この事例の要点
- MakeMyTripは、MakeMyTrip・Goibibo・redBusの3ブランドで航空券、ホテルとパッケージ、バス、法人出張などを扱うインドのオンライン旅行会社で、2026年3月期の売上は1,044.0百万米ドルでした(Form 20-F、FY2026)。
- 同社が重視する「調整後マージン率」は、航空券7.0%、ホテル・パッケージ17.9%、バス10.2%と、商材ごとに大きく異なります(Form 20-F、FY2026)。
- 2025年8月に開始した多言語のAI旅行アシスタント「Myra」は、2026年1〜3月期に1日5.4万件超の会話があり、その60%超がインドの二級・三級都市から来たと記載されています(Form 20-F、FY2026)。
どんな事業か
MakeMyTrip Limitedはモーリシャスで設立された持株会社で、事業は主にインドの子会社MakeMyTrip (India) Limitedを通じて行っています。ナスダック・グローバル市場に上場しています。2017年にGoibibo(旅行プラットフォーム)とredBus(バス予約)を取得し、2023年12月にはカーレンタルのSavaariに出資しました(Form 20-F、FY2026)。
3つのブランドは、顧客層と価格帯が異なる旅行者をそれぞれ担っています。法人向けにはmyBizやQuest2Travelなどを展開し、旅行代理店向けにはmyPartnerという専用の仕組みを持ちます。インド以外でもUAEや、redBusを通じた中南米・東南アジアで事業を行っています(Form 20-F、FY2026)。
収益の仕組み
同社は、売上の認識方法が商材ごとに異なるため、比較には「調整後マージン」(顧客への値引き費用を戻し、自社が主体として販売した分の原価を引いた額)を使っています。
- 入り口:航空券、ホテル、バスなど、頻度の高い予約。
- 課金:航空券は手数料やインセンティブを「純額」で計上し、ホテル単体の予約は手数料を純額、パッケージは旅行代金を「総額」で計上します。バスは運行会社からの手数料と、旅行者から受け取る手数料です。
- 継続:リピート顧客、複数の商材の組み合わせ、ホテルや運行会社などの供給の集約が、継続した予約の土台になります。
同社は、ホテルやバスのように供給が分散した分野で、供給をまとめて検索しやすくする点が価値だと説明しています(Form 20-F、FY2026)。
数字で確かめる
- FY2026の調整後マージン率は、航空券7.0%(FY2025は6.4%)、ホテル・パッケージ17.9%(同17.8%)、バス10.2%(同10.5%)でした。同じ予約でも商材により手数料率が2倍以上違うことが読み取れます(Form 20-F、FY2026)。
- 取扱高(Gross Bookings)は、航空券が5,830.8百万米ドル、ホテル・パッケージが2,661.1百万米ドル、バスが1,602.4百万米ドルでした。取扱高は航空券が最も大きくても、調整後マージンの絶対額ではホテル・パッケージ(476.8百万米ドル)が航空券(407.1百万米ドル)を上回ることが読み取れます(Form 20-F、FY2026)。
- バスの予約枚数は、86.8百万枚(FY2024)、106.5百万枚(FY2025)、141.5百万枚(FY2026)と増えました。同社が、バスの成長が航空券を補完し、二級・三級都市との都市間移動の取引を広げると説明している点と整合する数字です(Form 20-F、FY2026)。
- 年間の利用顧客数(インド)は、28,000千人、31,800千人、35,700千人と毎年増えました。顧客の裾野が広がっていることが読み取れます(Form 20-F、FY2026)。
- 売上の90.5%はインド国内の子会社の販売によるものでした。市場が国内に集中していることが読み取れます(Form 20-F、FY2026)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は「オンライン旅行仲介(OTA)」と「マーケットプレイス」の型を組み合わせたものです。航空券は供給元が航空会社に集中しており、仲介の手数料率が低くなりやすい商材です。同社も、航空会社などの限られた供給元に依存するリスクを挙げています。一方、ホテルやバスは供給が分散し、まとめて検索できることに価値があるため、手数料率が高くなると読めます。
この構造から、同社が頻度の高い航空券やバスで顧客を集め、利ざやの高いホテルやパッケージへつなげる設計をしていることが推測されます。同社は商材をまたぐ購入の割合や付帯サービスの利用率を重要指標として開示しており、これは顧客の取引を広げることを重視しているためだと考えられます。
AIアシスタントMyraは、会話からの予約や予約後の問い合わせ対応(2026年1〜3月期に航空券・ホテル関連の予約後の問い合わせの55%超を解決)に使われています。問い合わせ対応の負担を減らしつつ、地方の利用者に入り口を作る手段として位置づけられていると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品・サービスごとに、売上ではなく利益率を並べたら、どれが入り口でどれが稼ぎ頭ですか。
- 供給や選択肢が分散している分野で、まとめて見つけやすくするだけで価値が出る領域はありませんか。
- 問い合わせや予約後の対応を、AIや自動化で減らせる部分はどこですか。
小さく試すなら
- 商品・サービスごとに、売上、粗利、顧客の購入頻度を一覧にします。
- 購入頻度が高く粗利が低い「入り口」と、頻度が低く粗利が高い「稼ぎ頭」を1組ずつ選びます。
- 2〜4週間のうちに、入り口を買った顧客へ稼ぎ頭の案内を送り、反応率を測ります。
- 問い合わせの上位10件を分類し、定型の回答で済むものをFAQや自動返信に置き換えて、対応時間の変化を記録します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:MakeMyTrip Limited / MakeMyTrip・Goibibo・redBus。参照資料:Form 20-F(2026年3月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25