要なのが、販売や請求のデータを会計のデータにどう対応付けるかです。経理担当者と、必要に応じて顧問の税理士とも相談しながら、次の項目を一つずつ決めます。

勘定科目

販売データの種類ごとに、どの勘定科目で計上するかを決めます。商品の売上、サービスの売上、送料、手数料など、売上の内訳を分けて計上するかどうかも決めます。販売管理の商品区分と勘定科目の対応表を作り、新しい商品区分が増えたときにこの表を更新する手順も決めておきます。

税区分

消費税の税率と課税区分を、明細ごとに正しく設定する必要があります。標準税率と軽減税率の商品が混在する場合、非課税や不課税の取引がある場合、税込と税抜のどちらで金額を持つか、端数の処理をどうするかを決めます。販売管理側の税の計算と、会計ソフト側の税の計算が食い違わないよう、どちらで計算した金額を正とするかも決めます。

取引先

売掛金を取引先ごとに管理するには、販売管理の顧客と会計ソフトの取引先を対応付ける必要があります。顧客コードを会計ソフトの取引先の項目に持たせて照合する方法が確実です。名前で照合すると、表記ゆれや同名の会社で誤りが起きます。新しい顧客が増えたときに、取引先を自動で作るか、経理担当者が確認してから作るかも決めます。

部門・品目などの分析項目

部門別、事業別、プロジェクト別に損益を見たい場合は、会計ソフトの部門や品目などの分析用の項目に、どの値を設定するかを決めます。後から分析したくなっても、過去のデータに遡って設定するのは手間がかかるため、最初に必要な分析の切り口を決めておきます。

対応付けの結果は、次のような表にまとめておくと、開発会社と経理担当者の認識を合わせやすくなります。

販売データの区分勘定科目税区分取引先部門・分析項目備考
商品の販売売上高標準税率の課税売上顧客コードで照合販売チャネル軽減税率の商品は別行で計上
月額サービス売上高(サービス)標準税率の課税売上顧客コードで照合サービス名計上する月の基準を経理と合意
送料売上高または別科目課税売上顧客コードで照合販売チャネル科目は経理・税理士と確認
値引・返品売上の取消または値引の科目元の取引に合わせる元の取引と同じ元の取引と同じ元の請求との紐付けを残す

この表は一例です。実際の勘定科目や税区分の選び方は、業種や会社の方針、税務上の判断によって異なります。最新の制度と自社の扱いは、税理士などの専門家に確認してください。

登録の単位・タイミング・計上日

仕訳の対応付けと並んで決めておくべきなのが、どの単位で、いつ登録するかです。

登録の単位:請求書一枚ごとに一件の取引として登録するか、一日分や一か月分をまとめて一件にするかを決めます。請求ごとに登録すると、売掛金を取引先ごと・請求ごとに管理でき、入金の消込もしやすくなります。一方、ECのように件数が非常に多い場合は、日ごとにまとめて登録し、明細は販売管理側で持つ、という選択もあります。まとめる場合は、会計ソフト側で個々の取引を追えなくなるため、販売管理との照合の方法を決めておきます。

登録のタイミング:請求の確定時に即時に登録するか、一日に一回まとめて登録するか、月末に一括で登録するかを決めます。即時の登録は最新の状態を保てる反面、請求の訂正が多い業務では修正の手間が増えます。請求の確定と訂正の流れを見て、訂正が落ち着いた時点で登録するタイミングを選ぶのが現実的です。

計上の日付:会計ソフトに登録する取引の日付を、請求日、出荷日、サービスの提供月などのどれにするかを決めます。売上をいつ計上するかは会計の方針に関わるため、経理担当者や税理士と合意しておきます。

入金消込と請求書との関係

売上を連携しても、入金の消込が手作業のままでは、経理の負担は思ったほど減りません。会計ソフトの多くは、銀行口座の明細を取り込んで、登録済みの売掛金と照合する機能を持っています。この機能をうまく働かせるために、連携の設計で次の点に気をつけます。

  • 取引先と金額を正しく登録する:消込は、入金の名義と金額を売掛金と照合して行うため、取引先の対応付けと金額の正確さが前提になります。
  • 振込名義と取引先の対応を管理する:振込の名義が取引先の正式名称と違うことはよくあります。名義と取引先の対応を会計ソフトに覚えさせるか、自社で管理するかを決めます。
  • まとめての入金や手数料の差し引きに備える:複数の請求をまとめて一回で振り込まれる場合や、振込手数料を差し引いて入金される場合の扱いを、経理担当者と決めておきます。

