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Hims & Hersのオンライン診療と処方薬定期便に学ぶD2Cサブスクの事業設計

Hims & Hersは、オンライン診療から処方薬の調剤・配送までを自社プラットフォームで一貫して提供し、定期配送で顧客に届けるD2C企業です。2025年の売上高$2,347.6 millionと加入者2,511千人から、定期便モデルを読みます。

この事例の要点

  • Hims & Hers Health, Inc.の2025年(12月期)の売上高は$2,347.6 million(2024年は$1,476.5 million)で、増加率は59%でした。営業利益(Income from operations)は$105,613千、純利益は$128,365千です(Form 10-K、FY2025)。
  • 期末の加入者(Subscribers)は2,511千人(前年2,229千人、13%増)、加入者あたり月間売上(Monthly Revenue per Average Subscriber)は$83(前年$65、28%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
  • 処方の大半は自社が保有する薬局で調剤され、診療は州法上の規制により、同社が管理業務を受託する「Affiliated Medical Groups」の医療従事者が行う構造です(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は2017年に事業を開始した「消費者第一の健康・ウェルネスプラットフォーム」であり、定期的な通院を個別化されたデジタルな形式に移すことを目指していると説明しています。対象は性的健康、脱毛、ホルモン、体重管理、皮膚科、メンタルヘルスなどの領域で、2025年には包括的な検査サービスも開始しました。米国、カナダ、英国、EUで事業を行っています(Form 10-K、FY2025)。

顧客は同社のウェブサイトとモバイルアプリで商品・サービスを購入し、オンライン診療で医療従事者とつながり、処方が適切な場合は薬局から配送を受けます。処方薬に加え、一般用医薬品や化粧品なども扱い、店頭でも販売しています。処方の大半は同社が全額出資する薬局で調剤され、施設には503A薬局、英国GPhCの認可薬局、503B調剤外部委託施設、検査施設などが含まれます。米国では医療の法人経営を禁じる州が多数であるため、同社は医師が所有する別法人「Affiliated Medical Groups」と契約し、ITや電子カルテ、請求、非臨床の人員などの管理サービスを提供して固定の管理手数料を受け取ります。臨床上の判断は同グループが単独で管理します(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

売上の多くはサブスクリプションです。顧客は30日ごとの配送に加え、商品によって60日から360日までの配送間隔を選べ、選んだ間隔で繰り返し請求され、その都度指定量の商品が発送されます。顧客は解約や一時停止(snooze)、再開ができます。2025年の米国売上は$2,213.6 million(53%増)、米国外は$133,989千(399%増)です。米国売上のうち、医療従事者が個々の顧客に合わせて設計する「個別化された提供物」が70%超を占め、前年の約半分から比率が上がりました(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、売上原価$614.3 million(2024年は$303.4 million、102%増)の増加は、他の提供物より商品・包装費や配送費が高い体重管理の提供物が主因とされています。マーケティング費は$919.3 millionで、その最大の構成要素である顧客獲得費用は$798.5 million(2024年は$594.5 million)でした(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 売上高$2,347,637千(2024年$1,476,514千、59%増)、営業利益$105,613千(2024年$61,903千)(Form 10-K、FY2025)。売上が大きく伸びる中で、営業利益率は売上高の4%にとどまることが読み取れます。
  • 売上総利益$1,733.4 million、売上総利益率74%(2024年79%)(Form 10-K、FY2025)。体重管理の提供物と海外事業の拡大で粗利率が下がったと説明されており、商品構成が粗利を左右することが読み取れます。
  • 加入者2,511千人(13%増)、加入者あたり月間売上$83(28%増)(Form 10-K、FY2025)。売上の伸びが、人数の増加より一人あたり単価の上昇に多く依っていることが読み取れます。
  • マーケティング費$919.3 million(売上高の39%、2024年は46%)、うち顧客獲得費用$798.5 million(Form 10-K、FY2025)。粗利の多くを新規獲得に投じつつ、売上比では比率が下がっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。「サブスクリプション」の型で見ると、この事業は、継続的な服薬とフォローアップが前提となる領域を選び、診療から配送までを一つの流れにして定期便に載せることで成り立っていると読めます。対象を「処方薬を継続的に使い、継続的なケアを伴う状態」に絞っていると述べており、定期便が顧客の必要と一致する領域を選んでいることが、解約されにくさにつながっていると考えられます。裏側では、配送間隔ごとの請求と発送、解約・一時停止・再開の処理を滞りなく回す運用が必要な仕事です。

「D2C」の型で見ると、自社サイトとアプリで直接販売し、自社薬局で調剤し、配送まで担うことで、価格と顧客体験を自社で決められる構造だと読めます。マーケティング費が売上高の39%を占める点は、D2Cが直接販売の自由を得る代わりに集客を自社で負う型であることを示しています。粗利率が79%から74%へ下がった主因が、配送間隔の短い体重管理の提供物であることも、顧客あたり単価を上げる商品ほど原価と物流の負担が増えるトレードオフを表していると考えられます。診療をAffiliated Medical Groupsに委ねる構造は、規制のある領域では中核に見える部分を自社で持たない設計が必要になることを示していると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品やサービスのうち、顧客が「定期的に必要とする」ものはどれか。その周期は顧客の実際の使い方と合っているか。
  • 直接販売に切り替えたとき、集客の費用を自社で負う覚悟と、その回収の見通しを持っているか。
  • 単価を上げる商品を加えたとき、原価や物流の負担がどう変わるかを事前に見積もっているか。

小さく試すなら

  1. 既存顧客の購買履歴から、繰り返し購入されている商品と、その購入間隔の分布を一枚にまとめる。
  2. 繰り返し購入の多い商品について、顧客が配送間隔を選べる定期便を少数の顧客に案内し、4週間ほどで申込率と一時停止・解約の発生を記録する。
  3. 定期便の顧客獲得にかかった費用と、初回から数か月の売上・粗利を突き合わせ、回収までの期間を試算する。回収の見通しが立てば、対象商品と広告投資を広げる。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Hims & Hers Health, Inc. / オンライン診療と処方薬の定期配送プラットフォーム。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年12月31日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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