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新規事業の中途採用:事業開発人材の見極め方と面接で聞く質問

事業開発人材の中途採用では、経歴の華やかさより「不確実な状況で何を考え、どう動いたか」を確かめることが大切です。求める人物像の定義、面接で聞く質問と見るべき答え、実務課題の使い方、採用後の立ち上げまでを解説します。

新規事業を担う事業開発人材を中途採用するとき、職務経歴書の華やかさに目を奪われると、採用後に「思っていた人と違った」という結果になりがちです。有名企業での新規事業の経験、大きなプロジェクトの責任者という肩書き、立ち上げた事業の名前。こうした情報は確かに参考になりますが、それだけでは、その人が自社の不確実な状況で何を考え、どう動くのかは分かりません。

事業開発人材の見極めで確かめるべきなのは、「不確実な状況で、どんな情報をもとに、何を判断し、どう動いたか」という具体的な行動の跡です。そのためには、求める人物像を行動の言葉で定義し、面接では過去の具体的な場面を深く掘り下げる質問をし、必要に応じて実務に近い課題で考え方を確かめる、という三つを組み合わせることが有効です。そして、採用は内定で終わりではなく、入社後の立ち上げまで設計して初めて成果につながります。

この記事は、新規事業の責任者や人事担当者で、事業開発人材の中途採用を進めている、またはこれから始める方に向けて書いています。求める人物像の定義、面接で聞く質問と見るべき答え、実務課題の使い方、採用後の立ち上げ、よくある失敗を整理します。

事業開発人材の採用が難しい理由

事業開発という仕事は、会社や事業の段階によって中身が大きく異なります。新しい市場を探索する仕事もあれば、他社との提携を進める仕事、既存の商品を新しい顧客層に広げる仕事もあります。同じ「事業開発」という肩書きでも、前職で何をしていたかは人によってまったく違います。役割の全体像は事業開発(BizDev)の解説ページで整理しています。

さらに、新規事業の成果は、本人の力だけでなく、会社の資源、市場のタイミング、チームの力に大きく左右されます。前職で事業が成功したからといって、その人の力によるものとは限りませんし、事業が失敗したからといって、その人の力が足りなかったとも限りません。成果の結果だけを見ると、本人の力を見誤ります。

そして、事業開発で求められる力の多くは、顧客理解、仮説検証、巻き込み、判断といった、外からは見えにくい行動の質です。これらは、職務経歴書にはほとんど表れません。だからこそ、面接や課題を通じて、行動の跡を具体的に確かめる必要があります。

求める人物像を行動の言葉で定義する

採用を始める前に、求める人物像を定義します。ここで多くの会社がやってしまうのが、「主体性がある」「コミュニケーション力が高い」「新規事業の経験がある」といった抽象的な言葉で定義することです。これでは、面接官によって解釈が分かれ、評価がばらつきます。

担ってもらう仕事から逆算する

まず、入社後に担ってもらう仕事を具体的に書き出します。最初の半年で何をしてほしいのか、一年後にはどうなっていてほしいのか。たとえば、「既存顧客への聞き取りから新しいテーマの候補を見つけ、検証計画を立てて実行する」「開発会社と協力して検証用の試作を作り、顧客の反応を確かめる」「検証の結果をもとに経営層に事業化の判断を求める」といった具合です。

仕事に必要な行動を書き出す

次に、その仕事をこなすために必要な行動を書き出します。抽象的な資質ではなく、観察できる行動の言葉で書くのがポイントです。

抽象的な言葉行動の言葉に置き換えた例
主体性がある指示がなくても、自分で問いを立てて顧客に会いに行く
顧客志向顧客の発言の背後にある行動や状況の事実を聞き出す
論理的思考力事業の前提を分解し、最も重要で不確かなものを特定する
柔軟性仮説が外れたと分かったとき、それを認めて方向を変える
巻き込み力権限のない相手から、相手の関心に沿った形で協力を得る
実行力不完全な情報で判断し、判断したことを素早く形にする

必須と歓迎を分ける

最後に、必須の条件と、あればよい条件を分けます。すべてを満たす人はまず見つかりません。入社後に育てられる部分と、入社時点で必要な部分を見極め、必須の条件は絞り込みます。特定の業界の経験や、特定の手法の知識は、入社後に身につけられることが多いため、必須にするかは慎重に判断します。

