分類:企業事例 › 銀行・決済・フィンテック
この事例の要点
- Monzoは英国の免許を持つデジタル銀行で、現在口座と決済を「入り口」に、貯蓄・サブスクリプション・海外送金・保険・年金・投資・貸出へ商品を広げています(Monzo Bank Limited 年次報告書、FY2026)。
- FY2026の収益(Revenue)は17億ポンド(前年比39%増)、顧客数は1,510万人(前年1,210万人)で、年間3億ポンドを超える収益源が4つに増えたと説明しています(同報告書)。
- 収益は、預金から生む金利収入、貸出の利息、カード決済の手数料(インターチェンジ)、サブスクリプションなどに分かれ、金利だけに頼らない構成を戦略として掲げています(同報告書)。
どんな事業か
Monzo Bank Limited(MBL)は、英国で営業する銀行です。親会社を含むMonzoグループ全体を指して「技術主導の規制対象銀行」と自らを説明し、支店を持たないデジタル優先の運営と、クラウドネイティブな自社基盤を競争優位として挙げています。英国の個人顧客1,420万人と、個人事業主を中心とする事業者90.5万社にサービスを提供し、アクティブ顧客の約50%が主要取引銀行としてMonzoを使っているとしています(Monzo Bank Limited 年次報告書、FY2026)。
同報告書によると、事業の考え方は「現在口座と決済が顧客の入り口となり、そこから貯蓄、サブスクリプション、国際決済、保険、年金、投資、責任ある貸出へ広げる」というものです。投資はBlackRock、年金の統合はRaindrop、住宅・家財保険はChubbといった外部パートナーと組んで提供しています。Monzoは未上場で、このページの数値は英国Companies Houseに提出された法定の年次報告書にもとづきます。
収益の仕組み
同社は収益源を、報告書の「Revenue Model」の項で次のように整理しています。
- 入り口:現在口座と決済。カード利用時に加盟店から受け取るインターチェンジ手数料(国内外)が最初の収益になります。
- 預金から:現在口座・貯蓄口座の資金を運用して得る利息収入。預金は低コストの資金源でもあります。
- 貸出から:クレジットカード、個人ローン、当座貸越(オーバードラフト)などの利息。
- 継続課金:有料プランの月額収入。報告書は、パートナー特典や貯蓄チャレンジで得る利息など、プランの価値を高めたと説明しています。
- その他の手数料:投資、年金、保険、為替などの手数料。
資金面は主に個人預金で賄い、金利の変動を和らげるため今後4年程度にわたるヘッジ(構造的ヘッジ)を行っていると記載しています。貸出は「魅力的なリスク調整後リターンが得られる範囲で資本を使う」と説明しています(同報告書)。
数字で確かめる
- 収益(Revenue):17億ポンド、前年12億ポンドから39%増、顧客数は1,510万人(FY2025は1,210万人)です。顧客の増加と1人あたりの収益の伸びが同時に起きたことが読み取れます(Monzo年次報告書、FY2026)。
- MBLの損益計算書では、利息収入は1,199,566千ポンド、手数料収入は458,014千ポンドで、利息が収益の大半を占める一方、手数料収入も前年比39%増であることが読み取れます(同報告書)。
- アクティブ顧客1人あたり収益(ARPAC):184ポンド(前年166ポンド)で、1人あたりの収益が11%伸びたことが読み取れます(同報告書)。
- サブスクリプション数:160万件(前年110万件、49%増)、サブスクリプション収入は62%増とされ、有料プランが収益の柱の一つに育っていることが読み取れます(同報告書)。
- 顧客預金:257億ポンド(前年166億ポンド、55%増)、貸出残高(純額)は23億ポンドで、貸出よりも預金のほうが大きく伸びる資金構造であることが読み取れます(同報告書)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。Monzoの設計の特徴は、「口座」という毎日使う接点を入り口に置き、その上に収益源を積み重ねていることだと読めます。報告書が主要取引銀行にする顧客の割合を重視し、1人あたりの商品数(MAUあたり3.2)まで開示しているのは、収益の伸びが新規顧客の数だけでなく、既存顧客の利用の深さから生まれると捉えているためと考えられます。
もう一つの特徴は、収益源の分散です。金利が下がる局面でも、手数料・サブスクリプション・貸出が収益を支える構成にすることで、一つの収益源への依存を下げようとしていると読めます。報告書でも、収益源が増えたことを「モデルの強さ」の根拠として挙げています。ただし、利息収入が収益の大半を占めている点は変わらず、金利環境の影響を受ける事業であることは変わらないと考えられます。
また、自社で作る商品と外部パートナーに任せる商品を使い分けている点も、小さな会社が真似しやすい部分です。専門性が要る領域(投資・年金・保険)は提携し、顧客との接点とデータは自社で持つ、という分担になっていると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社には、顧客が毎日・毎週使う「入り口」にあたる商品やサービスはありますか。
- 入り口の上に、同じ顧客へ追加で提供できる収益源は、いくつ思い浮かびますか。それぞれ独立した収益として数えられますか。
- 自社で作る領域と、専門パートナーに任せる領域を、どこで分けていますか。
小さく試すなら
- 既存顧客を、利用頻度の高い層と低い層に分け、高い層が使っている入り口の機能を3つ挙げます。
- 入り口を使う顧客に、追加で提供できそうな商品やサービスを2つ選び、価格案と提供方法を1枚にまとめます。
- 2〜4週間のあいだ、顧客10〜20件に案を見せ、関心の有無と価格への反応を記録します。
- 反応が良かった案について、自社で作るか提携するかを、必要な専門性と手間から比較して決めます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Monzo Bank Limited / デジタル銀行(英国・未上場)。参照資料:Monzo Bank Limited Annual Report and Accounts(FY2026、英国Companies House提出)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25