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Intuitive Surgical「da Vinci」に学ぶ事業設計:消耗品モデル

手術支援ロボットの本体を病院に据え、手術ごとに使う器具と保守サービスで収益を重ねる企業です。FY2025の売上高$10,064.7 millionの内訳から、使用回数が決まった器具を軸にした消耗品モデルの設計を読みます。

この事例の要点

  • Intuitive Surgical, Inc.は手術支援ロボット「da Vinci」と肺の生検を行う「Ion」を提供する企業で、FY2025の売上高(Total revenue)は$10,064.7 million、うち製品(Product)が$8,492.6 million、サービス(Service)が$1,572.1 millionでした(Form 10-K、FY2025)。
  • da Vinci用の器具の多くは決められた回数だけ再使用でき、器具内のメモリチップが規定回数を超える使用を原則として許さない仕組みだと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
  • FY2025の売上総利益(Gross profit)は$6,642.3 million、営業利益(Income from operations)は$2,945.5 millionでした(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

da Vinci手術システムは1999年に最初のモデルを発売し、2000年にFDAが一般的な腹腔鏡手術での使用を認可しました。現在は第5世代のda Vinci 5、第4世代のda Vinci X・Xi・SP、第3世代のda Vinci Siが稼働しています(Form 10-K、FY2025)。

システムは、外科医が座って3DHD画像を見ながら操作するコンソール、器具を保持するアームを備えたペイシェントサイドカート、ビジョンシステムで構成されます。da Vinci 5は2024年3月にFDAの認可を受け、2025年6月に日本、2025年7月に欧州(力覚フィードバックの使用を除く)でも認可・認証を取得し、2025年12月31日時点の設置台数は1,231台です。単一切開のda Vinci SPの設置台数は377台です(Form 10-K、FY2025)。

同社は2019年に、肺の生検を行うカテーテル型のIonシステムも商用化し、事業を手術から診断へ広げています。学習面ではシミュレーターのSimNowなどを提供し、フィールドサービスエンジニアと販売代理店のネットワークを通じて設置、修理、保守、24時間の技術サポートを行うと説明しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

収益は製品売上とサービス売上に分かれ、FY2025は製品$8,492.6 million、サービス$1,572.1 millionでした。製品には、ロボット本体のほか、多ポート向けに約70種類、SP向けに14種類の器具、ステープラー、エネルギーデバイスなどが含まれます。器具の多くは病院で滅菌して再使用できますが回数は決まっており、SureFormステープラーのように単回使用の製品もあります。本体を設置した病院は、手術を行うたびに器具の補充を必要とする構造です(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、FY2025の売上原価(Total cost of revenue)は$3,422.4 million(製品$2,866.1 million、サービス$556.3 million)、売上総利益(Gross profit)は$6,642.3 millionでした。販売費及び一般管理費は$2,385.0 million、研究開発費は$1,311.8 millionです。器具・アクセサリーの大部分はメキシコのメキシカリで製造し、内視鏡の多くはドイツ製で、2025年は関税などにより売上原価が約$63.0 million増加したと記載しています(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 売上高$10,064.7 million(FY2025)、前年FY2024は$8,352.1 million(Form 10-K、FY2025)。本体の設置と手術ごとの器具需要が積み重なる伸び方だと読み取れます。
  • 製品売上$8,492.6 million、サービス売上$1,572.1 million(FY2025)(Form 10-K、FY2025)。本体と器具の販売が中心で、保守サービスがそれを補う構成だと読み取れます。
  • da Vinci 5の設置台数1,231台、da Vinci SPの設置台数377台(2025年12月31日時点)(Form 10-K、FY2025)。新世代機の設置が、その後の器具・サービス需要の土台になると読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。消耗品モデルの型で見ると、この事業が成り立つ条件は、本体を導入した顧客が「使うたびに自社の器具を買わざるを得ない」状態を、技術と規制の両面で作っていることだと読めます。器具の再使用回数をメモリチップで管理する仕組みは、性能を仕様どおりに保つ安全設計であると同時に、器具の補充を確実に発生させる仕掛けでもあります。da Vinci 5・X・Xiが器具を共有し、Siは互換性がないという設計からは、世代を更新しながら器具の需要を新しい本体に引き継ぐ考え方が読み取れます。

裏側で必要な仕事は、約70種類の器具を安定供給する製造体制、再使用を前提にした品質管理、外科医の学習支援やサポートです。器具が売れるのは本体が使われ続けるからであり、本体が使われ続けるのは外科医が習熟し、保守が行き届いているからだと読めます。サービス売上$1,572.1 millionは、この土台を支える対価と考えられます。

トレードオフは、製造拠点と部材調達への依存です。メキシコで製造する器具・アクセサリーの多くはUSMCAの原産品として米国の輸入関税の対象外でしたが、ドイツ製が多い内視鏡などは関税の対象で、2025年は関税などにより売上原価が約$63.0 million増えました。補充が止まれば顧客の手術に直接影響するため、消耗品モデルでは供給の継続性そのものが顧客への約束になると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の製品やサービスに、「使うたびに補充が必要になる」部分はありますか。その補充は顧客が納得できる理由(安全、品質)と結びついていますか。
  • 本体側を世代更新するとき、消耗品の需要を新世代へ引き継ぐ設計になっていますか。
  • 消耗品を売り続けるための裏側の仕事(製造、品質管理、顧客の習熟支援)を、誰がどのコストで担っていますか。
  • 消耗品の供給が止まったとき、顧客の業務にどんな影響が出ますか。その責任を引き受けられますか。

小さく試すなら

  1. 自社の提供物を「一度売るもの」と「使うたびに必要になるもの」に分け、後者の売上と粗利を把握します。
  2. 補充が必要になる理由を顧客に説明できる文章にし、既存顧客に見せて納得感を確かめます。
  3. 補充頻度の高い顧客と低い顧客を比べ、使用量を左右する要因(習熟、サポート、用途)を洗い出します。
  4. 支援を強化した顧客群で補充頻度が上がれば、消耗品の売上を伸ばす手段として支援体制への投資を検討します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Intuitive Surgical, Inc. / 手術支援ロボット「da Vinci」と器具・アクセサリー。参照資料:Form 10-K(FY2025、期末2025年12月31日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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