面接で聞く質問と、見るべき答え

面接では、過去の具体的な場面を掘り下げる質問を中心にします。「もしこういう状況になったらどうしますか」という仮定の質問は、誰でも模範的な答えを用意できるため、見極めの役に立ちにくいからです。過去の事実を聞き、その場面で本人が何を考え、何をしたのかを具体的に確かめます。

質問の基本の型

一つの場面について、次の順序で深く掘り下げます。

  1. 状況を聞く。 「そのとき、どんな状況でしたか。何が分かっていて、何が分かっていませんでしたか」
  2. 本人の役割を聞く。 「その中で、あなたは何を担当していましたか。チームの中での役割は何でしたか」
  3. 考えたことを聞く。 「そのとき、何が一番重要だと考えましたか。なぜそう考えたのですか」
  4. 行動を聞く。 「具体的に何をしましたか。最初に何をして、次に何をしましたか」
  5. 結果と学びを聞く。 「結果はどうなりましたか。今振り返ると、何を変えますか」

この型で掘り下げると、本人が実際にやったことと、チームがやったことの区別がつき、話を盛っている場合は具体性が途中で失われるため見分けがつきます。

見極めたい観点ごとの質問例

見極めたい観点質問の例見るべき答えの特徴
顧客理解顧客の話を聞いて、最初の想定が覆った経験を教えてください顧客の具体的な発言や行動を挙げ、何が覆ったかを説明できる
仮説検証事業の前提を確かめるために、最も小さく試した例を教えてください何を確かめたかったか、なぜその方法を選んだかが明確
判断と撤退自分が進めていたことを止める判断をした経験はありますか止めた基準と理由を具体的に語れる。止めた経験を否定的に捉えていない
巻き込み権限のない相手から協力を得なければならなかった場面を教えてください相手の関心や懸念を理解し、それに沿った依頼をしている
数字で語る力担当した事業の売上や費用は、どんな要素で決まっていましたか事業の構造を要素に分解して説明できる
失敗からの学びうまくいかなかった取り組みと、そこから何を学んだか教えてください他者や環境のせいにせず、自分の判断を振り返っている

答えを評価するときの注意点

  • 流暢さと中身を区別する。 話が上手な人ほど、中身が薄くても良い印象を与えます。具体的な事実や数字、固有の場面が語られているかに注目します。
  • 「私たち」と「私」を区別する。 チームの成果を自分の成果のように語る人もいます。「その中で、あなた自身は何をしましたか」と確認します。
  • 失敗を語れるかを見る。 事業開発の経験が本物であれば、うまくいかなかった経験を必ず持っています。失敗の経験を具体的に語れない場合は、深く関わっていなかった可能性があります。
  • 評価を面接官の印象で決めない。 事前に決めた観点ごとに、答えの特徴を記録し、面接後に面接官同士で照らし合わせます。

なお、面接では、本人の適性や能力と関係のない事項(家族の状況や出身地など)を尋ねないよう注意が必要です。公正な採用選考の考え方については、最新の情報を公的機関で確認し、面接官の間で共有しておいてください。

実務課題で考え方を確かめる

面接だけでは見えにくい考え方の質を確かめるために、実務に近い課題を使う方法があります。事業開発人材の場合、次のような課題が使われます。

課題の例

  • 事業案の検証計画を立てる課題。 架空の事業案を示し、「最初の二か月で何を確かめるか、どう確かめるか」を考えてもらいます。前提の分解、検証の優先順位、方法の選び方が見えます。
  • 顧客インタビューの設計課題。 架空のテーマについて、インタビューで聞く質問を考えてもらいます。仮定の質問ばかりか、過去の事実を聞く質問を設計できるかが見えます。
  • 事業の数字を読む課題。 簡単な事業の数字を示し、何が課題で、次に何を確かめるべきかを考えてもらいます。

課題を使うときの注意点

課題は、候補者に過度な負担をかけないよう、取り組みに必要な時間を限ります。自社の実際の事業案をそのまま課題にすると、無償で仕事をさせることになりかねないため、架空の題材を使います。また、課題の答えの出来栄えそのものよりも、提出後の対話で「なぜそう考えたのか」「別の前提ならどう変わるか」を聞くことで、考え方の柔軟さと深さを確かめるほうが有益です。

