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日置電機株式会社「電子測定器・記録装置」に学ぶ市場軸で伸ばす計測の事業設計

電子測定器や記録装置など5つの製品群を、バッテリー・モビリティ・エネルギーなどの市場軸で売る日置電機。売上高405億円、海外比率63.6%の構造と利益が減った理由を、2025年12月期の決算短信から確かめます。

分類:企業事例 › 半導体・電子機器

この事例の要点

  • 日置電機株式会社は、自動試験装置、記録装置、電子測定器、現場測定器、周辺装置他の5つの製品群を、バッテリー、モビリティ、エネルギー、コンポーネントなどの市場に向けて販売しています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 2025年12月期の売上高は405億31百万円(前期比3.2%増)で増収でしたが、営業利益は67億91百万円(同9.8%減)でした。創業90周年記念事業の一過性費用とDX推進の投資で販管費が増えたと説明されています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 海外売上高比率は63.6%で、成長戦略の柱に「マーケット軸でのビジネス開発」を掲げています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

日置電機株式会社は東京証券取引所に上場し、電気を測る測定器を製造・販売しています。決算短信では、「ビジョン2030」の実現に向けて、「HIOKIの不可欠性を付加した商品開発」「マーケット軸でのビジネス開発」「GHGプロトコルにおけるカーボンニュートラル達成」を成長戦略の柱としていると説明しています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

開発面では、横浜、名古屋、大阪に新設したテクニカルセンターで顧客の測定環境を構築し、顧客や協業先と新たな測定課題を見つけながら商品開発を進めるとしています。販売面では、2025年3月にベトナム子会社を設立してアジアの販売網を強化し、顧客管理や販売・プロモーション管理を一元化しています(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

収益の中心は、製品群ごとの測定器・装置の販売です。決算短信から読み取れる構造は次のとおりです。

  • 入り口:テクニカルセンターで顧客の測定環境を再現し、顧客と一緒に新しい測定課題を見つける。
  • 課金:5つの製品群の販売。電子測定器が売上の約半分(構成比49.8%)、記録装置が15.2%、現場測定器が20.7%。
  • 継続:グローバルアフターセールス事業の収益性強化に向け、国際物流を含む組織再編を実施した。

市場別では、バッテリー市場がEV・蓄電システム向けで増加し、モビリティ市場とコンポーネント市場もEVの多様化や農業・建設用車両の電動化、半導体分野の需要増で売上が増加しました。エネルギー市場は、中国・東南アジアで増加したものの韓国の落ち込みで前期並みでした(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上高:405億31百万円(前期比3.2%増)、営業利益:67億91百万円(同9.8%減)。販管費の増加が売上増を上回り、利益率が下がったことが読み取れます(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 電子測定器の売上高:201億87百万円(同3.9%増)、受注高:205億43百万円(同7.3%増)。受注が売上より伸びており、AIデータセンター関連やバッテリー検査などの新しい需要が増えていることが読み取れます(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 受注高の合計:410億26百万円(同6.4%増)、売上高の合計:405億31百万円(同3.2%増)。受注が売上を上回って伸びており、次の期に向けた需要の積み上がりがあることが読み取れます(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 海外売上高:257億94百万円(同4.1%増)、海外売上高比率:63.6%。受注の地域別では中国が18.7%増、韓国が11.3%減と、国ごとの振れが大きいことが読み取れます(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 自己資本比率:85.4%。現金及び預金の比率も36.0%と、財務の余力が大きいことが読み取れます(2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は「製造業のサービス化(コト売り)」の入り口として読むことができます。製品の性能を売るだけでなく、顧客の測定環境を自社のテクニカルセンターに作り、顧客と一緒に測定課題を見つけるという進め方は、売る前の課題発見を事業の一部にする動きです。「マーケット軸でのビジネス開発」とは、製品群ごとの縦割りではなく、バッテリーやデータセンターなど顧客の市場から商品を考える姿勢だと読めます。

5つの製品群を同じ市場へ複数売れるため、1つの市場の課題が別の製品の需要になる点が強みになりうると考えられます。実際に、AIデータセンターを起点に、電子測定器の検査需要と現場測定器の需要の両方が言及されています。一方で、利益面では一過性費用とDX投資が重なって営業利益が減っており、仕組みづくりの投資は短期的には利益を押し下げることもわかります。

新製品の投入や海外拠点の拡充は、受注が売上に先行して伸びている状況を維持するための土台だと考えられます。ただし、韓国の政情不安の影響のように、国別のリスクで受注が振れる点には、販売網を分散する意味があると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品は「商品群ごと」に売られていますか。それとも顧客が属する「市場」から整理されていますか。
  • 売る前の段階で、顧客の課題を一緒に見つけられる場所や仕組みを持っていますか。
  • 投資で一時的に利益が下がっても、受注の先行指標で効果を確かめる仕組みはありますか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の売上を商品群別と顧客の業界別に並べ、同じ業界に複数の商品を売れている例を探します。
  2. その業界の顧客2〜3社に、現在の課題を、実際の利用場面を見せてもらう形でヒアリングします。
  3. 聞き取った課題を、商品群をまたいだ提案メモ1枚にまとめ、既存顧客5社に2〜4週間で提示します。
  4. 反応を受注見込みの件数で記録し、次期に力を入れる業界を1つ決めます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:日置電機株式会社 / 電子測定器・記録装置。参照資料:2025年12月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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