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Hesai Group「車載LiDAR(ASIC設計)」に学ぶ単価が下がっても伸びる事業設計

中国のHesaiは、自社設計のASICでLiDARの部品点数と製造時間を減らし、乗用車の運転支援向けに出荷を広げました。1台あたり単価が下がるなかで増収・黒字化した構造を、20-Fから確かめます。

分類:企業事例 › 半導体・電子機器

この事例の要点

  • Hesai Groupは、LiDAR(レーザーで周囲の立体形状を測るセンサー)を、運転支援(ADAS)向けとロボット向けに開発・製造しています。専用チップ(ASIC)の自社設計と、開発・試験・製造の一体運営を強みとして説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年に売上計上したLiDARは約1,620,400台で、2024年の約501,900台から増えました。1台あたりの平均販売単価は約530米ドルから約260米ドルへ下がっています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • それでも2025年の純収益は3,027.6百万人民元(前年比45.8%増)、純利益は435.9百万人民元で、2024年の純損失102.4百万人民元から黒字に転じました(Form 20-F、2025年12月期)。

どんな事業か

Hesai Groupは、中国本土の上海を中心に事業を行う企業で、米国の市場に上場しています。米国証券取引委員会(SEC)にForm 20-Fを提出する外国企業です。同社は、上海・パロアルト・シュトゥットガルトに拠点を置き、中国とタイに自社工場を持ち、40を超える国・地域に顧客がいると説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。

製品は、乗用車の運転支援向けのAT・ET・FT系列と、ロボタクシーやロボット向けの機械式・小型の系列に分かれます。2014年に天然ガス関連のレーザーセンサーで事業を始め、その後、LiDARを主力事業に切り替えたと記載しています。2017年に自動運転車両を運行する事業者向けに参入し、その後ADASとロボティクスへ広げました(Form 20-F、2025年12月期)。

収益の仕組み

収益の中心は、LiDAR製品の販売です。売る相手は自動車メーカーとその供給網、ロボットや自動運転の事業者で、車種やロボット製品ごとに採用が決まる設計になっています。

  • 入り口:車種ごとの開発段階で採用(デザインウィン)を獲得します。採用までに長い試験・認証があると同社は述べています。
  • 課金:採用後は、その車種やロボット製品に搭載するLiDARの台数に応じて供給します。供給契約は短期で、年1回ほど再交渉されることがあり、顧客がいつでも解除できる場合があると記載しています。
  • 継続:量産が続くあいだ出荷が積み上がります。他方、採用されなかった車種には長期間入れず、車種の販売が不振なら出荷も減ります。

補助的な収益として、設計・開発・検証のエンジニアリングサービスなどがありますが、2025年は小さくなっています。

数字で確かめる

  • 2025年の純収益は3,027.6百万人民元(約432.9百万米ドル)で、2024年の2,077.2百万人民元から45.8%増えました。うちLiDAR製品は2,973.3百万人民元でした(Form 20-F、2025年12月期)。売上のほとんどが、センサーの販売から来ていることが読み取れます。
  • 売上計上したLiDARは2024年の約501,900台から2025年の約1,620,400台に増え、平均販売単価は約530米ドルから約260米ドルに下がりました。同社は、相対的に価格の低いADAS向けの出荷の割合が増えたことが理由と説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。台数を増やす代わりに単価を下げる動きであることが読み取れます。
  • 粗利益率は2024年の42.6%から2025年の41.8%へ小さく下がっただけでした。同社は、利益率の高い一時的なエンジニアリングサービスの売上が減ったことが主因と述べています(Form 20-F、2025年12月期)。単価が半分近くになっても粗利益率を保てていることが読み取れます。
  • ASICの採用により、機械式LiDAR「OT128」は従来品「Pandar128」と比べて部品点数が66%減り、主要な生産時間が約95%短くなったと同社は説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。単価の下落を、設計で吸収しようとしていることが読み取れます。
  • 純損益は2023年に476.0百万人民元の純損失、2024年に102.4百万人民元の純損失、2025年に435.9百万人民元の純利益でした(Form 20-F、2025年12月期)。出荷規模の拡大とともに黒字に転じたことが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、単価が下がる市場で、先に製造原価の構造を変えておくという設計だと読めます。車載向けは価格への圧力が強く、台数が増えるほど単価は下がりやすい。そこで部品を専用チップにまとめ、組み立ての手間を減らしておけば、単価が下がっても利益率を保ちやすくなります。同社の資料にある部品点数や生産時間の説明は、その狙いを示していると考えられます。

もう一つは、売り方の構造です。車種ごとの採用が収益の入り口になるため、一度採用されると、その車種が売れるあいだ出荷が続きます。他方、採用を逃すと長く入れない。収益が積み上がる力と、集中のリスクが表裏一体だとOtsumuは見ます。同社が、ロボティクスなど車以外の用途も並べている点は、その集中を和らげる動きと読めます。

留意点は、供給契約が短期で解除される場合があること、価格圧力が続くと同社自身が述べていることです。台数の伸びと単価の下落の釣り合いは、今後も確かめる必要があります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の製品やサービスで、単価が下がる前提のとき、原価の構造を先に変えられる部分はどこか。
  • 収益が、特定の採用や案件の獲得に左右される場合、その獲得が積み上がる仕組みと、外れたときの備えをどう設計しているか。
  • 主力の用途とは別の用途に、同じ中核技術や設計を転用できる余地はあるか。

小さく試すなら

  1. 1週目:主力の商品・サービスについて、原価の内訳を部品・工程・外注に分け、上位3項目を書き出す。
  2. 2週目:その3項目のうち、共通化や自動化で減らせそうな工程を1つ選び、現状の所要時間を測る。
  3. 3週目:選んだ工程で、手順を減らす案を小さな範囲で試し、時間と品質の変化を記録する。
  4. 4週目:結果をもとに、単価を一定程度下げても利益が保てる条件を試算し、次の投資判断の材料にまとめる。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Hesai Group「車載LiDAR」(中国)。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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