採用の進め方のまとめ

面接と課題を含めた採用の進め方を、手順としてまとめます。

  1. 入社後に担う仕事を具体的に書き出す。 最初の半年と一年後の姿を書きます。
  2. 必要な行動を行動の言葉で定義する。 抽象的な資質ではなく、観察できる行動で書きます。
  3. 必須と歓迎を分ける。 必須の条件は絞り込みます。
  4. 面接の観点と質問を面接官で共有する。 誰がどの観点を確かめるかを分担し、評価の基準をそろえます。
  5. 面接で過去の具体的な場面を掘り下げる。 状況・役割・考え・行動・結果の順で聞きます。
  6. 必要に応じて実務課題を使う。 架空の題材で、取り組み時間を限って実施し、提出後の対話で考え方を確かめます。
  7. 面接官同士で評価を照らし合わせる。 観点ごとの記録をもとに、印象ではなく事実で議論します。
  8. 入社後の立ち上げを設計してから内定を出す。 最初の仕事、協力者、評価の方法を決めておきます。

採用後の立ち上げを設計する

優秀な人を採用しても、入社後の環境が整っていなければ力を発揮できません。特に新規事業は、社内の資源や人間関係を使って進める仕事なので、新しく入った人が社内を知るまでの時間が成否を分けます。

最初の仕事を決めておく

入社初日から、何に取り組むのかを明確にしておきます。最初の仕事は、社内の人と関わりながら進められ、数週間から数か月で手応えが見えるものが適しています。たとえば、既存顧客への聞き取りを営業部門と一緒に進め、新しいテーマの候補を整理する仕事などです。

社内の協力者をつなぐ

新しく入った人は、社内の誰に何を聞けばよいかを知りません。営業、開発、経営企画、法務など、事業開発で関わることになる部署の担当者を紹介し、最初の面談の機会を作ります。

期待と評価を共有する

入社後の最初の数か月で何を期待しているのか、何をもって評価するのかを、入社時に本人と共有します。事業開発の成果は売上としてすぐに表れないため、検証の進み具合や学びの質など、段階に応じた評価の観点を示します。評価の考え方は新規事業部の立ち上げ方でも触れています。

定期的に対話する

最初の三か月は、上司が週に一度程度、本人と話す時間を取ります。困っていること、社内で動きにくいこと、期待とのずれを早めに把握し、手を打ちます。

具体的な場面の例:経歴よりも行動で選んだケース

架空の一般例で考えます。ある会社が、新規事業の推進役として事業開発人材を一人採用しようとしていました。最終候補は二人に絞られました。一人は、大手企業で大規模な新規事業の責任者を務めた経歴を持つ候補者。もう一人は、中小企業で小さな事業をいくつか立ち上げ、そのうちいくつかは途中で止めた経験を持つ候補者でした。

経歴だけを見れば、前者が有力に見えました。しかし、面接で過去の場面を掘り下げると、違いが見えてきました。前者は、事業の全体像や戦略については流暢に語れる一方、顧客の声をどう集め、仮説がどう変わったかという具体的な話になると、「チームが」「担当部署が」という主語が増え、本人の行動が見えにくくなりました。後者は、顧客の具体的な発言を引用しながら、最初の想定がどう覆り、何を基準に事業を止めたのかを詳しく語りました。

さらに、架空の事業案の検証計画を立てる課題を出したところ、後者は「最初に確かめるべきは顧客が対価を払うかどうか」と前提を絞り込み、手作業で試す方法を提案しました。提出後の対話で別の前提を示すと、計画をどう変えるかを柔軟に説明しました。

この会社は、自社の新規事業がまだ探索の段階にあり、小さく検証を回せる人が必要だという判断から、後者を採用しました。入社後は、営業部門と一緒に既存顧客への聞き取りを進める仕事から始めてもらい、数か月で最初のテーマの検証に進んでいます。

この例は、前者の候補者が劣っていたという話ではありません。大規模な事業を運営する段階の会社であれば、前者の経験こそが求められたはずです。見極めで大切なのは、候補者の優劣を決めることではなく、自社の事業の段階と、候補者の経験してきた仕事の性質が合っているかを確かめることです。そのためにも、採用を始める前に、自社が今どの段階にあり、入社する人にどんな仕事を担ってもらうのかを言葉にしておく必要があります。

