← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

キユーピー株式会社の調味料・食品の製造販売に学ぶ、販路別の事業設計

キユーピー株式会社は、調味料やタマゴ商品、カット野菜などを市販用・業務用・海外の販路ごとに届けています。同じ原材料の変動が販路によって異なる影響を与える構造と、価格改定・海外展開の組み合わせを読み解きます。

この事例の要点

  • キユーピー株式会社は、市販用、業務用、海外、フルーツ ソリューション、ファインケミカル、共通の区分で売上高と営業利益を開示しています(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 2025年11月期の売上高は513,417百万円(6.1%増)、営業利益は34,628百万円(0.9%増)でした。親会社株主に帰属する当期純利益は、工場跡地売却による特別利益の計上もあり30,506百万円(42.4%増)でした(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 市販用と業務用は増収ながら鶏卵相場の高騰などで減益となり、海外は増収増益でした。販路によって原材料高の影響の受け方が異なると読めます(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

同社グループは「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって世界の食と健康に貢献することをめざし、長期ビジョン「キユーピーグループ 2030ビジョン」を掲げています(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。2025年11月期から4年間を対象とする中期経営計画では、「国内事業の構造改革」と「グローバル展開の加速」を推進するとしています(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

国内では、多様化するニーズに対応した高付加価値商品の展開を強化するとともに、原材料価格上昇に対応した適切な価格改定を実施し、ロボット導入による生産自働化を推進したと説明しています。市販用では調味料やカット野菜、業務用では価格改定による単価上昇とタマゴ商品の販売数量増が増収に寄与しました(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

海外事業では、アジアパシフィック・米州での新工場の本格稼働による供給能力強化と生産効率の向上を推進し、KEWPIEブランドの認知度向上に向けた取り組みや現地料理と融合した提案型プロモーションを展開しました。そのほか、家庭用ジャム・スプレッドと産業用フルーツ加工品を扱うフルーツ ソリューション、医薬原料や通信販売を扱うファインケミカル、外部向け機械販売や原料販売を含む共通の区分があります(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

収益は、市販用・業務用・海外などの販路ごとに商品を販売することで得ています。当期は、国内でのタマゴ商品の販売回復、カット野菜の需要拡大と単価上昇、海外事業の継続的な成長が増収の要因とされています(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

費用については、今回参照した公開資料には費用の内訳は示されていません。ただし同社は、鶏卵において高病原性鳥インフルエンザや猛暑による供給減少、生産コストの上昇を背景に価格が高止まりしたこと、天候不順による野菜相場の変動、主原料価格高騰の長期化や物流コスト上昇の影響を受けたと説明しています(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 市販用の売上高は189,823百万円(1.6%増)、営業利益は12,577百万円(△11.9%)でした(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。単価上昇でも原材料高を吸収しきれなかったことが読み取れます。
  • 業務用の売上高は185,584百万円(9.1%増)、営業利益は11,857百万円(△0.8%)でした(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。価格改定の効果で減益幅が小さく抑えられたことが読み取れます。
  • 海外の売上高は100,262百万円(8.7%増)、営業利益は13,586百万円(9.0%増)でした(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。営業利益の額で市販用・業務用を上回る区分になっていることが読み取れます。
  • 2026年11月期の見通しは売上高530,000百万円、営業利益38,000百万円です(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。価格改定と海外の需要創造で増益を見込んでいることが読み取れます。
  • 中期経営計画では1,000億円の投資枠を設定し、海外事業の成長加速や国内事業の効率化、DX、新規領域への投資を推進するとしています(2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。成長領域への投資を計画的に進める方針であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。卸・ディストリビューターの型の観点で見ると、この事業の要点は「同じ商品群を、性質の異なる複数の販路にどう届け分けるか」にあると読めます。家庭向けの市販用、事業者向けの業務用、そして海外という販路はそれぞれ顧客も価格の決まり方も異なり、同じ鶏卵相場の高騰でも、市販用は二桁の減益、業務用は小幅な減益と、影響の出方が違っています。販路ごとに価格改定の浸透度が異なることが、この差につながっていると考えられます。

裏側で必要な仕事は、原材料の調達と、販路ごとの価格・商品設計です。原材料相場の変動を受けやすい事業では、価格改定をどのタイミングで、どの販路に、どう説明するかが利益を左右すると考えられます。同社が高付加価値商品の展開や人手不足解消等の社会課題に寄与する付加価値商品の拡充を掲げているのは、相場に左右されにくい商品の比重を高める取り組みとして読めます。

トレードオフとしては、海外で新工場を稼働させて供給能力を高めた分、需要を確実に作らなければ設備が重荷になりうる点が挙げられます。同社が2026年11月期に、新工場への投資を成果へ繋げるためブランドプロモーションの強化に取り組むとしているのは、供給を先に整え、需要創造を後から追いかける順番になっていることを示していると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品やサービスは、どの販路・顧客層ごとに利益の出方がどう違うでしょうか。
  • 原材料や外注費が上がったとき、販路ごとに価格改定を受け入れてもらえる度合いは違うでしょうか。
  • 相場や外部要因に左右されにくい高付加価値の商品を、どの販路で増やせるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 直近の売上と粗利を販路・顧客層ごとに分け、原価上昇の影響がどこに大きく出ているかを2週間で整理します。
  2. 影響の大きい販路で、価格改定の案と、その理由を伝える説明資料を一つ作ります。
  3. 取引先や顧客の一部に説明し、受け入れられる価格幅と、代わりに求められる付加価値を聞き取ります。
  4. 価格改定後も取引が続く見込みが立った販路から順に改定を進め、利益率の改善を確かめてから他の販路に広げます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:キユーピー株式会社 / 調味料・食品の製造販売(市販用・業務用・海外)。参照資料:2025年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

事業の検証から開発・運用まで、現在の段階に合わせて支援します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

30分の無料診断で、次の一手を整理する ↗