分類:企業事例 › 機械・素材・航空宇宙
この事例の要点
- Lincoln Electric Holdings, Inc.は、アーク溶接機器、溶接・ろう付けなどの消耗品(フィラーメタル)、切断装置、自動化ソリューションなどを提供しています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年の純売上高4,233,003千米ドルのうち、消耗品が2,283,101千米ドル、機器が1,079,603千米ドル、自動化が870,299千米ドルでした(Form 10-K、2025年12月期)。
- 消耗品と機器の多くは標準的な商品として見込み生産され、自動化ソリューションは主に受注生産や図面にもとづく生産だと同社は説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Lincoln Electric Holdings, Inc.は、1895年に創業し、米国オハイオ州クリーブランドに本社を置く企業で、NASDAQ市場に上場しています。溶接、切断、ろう付け、機械加工、工程の自動化、現場の補修といった領域で、顧客が重要な設備やインフラを製造・保守することを支える会社だと自社を説明しています。製造と自動化の拠点は20か国にあります(Form 10-K、2025年12月期)。
事業は、Americas Welding、International Welding、The Harris Products Groupの3つのセグメントで構成されます。南北アメリカでは、製品を主に産業用の販売店、小売店、そして溶接製品を使う事業者(OEM、製造業者、インテグレーター)への直販で販売しています。南北アメリカ以外では、自社の従業員と代理人からなる営業組織が、販売店や利用者に販売します。主な顧客は、一般の製造・加工、エネルギー、重工業などです(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は、売上を消耗品、機器、自動化の3つの製品群に分けて開示しています。
- 入り口:アーク溶接機器、切断装置、ワイヤ送給装置、付属品など。基本的な保守・軽作業用から、高度なロボット溶接まで幅広い仕様があります。
- 課金(消耗品):溶接の際に使う溶接ワイヤや溶加材などのフィラーメタル、ろう付け、はんだ付けの材料。溶接をするたびに使われ、なくなるものです。
- 追加(自動化):溶接、切断、搬送、組立、最終検査などの自動化システムの設計と、その統合サービス。個別仕様のものが中心です。
溶接機器の需要は製造業などの設備投資の水準に左右され、事業は景気循環の影響を受けると、同社は説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 消耗品の売上は2,283,101千米ドルで、純売上高の約54%(計算値)です。機器は約25%、自動化は約21%(いずれも計算値)でした(Form 10-K、2025年12月期)。売上の半分超が、使うたびに減る消耗品であることが読み取れます。
- 消耗品の売上は2024年の2,088,721千米ドルから約9%増えました。一方で、自動化は911,425千米ドルから870,299千米ドルへ約5%減っています(Form 10-K、2025年12月期の数値からの計算)。個別の案件に左右される自動化に比べ、消耗品の売上のほうが堅調だったことが読み取れます。
- 2025年の売上総利益は1,534,252千米ドルで、粗利率は36.2%(2024年は36.7%)でした。営業利益は718,059千米ドル(売上高比17.0%)で、前年の15.9%から上がっています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 純利益は520,533千米ドル、希薄化後1株当たり利益は9.32米ドルでした(2024年は8.15米ドル)(Form 10-K、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、「消耗品の定期補充」と「レイザー&ブレード」の型に近いと読めます。ただし、同社の消耗品は、機器と一体で縛る設計というより、溶接の作業量そのものに比例して売れる設計だと考えられます。工場が稼働して溶接を続ける限り、ワイヤなどの消耗品は使われ続けます。機器の新規購入が景気で変動しても、既存の設備の稼働に支えられる部分が大きいと読めます。
売上の過半が見込み生産の標準的な商品である点は、在庫と物流の設計が重要になることを意味します。販売店を通じて広く行き渡らせる設計が、この型を支えていると考えられます。一方で、標準的な商品は価格で比較されやすく、同社が研究開発や技術営業を、競争上の強みとして挙げていることは、その対策だと読めます。
この事例が示すのは、「機器より消耗品が主役」の事業もあるということです。機器は顧客との接点をつくり、消耗品が収益の中心になる配分だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上のうち、顧客の活動量(稼働、利用量)に比例して発生する部分は、どれくらいありますか。
- 景気や投資の波に左右される売上と、日々の利用に支えられる売上を、分けて見ていますか。
- 標準的な商品を、販売店や代理店を通じて広く売る仕組みと、技術営業で付加価値を足す仕組みを、どう使い分けますか。
小さく試すなら
- 過去1年の売上を、案件ごとの売上と、継続して発生する売上(補充、追加購入)に分け、金額と比率を出します。
- 継続して発生する売上の上位10社を抜き出し、利用量の推移(月ごとの購入量)を確認します。
- その中の3〜5社に、利用量に合わせた定期補充や、まとめ買いの案を提案し、2〜4週間で反応を聞きます。
- 反応が良かった顧客で試行し、購入回数と、他社への流出の有無を記録します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Lincoln Electric Holdings, Inc. / 溶接材料と溶接機器。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25