この事例の要点
- Clean Harborsは、有害・非有害廃棄物の収集と処理を担う「Environmental Services」と、使用済み油の収集・再精製・潤滑油の製造を担う「Safety-Kleen Sustainability Solutions(SKSS)」の2つのセグメントで事業を行っています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上高は6,030.8百万ドル、調整後EBITDAは1,169.9百万ドル(売上高比19.4%)でした(Form 10-K、2025年12月期)。
- 使用済み油は2025年に243百万ガロンを回収し、再精製して基油や潤滑油にして市場に戻しています。処理の入り口と、資源化の出口を両方持つ設計です(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Clean Harbors, Inc.は、米国マサチューセッツ州ノーウェルに本社を置くNYSE上場の環境・産業サービス会社です。1980年にマサチューセッツ州で設立されました。10-Kによると、Environmental Servicesは、有害・非有害廃棄物の収集・輸送・処理・リサイクル・処分を、焼却炉、埋立地、処理・貯蔵・処分施設(TSDF)、排水処理施設、溶剤リサイクル施設など100以上の廃棄物処理施設の網で行います。緊急対応、産業メンテナンス、PFAS(有機フッ素化合物)に関する検査・水のろ過・修復・処分を含むサービスも提供しています(Form 10-K、2025年12月期)。
SKSSは、使用済み油、フィルター、自動車関連の液体を回収し、再精製施設で基油や減圧軽油(VGO)に変え、潤滑油を調合・包装して顧客に戻す事業です。同社は、パーツ洗浄サービスなど小規模な排出事業者向けの容器入り廃棄物の回収も行っています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益は、廃棄物を引き取って安全に処理する「サービス収益」と、再精製した油などを売る「製品収益」の2本立てです。2025年12月期の売上のうち、サービス収益は5,154.7百万ドル、製品収益は876.2百万ドルでした。
- 入り口:自動車整備などの現場で、使用済み油や容器入り廃棄物を定期的に回収する契約。産業現場の緊急対応やメンテナンスも入り口になります。
- 課金:有害廃棄物の処理料。廃棄物の性質や処理方法によって料金が決まる形です。
- 継続・出口:回収した使用済み油を再精製し、基油・潤滑油・副産物として販売。廃棄物の回収が原料調達にもなります。
数字で確かめる
- 売上高:6,030.8百万ドル(前年5,890.0百万ドル)、増加率は2.4%。うちEnvironmental Servicesが5,193.3百万ドル(3.8%増)、SKSSが837.4百万ドル(5.4%減)です。2つのセグメントで売上の動きが分かれていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 調整後EBITDAの売上比:Environmental Servicesが25.9%、SKSSが16.4%。処理網のほうが再精製より収益率が高いことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 調整後EBITDA(全社):1,169.9百万ドル(前年1,116.9百万ドル)。2023年の1,012.6百万ドルから伸びていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 使用済み油の回収:2025年に243百万ガロン。回収した量が再精製の原料になることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- キャッシュフロー:営業活動によるキャッシュフローは866.7百万ドル(前年777.8百万ドル)、調整後フリーキャッシュフローは509.3百万ドル。設備を持つ事業が現金を生んでいることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例の特徴は、「引き取る事業」と「再利用する事業」が同じ回収網の上に載っている点です。使用済み油を回収する網は、原料の調達網でもあり、基油や潤滑油という製品の出口を持つことで、回収が単なるコストで終わらない形になります。10-Kが再精製を「使用済み油の従来の処分ルートに代わる持続可能な代替」と説明しているのは、この循環を強みとして位置づけているからだと読めます。
もう一つの特徴は、有害廃棄物の処理網です。焼却炉や埋立地など許認可と設備が必要な処理施設を多数持つことは、参入のハードルになり、処理料の継続的な収益を支える土台になると考えられます。その一方で、再精製側は原油や製品価格の影響を受けやすい事業です。SKSSの売上が前年より減り、利益率が16.4%にとどまっているのは、サービス中心の処理網とは性質の異なる収益であることを示していると読めます。
つまり、安定したサービス収益で土台を支え、再精製で資源化の価値を取り込みつつ、価格変動を受ける部分を全体のなかで管理する二本立ての設計だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が顧客から引き取っているもの(古い設備、使用済み品、データなど)を、次の価値に変える出口を持てますか。
- 参入のハードルになる許認可・設備・ノウハウを、どの工程に持っていますか。
- 安定した収益の事業と、価格変動を受ける事業を、どう組み合わせて全体を管理していますか。
小さく試すなら
- 顧客から引き取っている物・情報を一覧にし、それぞれの処分費と再利用の可能性を書き出します。
- 再利用の可能性が高い1品目を選び、買い取り先または利用先の候補を2〜3社に当たります。
- 小さなロットで試験的に引き取り、再利用先に渡して、品質条件と価格を確認します。
- 2〜4週間後に、処分費の削減額、再利用による売上、手間を比べ、定期化するかを判断します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Clean Harbors, Inc. / 有害廃棄物処理と使用済み油の再精製。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25