← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Grove Collaborative「自社ブランドと他社ブランドのD2Cプラットフォーム」に学ぶ事業設計

自社ブランドGrove Brandsと他社ブランドを同じD2Cサイトで売るGrove Collaborativeの構造と、小売撤退・広告削減の判断を、2025年12月期のForm 10-Kから確かめます。

分類:企業事例 › 小売・EC

この事例の要点

  • Grove Collaborative Holdings, Inc.は、自社ブランド(Grove Brands)と他社の自然派ブランドを、自社のD2Cサイトとアプリで販売する米国の企業です(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年12月期の収益は173,716千ドルで、Grove Brandsが71,940千ドル、他社製品が101,776千ドルでした。前期比ではどちらも減少しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 同社は2025年に店舗小売からの撤退を完了し、広告費を抑えて調整後EBITDAの黒字化を優先する方針をとりました。成長より収益性に舵を切る判断の記録として読めます(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Grove Collaborative Holdings, Inc.は、米国デラウェア州法人で、本社はカリフォルニア州サンフランシスコです。ニューヨーク証券取引所に上場しています。2012年に「ePantry」という名前で、第三者の自然派・パーソナルケア商品を売るオンライン小売として創業しました(Form 10-K、FY2025)。

同社はPublic Benefit CorporationかつCertified B Corporationで、人の健康と環境に配慮した消費財を扱います。自社のD2Cサイトとアプリで、自社ブランドと他社のミッション重視ブランドを並べて販売しています。2025年12月期の純収益のうち、約41%がGrove Brandsで、その73%をホームケア製品が占めました(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

収益の柱は、D2Cプラットフォーム上の注文です。同社は新規顧客を呼び込むために初回の割引や無料の商品を提供することがあり、新規獲得が急速に進む時期は粗利率が下がると説明しています。顧客の接点を自社で持ち、そこで自社ブランドの比率を高めていく構造です(Form 10-K、FY2025)。

  • 入り口:広告や紹介で獲得した新規顧客への、割引や無料商品付きの初回注文。
  • 課金:自社ブランドと他社ブランドの商品を購入する際の売上。
  • 継続:日用品の繰り返し注文。主要指標はDTCの注文数、アクティブ顧客数、1注文あたりの純収益。

以前は2021年4月にTargetで店頭展開を始めましたが、2024年第4四半期にGrove Co.製品の店舗小売から撤退する判断をし、2025年に完了しました。利益率を高める一方で、売上への影響は小さいと見込むと説明しています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 収益:173,716千ドル(前期203,425千ドル、15%減)。広告費の削減、ECプラットフォームの移行、調整後EBITDAの黒字化を優先した方針が減収の主因とされています(Form 10-K、FY2025)。
  • 粗利益:93,273千ドル、粗利率は前期と同じ54%。収益が減っても粗利率を保ったことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • DTCアクティブ顧客:599千人(前期688千人)、DTC総注文数:2,420千件(前期2,930千件)、1注文あたりの純収益:67ドル(前期も67ドル)。広告を絞った結果、顧客数と注文数は減ったが単価は保たれたことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • 純損失:11,716千ドル(前期27,423千ドル)、調整後EBITDA:マイナス2,159千ドル(前期は1,301千ドルの黒字)。損失幅は縮小したが、黒字化は途上にあることが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • 累積赤字:660.2百万ドル(2025年12月31日時点)。成長のために先行して投じた投資額の大きさがうかがえます(Form 10-K、FY2025)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、D2Cで集めた顧客に、他社ブランドと自社ブランドの両方を売る「プラットフォーム兼ブランド」の型として読めます。他社ブランドは品ぞろえと来店頻度を作り、自社ブランドは粗利を取る役割で、自社比率を上げることが利益構造の改善につながると考えられます。

ただし、この型の弱点は顧客獲得に広告費が必要なことです。同社の開示では、広告を減らすと新規顧客が減り、注文数が下がったと説明されています。顧客が増えるほど割引コストがかさみ、減らすと売上が落ちる、というトレードオフが見えます。店舗小売からの撤退も、販路を広げるより、自社が顧客と直接つながる場に集中する選択だったと読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上のうち、自社で作る商品と他社の商品の比率はどのくらいで、どちらが利益を生んでいますか。
  • 新規顧客を獲得する費用を、何回目の購入までに回収できていますか。
  • 販路を広げることと、顧客との接点を一本化することのどちらが自社の利益に効きますか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の顧客を「初回のみ」「2回以上」に分け、初回の獲得費用と、その後の購入額を並べます。
  2. 自社商品と他社商品の粗利を比較し、粗利の高い側を一覧にします。
  3. 2〜4週間、リピート客向けの案内(セット提案、補充の知らせ)を1つ試し、2回目の購入率を記録します。
  4. 獲得費用の上限を仮に決め、その範囲で獲得できた顧客数と継続率を確認します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Grove Collaborative Holdings, Inc. / Grove Brandsと他社ブランドのD2Cプラットフォーム。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