分類:企業事例 › 医療・医薬・ヘルスケア
この事例の要点
- CVS Healthは、医療保険(Aetna)、薬剤給付管理(PBM、CVS Caremark)、小売薬局とクリニックを1つのグループで持つ米国の上場企業です。保険加入者は推定3,700万人超、PBMのプラン加盟者は約8,700万人と説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年12月期の総売上は402,067百万ドル(前期比7.8%増)でした。セグメント売上の合計から、セグメント間の取引71,563百万ドルが差し引かれる構造です(Form 10-K、2025年12月期)。
- GAAPの営業利益は4,660百万ドルで、前期の8,516百万ドルから減りました。Health Servicesで5,725百万ドルののれん減損を計上したことが背景にあり、統合の難しさも読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
CVS Health Corporationは米国の上場企業で、同社は自らを「health solutions company」と説明しています。2025年12月31日時点で約9,000の小売店舗、1,000を超える診療所、約8,700万人のプラン加盟者を持つPBM、推定3,700万人超に医療保険や関連サービスを提供する保険事業を持ちます(Form 10-K、2025年12月期)。
報告セグメントは、Health Care Benefits、Health Services、Pharmacy & Consumer Wellness、Corporate/Otherの4つです。Health Care BenefitsはAetnaの事業で、法人向け、個人向け、メディケア・メディケイドなどの医療保険を扱います。Health ServicesはCVS CaremarkによるPBMと、診療所・在宅の医療サービス、Pharmacy & Consumer WellnessはCVS Pharmacyの店舗での調剤と物販を担います(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社の収益は、保険料、薬の販売、サービス手数料の3種類の売上で構成され、グループ内の取引でつながっています。
- 入り口:雇用主、保険会社、公的制度などが、保険やPBMの契約者です。加入者は小売薬局、郵送薬局、専門薬局で薬を受け取ります。
- 課金:保険は保険料収入(Premiums)、薬局は調剤による商品売上(Products)、PBMはプラン設計や処方集管理などのサービス手数料と薬剤の販売から収益を得ます。PBMはメーカーとの価格交渉や共同購入も担います。
- 継続:Health Servicesの専門・郵送薬局の調剤を、Pharmacy & Consumer Wellnessが支える関係があり、その対価としてHealth Servicesが管理サービス料を支払います。グループ内の取引が、各事業をつなぎ止める構造になっています。
数字で確かめる
- 総売上は402,067百万ドルで、内訳は商品売上249,908百万ドル、保険料134,751百万ドル、サービス15,175百万ドルです。物販・調剤と保険という性質の異なる収益が、並んで大きな割合を占めることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- セグメント売上は、Health Care Benefitsが143,354百万ドル、Health Servicesが190,425百万ドル、Pharmacy & Consumer Wellnessが139,367百万ドルです。合計から71,563百万ドルが消去されて総売上になることから、セグメント間の取引が大きいことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- GAAPの営業利益は、Health Care Benefitsが1,793百万ドル、Health Servicesが220百万ドル、Pharmacy & Consumer Wellnessが4,860百万ドルでした。売上規模の大きいHealth Servicesの利益が、のれん減損などで小さくなっていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- Health Servicesで計上したのれん減損は5,725百万ドルです。買収で統合した事業が、想定した収益を上げられなかった場合の影響の大きさが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 連結の営業費用のうち、医療費(Health care costs)は125,538百万ドルで前期比9.0%増でした。保険料収入が増えても、医療費の増加が利益を左右することが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は「垂直統合」の型に、「保険引受」の型を重ねて読めます。保険、薬剤の給付管理、薬局という川上から川下までを1社で持つことで、加入者の医療費と薬の流れを1つのグループの中で管理できる設計です。同社が掲げる「統合モデル」は、グループ内で顧客の接点とデータをつなぎ、医療費を抑えながら顧客を囲い込むことを狙ったものだと読めます。
この設計の強みは、1つの顧客が複数の接点でグループの収益に貢献する点です。一方で、事業ごとの利害が一致しないことがある点は弱みになり得ます。保険は医療費を下げたい、薬局は処方量を増やしたい、PBMはメーカーと価格を交渉する、という利害の違いを、同じ会社の中で調整する必要があります。10-Kでも、Health Servicesののれん減損や診療所の閉鎖費用などが計上されており、統合による利点が自動的に収益になるとは限らないことが読み取れます。
この型で学べるのは、統合の範囲を広げるほど、内部取引の管理と、各事業の収益性を個別に確認する仕組みが重要になる点だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の事業間で取引している内部取引を、外部取引と同じ基準で採算確認できていますか。
- 川上や川下の事業を持つことで、顧客の接点やデータをどこまでつなげられますか。つなげて何が変わりますか。
- 統合した事業のうち、想定した収益が出ていないものを早く見つける数字(利益率、顧客数など)を持っていますか。
小さく試すなら
- 自社の事業を川上から川下まで一列に並べ、各工程の売上、粗利、社内取引の金額を一覧にします。
- 社内取引の価格や条件を、外部の第三者に出した場合の条件と比べ、差がある工程を3つ以内に絞ります。
- 差がある工程について、担当者に利害の調整で起きている手戻りや待ち時間を聞き取り、数字で記録します。
- 2〜4週間で、1つの工程だけ社内取引の条件を見直し、顧客の利用や採算に変化が出るかを確認します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:CVS Health Corporation(米国、NYSE上場)/ 保険・PBM・薬局の統合モデル。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25