この事例の要点
- Bandwidthは、音声、メッセージ、緊急通報、AIをAPIでアプリに組み込める通信サービスを、自社が所有・運用する網「Bandwidth Communications Cloud」の上で提供しています。売上の大半は、網を通った通信量に応じた使用量課金です(Form 10-K、2025年12月期)。
- Microsoft、Google、Zoom、Cisco、RingCentral、Genesys、Five9などのUCaaS・CCaaS事業者が、音声・メッセージ・緊急通報で同社に依存していると同社は説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上高は753.8百万ドル(前年748.5百万ドル)、純継続率は98%でした。前年の122%は、米国大統領選に伴う政治関連メッセージの増加が押し上げたと同社は説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Bandwidth Inc.は米国ノースカロライナ州ローリーに本社を置き、Class A普通株式がNASDAQに上場しています(Form 10-K、2025年12月期)。スタートアップのアプリ開発者から大企業まで、顧客がエンドユーザーと音声やメッセージでやり取りできるよう、APIを提供しています。自社網は65を超える国に広がり、世界のGDPの90%超に届くと同社は説明しています。
市場への提供は三つの形です。「Global Voice Plans」はUCaaS・CCaaS事業者向け、「Enterprise Voice」はGlobal 2000規模の企業が直接契約する音声、「Programmable Messaging」は大量のテキストメッセージを送る顧客向けです(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は、売上の大半を、通信プラットフォームを使う顧客から得る使用量課金と説明しています。使用量課金は、通信が網を通った期間に収益認識されます。電話番号や緊急通報サービスの提供・管理などは、サービス料として別に認識されます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 入り口:API(音声・メッセージ・緊急通報)を、開発者や企業が自社アプリに組み込みます。
- 課金:通信量に応じた使用量課金が中心で、サービス料が加わります。
- 継続:UCaaS・CCaaSの大手が、自社サービスの裏側で同社の網を使います。顧客が別のプラットフォームに移っても、同社の網のまま移れる「BYOC(自社の通信回線を持ち込む)」の仕組みを用意しています。
数字で確かめる
- 売上高は2023年の601.1百万ドル、2024年の748.5百万ドル、2025年の753.8百万ドルでした。2024年に大きく伸び、2025年は横ばいに近い水準で、成長が止まった年であることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 売上総利益は、2023年の236.2百万ドルから、2024年の280.0百万ドル、2025年の295.1百万ドルへ増えました。売上より粗利が伸び、1ドルあたりの利益が改善していることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 営業損失は2023年の35.5百万ドル、2024年の20.1百万ドル、2025年の14.4百万ドルと縮みました。純損失は2025年が12.9百万ドル(2024年は6.5百万ドル、2023年は16.3百万ドル)で、損失の縮小は続くものの黒字には届いていないことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 純継続率は2023年が101%、2024年が122%、2025年が98%でした。同社は、2023年と2025年の低下を、選挙後の政治関連メッセージの減少が主因と説明しています。特定のイベントで使用量が大きく動く構造であることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 北米以外の売上は総売上の約13%(2025年)、12%(2024年)、14%(2023年)でした。売上の中心は北米であることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。通信APIは、ソフトウェアだけで作れるように見えますが、同社は網そのものを自社で所有・運用している点を前面に出しています。通話をできる限り自社網の中にとどめるとしており、品質・費用・緊急通報の対応を自分で管理できることが、競合する事業者との違いになると考えられます。
一方、使用量課金は、顧客の利用が増えれば伸びる反面、イベントや景気で上下しやすい収益です。純継続率が122%から98%に動いた事実は、その振れ幅を示しています。また、大手UCaaS・CCaaS事業者が裏側で同社を使う構造は、顧客集中のリスクも持ちます。同社は、売上の相当部分が少数の大口顧客に集中していることをリスクとして記載しています。
つまりこの事例は、「他社のサービスの裏側に入ることで量を得る」代わりに、「網への投資」と「顧客集中・変動」を引き受ける設計です。黒字化にはまだ届いていないため、網の固定費に対して使用量がどこまで積み上がるかが焦点と考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上の変動は、特定の季節・イベント・大口顧客に偏っていませんか。偏りの大きさを数字で把握していますか。
- 他社の製品の「裏側」で使われる部品や機能として、自社が提供できるものはありますか。
- 自社で持つことで品質や原価を管理できる要素は何で、外に任せてよい要素は何ですか。
小さく試すなら
- 過去24か月の売上を月別に並べ、突出して増減した月とその理由(顧客・案件・季節)を書き出します。
- 上位5顧客への売上比率を計算し、1社が抜けた場合の影響を試算します。
- 他社のサービスに組み込める形で提供できる自社の機能を1つ選び、提供条件(単価・仕様・サポート)を1枚にまとめます。
- 2〜4週間で関心がありそうな2〜3社に見せ、使いたい単位(件数・時間・利用者数)を聞き取ります。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Bandwidth Inc. / Bandwidth Communications Cloud。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25