この事例の要点
- Joby Aviationは、パイロット1名と乗客最大4名を乗せる、電動の垂直離着陸機(eVTOL)の空飛ぶタクシーを開発しています。販路は、自社運航、提携先による運航、直接販売と防衛の三つです。
- 2025年8月にBlade Urban Air Mobilityを買収し、ヘリコプターなどによる旅客輸送の予約事業を取り込みました。FY2025の売上53.4百万ドルは、これが主な構成要素です。
- FY2025の純損失は929.8百万ドルで、売上を大きく上回ります。型式証明の取得と量産に先行して投資する事業の規模を、数字で確かめられます。
どんな事業か
Joby Aviation, Inc.は米国カリフォルニア州サンタクルーズに本社を置き、NYSEに上場しています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。開発中の機体は、パイロット1名と乗客最大4名を乗せ、最高時速200マイル、目標航続距離100マイルまでを想定しています。同社は2026年に最初の乗客を乗せることを目指していると説明しています。
同社は、米国連邦航空局(FAA)の型式証明を取得するため、五段階の認証プロセスのうち、構成部品と飛行の試験を行う段階にあると説明しています。2024年にはドバイの道路交通局と、6年間の独占的な運航権を得る正式契約を結びました(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
同社は、市場への出し方を三つに分けています(Form 10-K、FY2025)。
- 自社運航:同社が機体を保有・運航し、アプリや、UberやDeltaなどの提携先のプラットフォームを通じて、乗客から運賃を得ます。
- 提携先の運航:提携先が保有・運航する形で、機体と関連サービスを販売します。Abdul Latif Jameelとの覚書では、最大200機、約10億ドルの機体が対象になっています。
- 直接販売と防衛:政府や防衛関連の顧客に機体を販売します。L3Harrisと防衛向けの応用に取り組んでいます。
- 現在の収益:2025年8月に買収したBladeは、航空チャーターの仲介事業を子会社として続けています。
数字で確かめる
- FY2025の売上は53.4百万ドルで、FY2024の0.1百万ドル(136千ドル)から増えました。旅客売上と、政府向けの飛行サービスや実演、エンジニアリングサービスなどのその他売上からなります(Form 10-K、FY2025)。収益の入り口が、買収した事業によってすでに生まれていることが読み取れます。
- FY2025の純損失は929.8百万ドルで、FY2024の608.0百万ドルから増えました(Form 10-K、FY2025)。売上の約17倍にあたる損失で、先行投資の規模が大きいことが読み取れます。
- FY2025の研究開発費は581.1百万ドルで、FY2024の477.2百万ドルから22%増えました(Form 10-K、FY2025)。機体の開発と認証に、費用の大きな部分を使っていることが読み取れます。
- 2025年12月31日時点で、現金・現金同等物及び制限付き現金は241.7百万ドル、短期の有価証券は1,167.1百万ドルでした。同社は、運転資金と資本の必要を少なくとも今後12か月は満たせると記載しています(Form 10-K、FY2025)。手元資金は大きいものの、損失の規模と並べて見る必要があることが読み取れます。
- Toyotaは、2025年12月31日時点でおよそ650百万ドルを出資し、最大の外部投資家とされています。2024年の契約では最大500百万ドルの追加出資が定められ、2025年5月に最初の250百万ドルが出資されました(Form 10-K、FY2025)。事業会社が資金と製造の面で関わっていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、機体の開発、製造、運航、予約の入り口までを一つの会社でつなぐ、垂直統合の設計と読めます。新しい乗り物は、機体だけがあっても使われず、離着陸の場所、運航の許可、予約の仕組みが揃って初めて成り立ちます。Bladeの買収は、まだ自社の機体が飛べない段階でも、顧客との接点と運航の経験を先に持つ手段と読めます。
三つの販路を並べているのも、設計上の特徴です。自社運航は収益を直接得られますが、運航の負担は重くなります。提携先に機体を売る形は、負担を分けられる代わりに、顧客との距離が遠くなります。どれが主になるかは、規制や市場の立ち上がり次第であり、資料だけでは判断できません。
トレードオフは、収益が立ち上がる前に、大きな損失と時間がかかる点です。型式証明のような外部の許可が事業の前提になる場合、進捗は自社の努力だけで決まりません。資金の余力と、外部の許可の進み具合を並べて見ることが、この種の事業を読むうえでの要点だとOtsumuは見ます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が新しい事業を始めるとき、規制や許可など、自社の努力だけでは進められない前提条件は何でしょうか。
- 本格的な提供が始まる前に、顧客との接点や運用の経験を先に得る手段はあるでしょうか。
- 自社で運用する形と、他社に任せる形で、負担と顧客との距離はどう変わるでしょうか。
小さく試すなら
- 新規事業の案について、始めるために必要な許可、設備、人、取引先を一覧にし、自社だけでは決められないものに印を付けます。
- 印を付けたもののうち、最も時間がかかりそうなものについて、担当部署や外部の窓口に所要期間を問い合わせます。
- 本格的な提供の前に実施できる、小さな前段の取り組み(相談窓口の開設、試験提供、既存の事業との組み合わせなど)の案を二、三つ作ります。
- 2〜4週間の間に、案のうち一つを小さく実施し、顧客から得られた反応と、運用で見つかった課題を記録します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Joby Aviation, Inc. / eVTOL空飛ぶタクシー。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25