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HENNGE「HENNGE One」に学ぶサブスクリプションと低解約率の事業設計

HENNGEは、「HENNGE One」を年間契約のサブスクリプションで企業に提供し、売上高の99.2%が継続性のある売上で構成されています。2025年9月期の決算短信から、ARRと解約率で事業を管理する設計を読みます。

この事例の要点

  • HENNGE株式会社の2025年9月期の売上高は10,924百万円(前期比30.6%増)、営業利益は1,793百万円(同76.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,358百万円(同64.2%増)でした(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 売上高のうち「解約がされない限り翌期も継続的に売上高となる性質の売上」は10,837百万円で、売上高全体の99.2%を占めます(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • HENNGE One事業の期末ARRは11,135百万円(前期8,753百万円)、契約企業数は3,427社、契約ユーザ数は2,799,960人、直近12ヶ月の平均月次解約率は0.33%でした(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

同社グループの事業は単一セグメントで、売上区分として「HENNGE One事業」と「プロフェッショナル・サービス及びその他事業」に分けて開示しています。2025年9月期のHENNGE One事業の売上高は10,259百万円(前年同期比+32.6%)、プロフェッショナル・サービス及びその他事業は665百万円(同+5.9%)で、HENNGE Oneが売上の大部分を占めます。HENNGE Oneは「原則年間契約」のサービスで、契約企業に所属する契約ユーザから月額利用料金を得る形で提供されています。同社は経営指標として、期末月のMRR(契約ユーザから獲得した月額利用料金の合計)を12倍したARR、契約企業数、契約ユーザ数、月次解約率を開示しています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。

今後の方針として、2026年9月期はイベント開催を軸に新規顧客獲得を強化し、2029年9月期でのグループARR200億円達成に向けてHENNGE Oneの付加価値を高め、国内外の成長余地のある地域で基盤づくりに取り組むと説明しています。人員計画では全社で45名以上の純増を目指すとしています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

収益の中心は、HENNGE Oneの契約企業から得る継続的な利用料金です。売上高10,924百万円のうち10,837百万円(99.2%)が継続性のある売上で、前年同期比+31.3%でした。翌連結会計年度の収益見込みのベースとなる期末ARRは11,135百万円で、当期の売上高を上回る水準にあります(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。

個別業績の差異理由として、売上面では「HENNGE Oneの大型案件を含む新規受注の獲得、低解約率の維持」を、利益面では「人材獲得力の強化に向けた積極的な投資や将来のARR獲得を目的としたナーチャリング・イベントなどの営業活動への費用投下」を行ったものの売上高の増加等で前年を上回ったと説明しています。売上総利益率は86.5%(前期84.1%)でした。それ以外の費用の内訳は、今回参照した公開資料には示されていません。契約負債は前期末比978百万円増えています(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上高10,924百万円(前期比30.6%増)、営業利益1,793百万円(同76.7%増)、売上高営業利益率16.4%(前期12.1%)(2025年9月期)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。売上の伸びが費用の伸びを上回り、利益率が上がっていることが読み取れます。
  • 継続性のある売上10,837百万円、構成率99.2%(前期98.6%)(2025年9月期)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。売上のほぼ全てが翌期に持ち越される性質であることが読み取れます。
  • 契約企業数3,427社(前期2,951社)、契約ユーザ数2,799,960人(前期2,494,882人)(2025年9月期)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。企業数とユーザ数の両方が増え、ユーザ数に応じた収益の積み上げが働いていることが読み取れます。
  • 直近12ヶ月の平均月次解約率0.33%(前期0.54%)(2025年9月期)(2025年9月期決算短信〔日本基準〕(連結))。解約が少なく、獲得した契約が積み上がりやすいことが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。「サブスクリプション」の型で見ると、この事業は、年間契約で前受けした対価を期間に応じて売上にし、期末ARRを翌期の収益見込みのベースとして経営する構造で成り立っていると読めます。売上高の99.2%が継続性のある売上であることは、新規受注が上乗せとして働き、既存契約が土台として残る積み上げ型を示しています。裏側では、解約率0.33%という水準を保つサポートや運用の品質と、「ナーチャリング・イベント」のように契約前の見込み顧客に時間をかける営業活動が必要な仕事だと考えられます。同社自身が利益面の差異理由に営業活動への費用投下を挙げているように、将来のARRのために当期の利益を一部使う判断が含まれています。

「席数課金(ユーザー数課金)」の型で見ると、MRRが契約ユーザから得る月額利用料金の合計と定義されている点から、契約企業のユーザ数が増えるほど収益が増える設計だと読めます。契約企業数3,427社に対して契約ユーザ数が2,799,960人に達しており、一社あたりの利用者が多い企業向けの構造です。一方で、企業向けのサービスは導入までに時間がかかり、獲得費用が先に出るトレードオフがあると考えられます。2029年9月期のARR200億円という目標に対して期末ARRは11,135百万円であり、付加価値の向上と地域の拡大を並べて挙げているのは、単価とユーザ数の両方を伸ばす必要があるためだと読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上のうち、解約がない限り翌期も続く性質のものはどれくらいあるか。
  • 契約の単位(企業、席数、利用量)は、顧客が価値を感じる単位と一致しているか。
  • 将来の契約獲得のために当期の利益をどこまで使うか、基準を持っているか。

小さく試すなら

  1. 直近12か月の売上を「継続する売上」と「一時的な売上」に分け、継続売上の月次推移と解約による減少額を一枚にまとめる。
  2. 既存顧客のうちユーザ数が増えている顧客と減っている顧客を抽出し、増減の理由をヒアリングで確かめる。
  3. 見込み顧客向けの小規模なイベントや勉強会を1回開き、参加者のうち商談に進んだ割合を記録する。獲得にかかる費用と契約後の継続期間の見通しが立てば、営業活動への投資額を決める。

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資料の位置づけ

企業・サービス:HENNGE株式会社 / クラウドセキュリティサービス「HENNGE One」。参照資料:2025年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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