よくある失敗とその避け方

  • 経歴や肩書きで判断する。 有名企業や大規模事業の経験が、自社の状況での活躍を保証するわけではありません。過去の具体的な行動を確かめます。
  • 求める人物像が抽象的。 面接官によって評価がばらつきます。行動の言葉で定義し、面接官で共有します。
  • 仮定の質問ばかりする。 模範解答を用意できるため、見極めに役立ちません。過去の事実を聞きます。
  • 失敗の経験を聞かない。 事業開発の経験の深さは、失敗の語り方に表れます。うまくいかなかった経験を必ず聞きます。
  • 自社の段階と人材の経験が合っていない。 探索の段階の会社に、大規模な事業の運営経験者を採用すると、ずれが生まれることがあります。自社の段階に合った経験を重視します。
  • 採用後の立ち上げを設計しない。 社内を知らないまま放置されると、力を発揮できずに辞めてしまうことがあります。最初の仕事と協力者を用意します。

採用を始める前のチェックリスト

  • 入社後に担う仕事を、最初の半年と一年後で書き出した
  • 必要な行動を、観察できる行動の言葉で定義した
  • 必須の条件と歓迎の条件を分け、必須を絞り込んだ
  • 面接の観点と質問を面接官で共有した
  • 過去の場面を掘り下げる質問の型を面接官が理解している
  • 実務課題を使う場合、架空の題材で取り組み時間を限った
  • 評価を観点ごとに記録し、面接官同士で照らし合わせる場がある
  • 公正な採用選考の考え方を面接官で共有した
  • 入社後の最初の仕事と、紹介する社内の協力者を決めた
  • 入社後の期待と評価の観点を本人に共有する準備ができている

よくある質問

Q. 新規事業の経験がない人を採用しても大丈夫ですか?

新規事業という肩書きの経験がなくても、不確実な状況で問いを立て、確かめ、判断してきた経験があれば、活躍できる可能性は十分にあります。営業での新規開拓、社内の業務改善の主導、小さな事業の運営など、さまざまな経験の中に、事業開発に通じる行動の跡が見つかることがあります。

Q. 面接官が事業開発の経験を持っていない場合はどうすればよいですか?

面接官に経験がなくても、質問の型と観点を事前に共有しておけば、具体的な行動を確かめることはできます。ただし、答えの深さを判断するのは難しくなるため、社外の経験者に面接への同席や課題の評価を依頼する方法もあります。

Q. 採用ではなく外部の人材に任せるという選択肢はありますか?

すぐに推進役が必要な場合や、採用に時間がかかる場合は、外部の人材にプロジェクトの推進を任せる選択肢もあります。その場合の役割と期待値の決め方は新規事業のPMを外部から入れるときで解説しています。外部の人材と並行して採用を進め、引き継ぐ形も考えられます。

Q. 採用した人が社内で孤立しないようにするにはどうすればよいですか?

入社前から社内の協力者を決め、最初の仕事を社内の人と一緒に進める形にすることが効果的です。上司が定期的に対話し、社内で動きにくい点を早めに取り除きます。社内の担当者を育てる考え方は新規事業担当者に必要なスキルと、実践を通じた社内での育て方も参考にしてください。

Otsumuに相談できること

事業開発人材の採用は、求める人物像を行動の言葉で定義し、面接官の間で観点を共有できれば、自社の人事と事業部門で十分に進められます。この記事で紹介した質問の型や課題の例は、そのまま社内の採用活動に使えるように書いています。

一方で、自社の新規事業がどの段階にあり、どんな経験の人が必要なのかを整理しきれていない、面接で答えの深さを判断できる人が社内にいない、採用が決まるまでの間に推進役が足りない、といった状況では、外部の視点が役に立つことがあります。特に、事業の段階と必要な人材の関係は、新規事業を実際に進めた経験がないと見極めにくいものです。

Otsumuは、自らも事業を手がける実践者として、新規事業開発コンサルティングで、事業の段階の整理や検証計画づくりを支援しています。その過程で、どんな役割の人が必要になるかを具体的にすることもできます。採用が決まるまでの間、検証を止めずに進めたい場合は、顧客検証 Sprint(98万円〜・税別、4週間)のように期間を区切って推進を支援し、入社した人に引き継ぐ形も考えられます。検証のための開発が必要になれば、新規事業の爆速MVPシステム開発で少人数・短期間の開発を担えます。

採用と並行して事業をどう進めるか迷っている段階でも構いません。30分の無料相談で、現在の状況を一緒に整理します。

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

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