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iQIYI「会員・広告・コンテンツ配信」に学ぶ動画配信の三本柱とショートドラマ転換の事業設計

会員課金、広告、コンテンツ配信の三本柱で動画配信を運営するiQIYIが、番組調達費の重さとショートドラマ(マイクロドラマ)の導入にどう向き合うかを整理します。収益構成と利益率の変化をForm 20-F(2025年12月期)から確かめます。

分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム

この事例の要点

  • iQIYI, Inc.は、会員サービス、オンライン広告、コンテンツ配信を収益の柱とする中国の動画配信事業者です。2025年の収益27,291.3百万人民元のうち、会員サービスが16,807.3百万人民元を占めます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年は収益が6.6%減り、売上総利益率が24.9%から21.1%へ下がって、営業利益は229.3百万人民元に縮みました。同社は、会員サービスの収益の減少を主因に挙げています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2024年から、1〜5分程度の縦型動画であるマイクロドラマ(ショートドラマ)を長編ドラマに加え、2025年末時点で約20,000本の作品を揃えています(Form 20-F、2025年12月期)。

どんな事業か

iQIYI, Inc.は、中国・北京に本社を置くケイマン諸島法人で、米国ナスダックにADSを上場しており、百度(Baidu)が親会社かつ支配株主です。同社は、ウェブサイト、モバイルアプリ、スマートテレビなどを通じて、ドラマ、映画、バラエティ、アニメ、子ども向け、マイクロドラマなどの動画を配信しています。2025年12月末時点で、プロが制作した長編コンテンツは40,000タイトルを超え、ほかに約20,000本のマイクロドラマを備えています(Form 20-F、2025年12月期)。

作品は、自社制作のオリジナルと、外部から調達するライセンス作品で構成されます。同社は、自社オリジナルのドラマシリーズが、人気指数9,000超の新作ドラマの90%超を占めたと説明しています。生成AIを使った脚本の選定ツールや、会話型のAIアシスタントなど、AIを事業運営と視聴体験の両方に取り入れる取り組みも説明されています(Form 20-F、2025年12月期)。

収益の仕組み

  • 入り口:会員プランには広告つきの基本層があり、利用者は低い層から入れます。
  • 課金(会員):個人向けとファミリー向けのプランがあり、広告つきの基本層と標準層、ファミリー向けにはプレミアム層もあります。会員専用の作品、先行視聴、高画質などの特典に価格が付きます。
  • 課金(広告):ブランド広告と成果連動型の広告があり、価格は広告の形式、協賛の水準、作品やイベントの人気、ターゲティングの条件で決まります。
  • 課金(配信):作品の配信権の提供で収益を得ます。ほかにゲーム、コミック、タレント事務所、体験型事業などの収益があります。
  • 費用:番組調達と制作が売上原価の中心で、会員が受け取る価値の源であると同時に、利益率を左右する大きな費目です。

数字で確かめる

  • 2025年の収益は27,291.3百万人民元(前年比6.6%減)でした。会員サービスは16,807.3百万人民元(5.4%減)、広告は5,193.4百万人民元(9.1%減)、コンテンツ配信は2,497.5百万人民元(12.3%減)で、会員サービスが収益の約61.6%(16,807.3÷27,291.3)を占めることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 会員サービスの減少について、同社は「コンテンツの本数の薄さ」と「オンライン動画事業者間の競争」を理由に挙げています。会員課金の収益が、作品の質と量に連動することが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • コンテンツ費用は15,709.7百万人民元から15,449.6百万人民元へ1.7%減りました。収益に対する割合は約56.6%(15,449.6÷27,291.3)で、同社は質を重視した、より選別的な調達に切り替えたと説明しています。収益の過半を作品の調達に充てる構造であることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 売上総利益は7,271.7百万人民元から5,749.0百万人民元へ20.9%減り、売上総利益率は24.9%から21.1%へ下がりました。費用が収益ほど減らないため、収益の減少が利益に大きく響くことが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 営業利益は2023年が2,989.5百万人民元、2024年が1,811.2百万人民元、2025年が229.3百万人民元と下がり、2025年は当期純損失204.0百万人民元(前年は純利益790.6百万人民元)でした。同社は、営業利益を出せるようになったのは2022年からだと述べており、黒字の維持が課題になっていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、作品という固定費に近い大きな投資を先に行い、会員数と広告視聴の規模で回収する「サブスクリプション」と「広告モデル」の組み合わせとして読めます。会員は作品の本数と質に対して支払い、広告主は視聴者の規模と視聴の場面に対して支払うため、作品が同じ投資で複数の収益を生む「コンテンツIPの多面展開」にもなっています。作品の調達費が収益の過半を占めるため、規模が落ちると固定的な費用の重さが利益率に出る、という弱点があります。

2025年の数字は、その弱点が表に出た例と読めます。会員サービスが減ると、調達費をほとんど減らせないまま売上総利益率が下がっています。同社が調達を選別的にしたのは、投資の対効果を高める動きと考えられます。一方で、作品が薄いと会員が離れ、会員が離れると広告の価値も下がるため、費用を絞ることと会員を維持することの間に、難しいバランスがあります。

マイクロドラマの導入は、この構造に対する一つの回答と考えられます。1〜5分の縦型作品は、長編とは形式・語り方・届く層が異なり、短い息抜きの時間に見たい利用者に向くと同社は説明しています。長編で会員を、短編で新しい視聴場面を取り込む二段構えで、規模の維持と視聴場面の拡大を同時に狙っていると読めます。ただし、この効果は2025年の数字にはまだ十分に表れておらず、今後の開示で確かめる必要があります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上の中で、先に投資する費用(制作・仕入れ・設備)と、後から回収する収益の関係はどうなっていますか。規模が下がったとき、費用は同じ割合で減らせますか。
  • 同じ資産(作品・データ・ノウハウ)から、会員課金、広告、配信など複数の収益を得られていますか。
  • 大きな投資を要する主力商品の横に、短い期間と小さな費用で試せる形式を並べることはできますか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の売上と原価を、商品・サービス別に並べ、固定的な費用と変動する費用に分けて、売上が1割減ったときの利益を試算します。
  2. 主力商品の中身から、短く切り出せる部分(要約・一部の機能・短い講座など)を1つ選び、試作版を作ります。
  3. 2〜4週間、既存顧客3〜5社に試作版を提供し、利用された回数と、主力商品への関心の変化を記録します。
  4. 同じ素材から別の収益(協賛・紹介料・ライセンスなど)を得る余地を2つ書き出し、打診先の候補を挙げます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:iQIYI, Inc. / 動画配信(会員サービス・広告・コンテンツ配信)。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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