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NIO「Battery as a Service と充電・バッテリー交換網」に学ぶ車と使用権を分ける事業設計

中国のEVメーカーNIOが、車両とバッテリーを分けて売るBaaS、バッテリー交換網、直販を組み合わせて収益を上げる構造を、SEC提出の年次報告書(Form 20-F、2025年12月期)から読み解きます。

分類:企業事例 › 自動車・EV

この事例の要点

  • NIO Inc.は、車両とバッテリーを分けて購入できるBattery as a Service(BaaS)を2020年8月に始めました。利用者は車両の購入価格が下がり、バッテリーの利用料を月額で支払います(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年の納車は326,028台(前期は221,970台)で、収益は874億8,750万元(前期比33.1%増)、粗利益率は13.6%(前期は9.9%)でした(Form 20-F、2025年12月期)。
  • それでも2025年は149億4,260万元の純損失で、純利益を計上し始めたのは2025年第4四半期とされています(Form 20-F、2025年12月期)。

どんな事業か

NIO Inc.は、ケイマン諸島で設立された持株会社で、主たる事務所は中国・上海にあります。ニューヨーク証券取引所に上場し、香港取引所とシンガポール取引所にも上場しています。ブランドは、プレミアムの「NIO」、家族向けの「ONVO」、小型の「FIREFLY」の3つで、2025年の納車は順に178,806台、107,808台、39,414台でした(Form 20-F、2025年12月期)。

中国では、ディーラーを介さずユーザーに直接販売する方式を取っています。同社はこの方式について、多額の支出が必要で、ディーラー網を使う場合より拡大や販売網の広がりが遅くなりうると、リスクとして開示しています。あわせて、充電・バッテリー交換などの「パワーソリューション」を提供し、車を売った後の接点をサービスとして持っています(Form 20-F、2025年12月期)。

収益の仕組み

同社の収益は、車両販売とその他の販売の2つに分かれます(Form 20-F、2025年12月期)。

  • 入り口:車両の購入。予約金は車両の希望小売価格の3.0%未満で、一定期間後に返金されなくなると記載されています。
  • 課金その1(車両販売):BaaSを選ぶと、同社はバッテリーを電池資産会社(Wuhan Weineng Battery Asset Co., Ltd.)に売り、ユーザーは車両価格の値引きを受けたうえで、電池資産会社に月額でバッテリー利用料を支払います。
  • 課金その2(その他の販売):部品・アクセサリー・アフターサービス、延長ワランティ(購入後の補修サービスの延長)、充電・バッテリー交換サービス、充電設備の販売、BaaS関連サービス、中古車販売などです。
  • 継続:全車両がバッテリー交換に対応し、交換ステーションを増やすことで、車を売った後の利用が続く構造になっています。同社は、バッテリーの容量を一時的・恒久的に上げるアップグレードサービスも提供しています。

同社は電池資産会社に約16.5%を出資しており、重要な影響力は持つものの支配はしていないと記載しています。BaaSの運営がこの会社の安定運営に依存するため、同社はこれをリスクとして挙げています(Form 20-F、2025年12月期)。

数字で確かめる

  • 2025年の収益874億8,750万元のうち、車両販売は768億8,390万元(87.9%)、その他の販売は106億360万元(12.1%)です(Form 20-F、2025年12月期)。収益の大半は車両の販売で、サービス側は1割強にとどまることが読み取れます。
  • 車両の粗利益率は2025年に14.6%(前期は12.3%)、その他の販売の粗利益率は6.6%(前期はマイナス8.6%)でした(Form 20-F、2025年12月期)。サービス側が赤字から黒字に転じたことが読み取れます。
  • 2025年12月31日時点でバッテリー交換ステーションは3,737か所、累計の交換は9,600万回を超えています(Form 20-F、2025年12月期)。交換網がすでに大きな設備として積み上がっていることが読み取れます。
  • 2025年の純損失は149億4,260万元で、前期の224億170万元から33.3%減りました(Form 20-F、2025年12月期)。損失は縮小したものの、なお赤字であることが読み取れます。
  • 主力モデルの希望小売価格の範囲は、2024年の20万6,900〜35万8,000元から、2025年は11万9,800〜40万6,800元になりました(Form 20-F、2025年12月期)。下位の価格帯に商品を広げたことが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、高額な部品(バッテリー)の「所有」と「使用」を切り離し、初期費用を下げる設計だと読めます。車両価格が下がれば購入の入口は広がり、その分の負担は月額の利用料という継続課金に変わります。さらに、バッテリーを第三者の資産会社に持たせることで、同社の資金負担を軽くしながら、車を売った後も接点を保つ仕組みとも考えられます。

ただし、この設計には条件があります。交換ステーションという大きな設備を先に用意する必要があり、利用者が増えるまで設備の費用が重くなります。その他の販売の粗利益率が2025年にようやくプラスになったことが、設備と利用の釣り合いが改善しつつあることを示すと読めます。一方で、資産会社の運営に依存する点や、直販に伴う費用の重さは、同社自身がリスクとして挙げています。

汎用的な学びは、「高くて重い部分を切り離し、使用料で回収する」型が、初期費用の壁を下げる一方、設備と提携先への依存を生むという点です。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の製品やサービスのうち、初期費用を高くしている部分は何で、それを切り離して使用料にできるでしょうか。
  • 切り離した部分の資産を、自社で持つか、提携先に持たせるか、どちらが資金面で無理がないでしょうか。
  • 売った後も顧客と接点が続く仕掛けとして、自社にはどんなサービスを足せるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の商品の価格を構成要素に分け、顧客が「高い」と感じる要素を2〜3社に聞いて特定します。
  2. その要素を除いた価格と、その要素を月額で支払う案の2つを、数社に見せます。
  3. どちらの案が選ばれやすいか、月額で払う場合の許容額と契約期間をどう考えるかを記録します。
  4. 2〜4週間の聞き取りで月額案に具体的な支払意思が出た場合は、小規模な試験提供の条件(対象顧客、期間、解約条件)を書き出し、資金と提携先の確保が可能かを確認します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:NIO Inc. / NIO(Battery as a Service、Power Swap)。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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