この事例の要点
- 大東建託株式会社は、建設事業、不動産賃貸事業、不動産開発事業、その他の事業(ガス供給・介護・金融など)で報告しています。売上高の中心は不動産賃貸事業の1兆2,030億91百万円です(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 賃貸住宅の「建設」と、建てた後の「一括借上による賃貸経営の受託」を同じグループで続け、入居者斡旋件数345,229件、居住用の家賃ベース入居率98.0%(2026年3月)という運営の数字を開示しています(2026年3月期 決算短信)。
- 2026年3月期の売上高は1兆9,847億43百万円(前年同期比7.7%増)、営業利益は1,352億56百万円(同13.8%増)です。不動産開発事業の売上高は前年同期比186.5%増となり、収益の柱が広がっています(2026年3月期 決算短信)。
どんな事業か
大東建託株式会社は東京証券取引所と名古屋証券取引所に上場する企業で、2026年3月期の連結売上高は1兆9,847億43百万円です。決算短信では、2030年を見据えた長期ビジョン「DAITO Group VISION 2030」と、2024年度から2026年度の中期経営計画を掲げ、建設事業での受注確保と収益性の向上、不動産賃貸事業でのストック収益の拡大と入居率の維持向上、不動産開発事業の強化・拡大に取り組んだと説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
事業環境として、短信は新設住宅着工戸数が2025年4月から2026年2月の累計で647,676戸(前年同期比10.9%減)、同社グループの主要市場である賃貸住宅着工戸数も281,228戸(同10.5%減)と低調だったと記しています。市場全体が縮むなかでも増収増益となった点が、この事例の読みどころです(2026年3月期 決算短信)。
収益の仕組み
短信の記載から読み取れる収益の入り口と継続の構造は、次のとおりです。
- 入り口(建設事業):工事の完成による完成工事高が5,442億83百万円(前年同期比0.6%増)です。完成工事総利益率は25.4%で、期末の受注工事残高は7,836億34百万円(同2.3%減)でした。
- 継続(不動産賃貸事業):「賃貸経営受託システム」による一括借上物件の増加と高水準の入居率を背景に、不動産賃貸事業売上高は1兆2,030億91百万円(同3.3%増)、営業利益は855億54百万円(同6.5%増)でした。
- 拡張(不動産開発事業):株式会社アスコットの連結子会社化に加え、収益不動産(開発販売)の販売棟数が増え、売上高は1,470億83百万円、営業利益は185億35百万円でした。
- 周辺(その他の事業):ガス供給事業の稼働メーター数の増加や介護事業のデイサービス利用者数の増加で増収となった一方、金融事業では調達金利の上昇が利益を圧迫したと説明されています。
以上は2026年3月期 決算短信の記載です。
数字で確かめる
- 連結売上高1兆9,847億43百万円(前年同期比7.7%増)、営業利益1,352億56百万円(同13.8%増)(2026年3月期 決算短信)。住宅着工が減るなかで増収増益を確保していることが読み取れます。
- 不動産賃貸事業売上高1兆2,030億91百万円(同3.3%増)、営業利益855億54百万円(同6.5%増)(2026年3月期 決算短信)。連結売上高1兆9,847億43百万円に対して大きな規模のストック型の売上があることが読み取れます。
- 入居者斡旋件数345,229件(同0.1%増)、家賃ベース入居率は居住用98.0%、事業用99.4%(2026年3月)(2026年3月期 決算短信)。入居率の高さが一括借上の家賃収入を支えていることが読み取れます。
- 建設事業の完成工事総利益率25.4%(同0.1ポイント上昇)に対し、営業利益は451億48百万円(同4.2%減)(2026年3月期 決算短信)。粗利率が保たれても人件費等の高騰が営業利益を押し下げうることが読み取れます。
- 自己資本比率36.5%、総資産1兆3,675億2百万円(2026年3月期 決算短信)。販売用不動産や仕掛販売用不動産を持つ事業では、資産と借入が大きくなることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、売り切りの「建てる」仕事を、建てた後に毎月続く「借り上げて運営する」仕事につなげた設計として読めます。建設は受注残と完成で動く波のある収益、賃貸の運営は入居率と家賃で動く積み上がる収益で、性格が違います。短信が建設事業の営業利益減少と不動産賃貸事業の増益を並べて開示しているのは、この二つが互いの揺れを補う関係にあることを示していると読めます。
この型の中心にある指標は入居率です。短信が家賃ベース入居率の算式(1-空室物件の借上家賃支払額/家賃総額)まで示しているのは、空室が増えると借り上げた側の支払いだけが残る構造だからだと考えられます。そのため、入居者斡旋件数や、退去後から次の入居までの期間といった運営の質が、事業の健全性を左右すると読めます。建てた物件の数を増やすだけでは足りず、建てた後の運営を続ける力が競争の中身になっている、というのがここでの仮説です。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上のうち、一度きりの売上と、翌月以降も続く売上はどれくらいの割合でしょうか。
- 売った後の「運営・管理」を引き受けることで、顧客との関係と収益を伸ばせる部分はありますか。
- 継続収益の健全性を示す指標(入居率に当たる数字)を、自社では何と定義し、毎月見ていますか。
小さく試すなら
- 過去1年の取引を「一度きり」と「継続」に分け、継続につながった案件の共通点を書き出します。
- 継続の健全性を表す指標を1つ決め、算式を文章で定義して、2〜4週間、毎週同じ手順で記録します。
- 既存顧客の中から数社を選び、納品後の運営・管理を有料で引き受ける案を聞いて、反応と条件を記録します。
- 反応がよければ1社で小さく始め、指標が下がる前兆(連絡の頻度など)を見つけて対応手順を作ります。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:大東建託株式会社 / 建設事業と不動産賃貸事業。参照資料:2026年3月期 決算短信(2026年5月26日付の一部訂正を反映した版)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25