請求書の発行から送付、入金の確認までを含めた自動化の全体像は、請求書の発行・送付を自動化するで解説しています。

締め後の修正と、連携の障害への備え

会計のデータには「締め」があります。月次や年次で締めた期間のデータは、原則として変更しない運用をとる会社が多いはずです。連携の設計では、締めた後に販売データの訂正が発生した場合の扱いを必ず決めておきます。

  • 締めた期間の取引は直接変更しない:訂正が発生した場合は、元の取引を変更するのではなく、訂正の取引を当月に追加で登録する、といったルールを決めます。
  • 連携の処理を締めに対応させる:会計ソフトで締めた期間の取引を、連携の処理が自動で更新しようとしないように作ります。更新しようとした場合は、エラーとして担当者に知らせます。
  • 訂正の履歴を残す:どの販売データの訂正が、どの訂正の取引として登録されたかを追えるようにします。

連携が失敗した場合の備えも必要です。会計ソフトが一時的に応答しない、アクセス権の期限が切れた、取引先が見つからない、といった失敗は必ず起こります。特に注意したいのが二重登録です。登録の依頼を送った直後に通信が切れて結果が分からない場合に、そのまま再試行すると同じ売上が二件登録されかねません。請求番号などの一意の識別子を会計ソフト側に持たせて重複を確認する、毎日販売管理と会計ソフトの件数・合計金額を照合する、といった仕組みを組み込みます。障害への備え方の詳細はAPI連携の障害対策で解説しています。

会計ソフト連携の導入手順

  1. 現在の経理業務を書き出す:販売・請求のデータがどこで作られ、誰がどのように会計ソフトに入力し、どう確認しているかを整理します。
  2. 自動化の範囲を決める:売上の計上、請求書の作成、取引先の同期、入金の消込のうち、どこから自動化するかを決めます。最初は売上の計上だけ、のように絞るのが安全です。
  3. 方式を選ぶ:標準連携、CSV取り込み、API連携の個別開発のどれにするかを、件数と頻度、販売データの持ち方から決めます。
  4. 仕訳の対応表を作る:勘定科目、税区分、取引先、分析項目の対応付けを、経理担当者と税理士の確認を得て表にまとめます。
  5. 登録の単位・タイミング・計上日を決める:請求ごとか日ごとか、即時か日次か、どの日付で計上するかを決めます。
  6. 締めと訂正のルールを決める:締め後の訂正の扱い、連携の処理の制御方法を決めます。
  7. テスト用の事業所で検証する:本番に影響しない環境で、通常の取引、税率の混在、値引・返品、締め後の訂正などを試し、経理担当者に結果を確認してもらいます。
  8. 並行運用してから切り替える:一か月程度、従来の手入力と自動連携を並行させ、結果が一致することを確かめてから自動連携に切り替えます。
  9. 毎月の照合を運用に組み込む:販売管理と会計ソフトの件数・合計金額を毎月照合し、食い違いがないことを確認する手順を定着させます。

会計ソフト連携のチェックリスト

  • 自動化する業務の範囲と、最初に取り組む範囲を決めたか
  • 利用中のサービスに会計ソフトとの標準連携がないか確認したか
  • 会計ソフトのAPIで必要なデータを登録でき、契約中のプランで使えるか確認したか
  • 勘定科目・税区分・取引先・分析項目の対応表を作り、経理担当者と税理士の確認を得たか
  • 税込・税抜の扱いと端数処理を、販売管理と会計ソフトで揃えたか
  • 登録の単位、タイミング、計上日を決めたか
  • 締め後の訂正の扱いと、締めた期間を更新しない制御を決めたか
  • 二重登録を防ぐ識別子と、毎月の照合の手順を決めたか
  • 連携に使うアカウントを個人ではなく組織として管理できるか
  • テスト用の事業所で検証し、並行運用の期間を設ける予定があるか
  • インボイス制度や電子帳簿保存法など、関連する制度への対応を専門家に確認したか

