企画書は「承認してほしいこと」から逆算して項目を並べる
新規事業の企画書に決まった書式はありません。ただし、読み手である決裁者が知りたいことは共通しています。何を承認すればよいのか、なぜいまなのか、どこまで分かっていて何が分かっていないのか、いくらかかり、いつ次の判断ができるのか、です。
そのため、企画書の構成は次の順番を基本にします。
- 依頼事項(承認してほしいこと)
- 対象の顧客と課題
- 提供する価値と解決策
- 市場と競合・代替手段
- 収益モデルと収支の見立て
- 検証済みの事実と、未検証の前提
- 次の検証計画(期間、費用、体制)
- 判断基準と撤退の条件
- 主なリスクと対応
テンプレートを使う利点は、見栄えが整うことではなく、この項目の抜けを防げることです。空欄が埋まらない項目は、まだ検討や確認ができていない箇所を示しています。
各項目の書き方
依頼事項は冒頭に置きます。「顧客検証の実施について、期間と費用の承認を求める」のように、一文で書きます。事業全体の承認を求めるのか、次の一歩の承認を求めるのかで、以降の書きぶりが変わります。
対象の顧客と課題は、属性の説明ではなく場面で書きます。どんな立場の人が、どの業務のどの場面で、いまどう対処していて、何に困っているのか。顧客候補から直接聞いた事実があれば、件数と併せて記載します。
提供する価値と解決策は、機能の一覧ではなく、顧客の状態がどう変わるかを先に書きます。機能はその手段として添えます。
市場と競合・代替手段では、同種のサービスだけでなく、顧客がいま使っている手作業やExcelなどの代替手段も比較の対象に入れます。市場規模を書く場合は、出典と計算の前提を明記します。考え方は市場規模を実際に届く顧客数へ落とし込むが参考になります。
収益モデルと収支の見立ては、誰が何に対して払うのかを先に決め、前提を置いて積み上げます。初期の数字は外れる前提で、どの前提が変わると結論が変わるかを示します。課金方式の選び方は誰が何に払うかを決めてから課金方式を選ぶで扱っています。
検証済みの事実と未検証の前提は、企画書の信頼性を左右する項目です。分かっていないことを隠すより、明示して次の検証計画につなげるほうが、決裁者は判断しやすくなります。
次の検証計画と判断基準は対で書きます。何を、いつまでに、いくらで確かめ、どんな結果なら次へ進み、どんな結果なら止めるのか。ここまで書かれていれば、承認する側は投資の上限を把握できます。
1枚にまとめる場合の絞り方
1枚の企画書テンプレートは、初期の相談や、経営陣への短い説明に向いています。1枚にする場合は、項目を減らすのではなく、各項目を一、二文に圧縮します。残す順番は次のとおりです。
- 依頼事項
- 誰のどんな課題か
- どう解決するか
- なぜ自社がやるのか
- 分かっていることと、分かっていないこと
- 次に確かめること、期間、費用
- 判断の基準
市場規模の詳細、収支の表、リスクの一覧は別紙に回します。1枚の目的は、読み手に全体像をつかんでもらい、詳細を読むかどうか、次の一歩を認めるかどうかを決めてもらうことです。1枚に収まらない場合、文章が長いのではなく、対象の顧客や依頼事項が絞れていないことが原因である可能性があります。
企画書と事業計画書の違い
事業計画書のテンプレートも同時に探している場合は、二つの役割の違いを押さえておくと、作る順番に迷いません。
呼び方や区分は会社によって異なりますが、この記事では次のように分けます。企画書は、検討や検証を始めること、あるいは次の段階へ進むことの承認を得るための資料です。仮説が中心で、分かっていないことを含みます。事業計画書は、事業として投資し運営するための計画で、収支、体制、スケジュール、資金の手当てをより詳しく記述します。
初期の段階で詳細な事業計画書を作り込んでも、前提が確認されていなければ、数字は根拠のないまま精密になるだけです。先に企画書で検証の承認を得て、検証の結果をもとに事業計画書を組み立てる順番が合理的です。事業計画書の組み立ては次の投資判断に必要な順番で事業計画書を組み立てるをご覧ください。
企画書に起きやすい不備
提出前に、次の点を確認してください。
- 依頼事項が書かれていない:説明だけで終わり、読み手が何を決めればよいか分からない。
- 顧客が属性だけで書かれている:業種や規模の記載にとどまり、場面と現在の対処方法がない。
- 事実と仮説が混ざっている:確認した内容と推測が同じ調子で書かれている。
- 出典のない数字がある:市場規模や成長率に出典や計算の前提がない。質問された時点で、資料全体の信頼が下がります。
- 競合が「なし」になっている:同種のサービスがなくても、顧客は何らかの方法で対処しています。代替手段を書きます。
- 機能の説明が中心になっている:何を作るかは詳しいが、なぜ顧客が選ぶのかがない。
- 判断基準と撤退の条件がない:承認する側が、投資の上限と見直しの時期を把握できない。
稟議に出す場合の論点の絞り方は、新規事業の稟議を経営陣が判断できる論点へ絞るも併せて確認してください。
よくある質問
Q. 企画書はスライドとExcelのどちらで作るべきですか。
社内の慣習に合わせてかまいません。考えを整理する段階では、項目が固定された表形式のほうが抜けに気づきやすく、説明の場ではスライドのほうが伝えやすい場合があります。表で整理してからスライドに移すと、内容がぶれません。
Q. 数字の根拠が弱い場合、収支の見立ては省いてよいですか。
省くよりも、前提を明示して載せるほうが有用です。前提が仮であること、どの前提を次の検証で確かめるのかを書けば、根拠の弱さは欠点ではなく検証計画の一部になります。
Q. 社内に指定の書式がある場合、テンプレートは使えませんか。
提出は指定の書式で行い、テンプレートは下書きと項目の点検に使う方法があります。指定の書式にない項目、たとえば未検証の前提や判断基準は、補足資料として添えると、審議での質問に答えやすくなります。
Otsumuに相談できること
Otsumuは、無料の新規事業企画書テンプレート(Excel)を公開しています。稟議に進む場合の経営会議・稟議テンプレートなど、ほかのテンプレートはテンプレート一覧から確認できます。テンプレートで項目が埋まり、社内の承認を得られるなら、それ以上の支援は必要ありません。
項目が埋まらない、あるいは第三者の整理が必要な場合は、新規事業レビュー Sprintが対応します。48万円(税別・参考価格)、1〜2週間で、市場・競合の論点整理、顧客と課題の仮説シート、収益モデルの整理、優先する検証項目と判断基準、PoCの計画案、経営会議・社内稟議用の説明資料をまとめます。大規模な市場調査、顧客インタビューの実施、システム開発は別途見積もりで、正式な見積もりは相談後にお出しします。まずは30分の無料診断で、企画書のどこで詰まっているかをお聞かせください。
この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。記載の価格はOtsumuの税別・参考価格で、正式なお見積もりはご相談後にご案内します。法務・税務・会計・補助金などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.21