会計ソフト連携でよくある失敗とその避け方

経理担当者を巻き込まずに設計する:開発側だけで仕訳の対応付けを決め、経理担当者が公開後に修正を重ねるケースです。対応表は必ず経理担当者と一緒に作り、テストの結果も経理担当者に確認してもらいます。

例外の取引を考えていない:通常の売上は正しく連携されるものの、値引、返品、前受金、分割請求などの例外が想定されておらず、毎月手で直すことになるケースです。過去数か月の取引から例外の種類を洗い出し、それぞれの扱いを決めます。

税の計算が二重になる:販売管理で計算した税額と、会計ソフトが自動計算した税額が端数で食い違うケースです。どちらの計算結果を正とするかを決め、会計ソフトに登録するときの金額の渡し方を統一します。

照合をしていない:連携が動いているように見えても、一部の取引が登録されていないことに決算の時期まで気づかないケースです。毎月の照合を運用の手順として定着させます。

架空の例:月額サービスの売上連携

たとえば、法人向けの月額サービスを提供する会社(架空の例)が、自社の契約管理の仕組みで毎月請求を作り、経理担当者が会計ソフトに手入力しているとします。まずは請求の確定後、一日一回まとめて請求ごとの売上を会計ソフトに登録する連携から始めます。顧客コードを取引先の項目に持たせ、請求番号を重複の確認に使い、プラン変更による日割りや値引の扱いは事前に経理担当者と対応表で合意しておきます。入金の消込は当面、会計ソフトの標準機能で行い、運用が安定してから次の自動化を検討します。

よくある質問

Q. 会計ソフトとの連携は、経理の知識がない開発者でも作れますか?

技術的な接続は作れますが、仕訳の対応付けや計上のルールは経理と税務の判断が必要です。開発者だけで決めるのではなく、経理担当者や税理士が対応表を確認し、テストの結果を検証する体制を作ることが前提になります。

Q. CSV取り込みとAPI連携はどちらがよいですか?

件数が少なく月に一度の処理で足りるならCSV取り込みで十分です。件数が多い、毎日の反映が必要、手作業の取り込みでミスが起きている、といった場合はAPI連携を検討します。CSVで始めて、取り込みの形式と運用が固まってからAPI連携に移ると、設計の手戻りを減らせます。

Q. インボイス制度や電子帳簿保存法への対応は連携で考える必要がありますか?

請求書の記載事項や保存の方法など、連携の設計に関わる部分があります。制度の内容と自社の対応方針は、税理士などの専門家や公的機関の最新の情報で確認したうえで、要件を設計に反映してください。

Q. 会計ソフトを乗り換える予定がある場合はどうすればよいですか?

連携の処理の中で、会計ソフトに依存する部分(APIの呼び出し)と、依存しない部分(仕訳の対応付けのルール)を分けて作っておくと、乗り換えの際に作り直す範囲を小さくできます。乗り換えの時期が近い場合は、新しい会計ソフトに合わせて連携を作るほうが無駄がありません。

Otsumuに相談できること

利用中のECや請求書の発行サービスに会計ソフトとの標準連携があれば、その設定と経理担当者による対応付けの確認だけで、売上の取り込みは十分に自動化できます。件数が少なければCSV取り込みでも困らないことが多く、この段階では開発を外部に頼む必要はありません。まずは標準の機能でどこまでできるかを確かめてください。

一方で、自社独自の販売管理や契約管理のデータを会計ソフトに連携したい、例外の取引が多く標準連携やCSVでは対応しきれない、二重登録や登録漏れを確実に防ぎたい、といった場合は、経理の業務とシステムの両方を理解して設計できる相手と進めたほうが、公開後の手直しを減らせます。

Otsumuは自らも事業を手がける立場から、経理担当者や顧問の専門家と連携しながら自動化の範囲を絞り込み、AIを活用した少人数・短期間の開発で、設計から運用・改善までを一気通貫で支援しています。会計ソフトを含むシステム同士の連携はAPI連携開発で、請求や経理を含む業務全体の自動化は自社サービス運用の自動化コンサルティングで進め方を紹介しています。

どこから自動化すべきかの判断や、仕訳の対応表の整理の進め方だけでもご相談いただけます。まずは30分の無料相談で、現在の経理業務の流れをお聞かせください。

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

事業の検証から開発・運用まで、現在の段階に合わせて支援します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

30分の無料診断で、次の一手を整理する ↗