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OTSUMU KNOWLEDGE

Red Hat「Red Hat Enterprise Linux」に学ぶオープンソースのサブスクリプション事業設計

ソースコードが公開されたソフトを、サポートや更新を束ねた年次・複数年のサブスクリプションで販売するRed Hatの事例です。10-K(2019年2月期)の売上構成と契約の仕組みから、無償の技術で収益を作る設計を考えます。

分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS

この事例の要点

  • Red Hatは、ソースコードが公開されたオープンソースのソフトを、年次または複数年の「サブスクリプション」で提供しています。契約には、サポート、セキュリティ更新、不具合修正、機能強化などが含まれます。
  • 同社は、従来の「ライセンスを売って初年度に売上を計上する」方式と違い、請求時に繰り延べ、契約期間にわたって収益を認識すると説明しています。
  • 2019年2月期の売上高の約88%が、サブスクリプション由来です。売上は、サブスクリプションとトレーニング・サービスで構成されています。

どんな事業か

Red Hat, Inc.は米国デラウェア州で設立され、ノースカロライナ州ローリーに本社を置く企業で、ニューヨーク証券取引所に上場していました(Form 10-K、2019年2月期)。同社は自社を、コミュニティの力を生かしたアプローチで、OS・仮想化・管理・ミドルウェア・クラウド・ストレージの各技術を提供するオープンソースのソフトウェア企業だと説明しています。

製品は、OSのRed Hat Enterprise Linux、管理のRed Hat Satellite、ミドルウェアのRed Hat Middleware、コンテナ基盤のRed Hat OpenShiftなどです。開発は、Fedora ProjectやKubernetes、Linuxカーネルなどのオープンソースのコミュニティと連携して進めると記載しています(Form 10-K、2019年2月期)。

収益の仕組み

  • 入り口:ソフトウェアは、ソースコードが公開されるオープンソースのライセンスで配布します。技術そのものではなく、企業向けに整えた提供と支援が商品になります。
  • 課金:サブスクリプションは年次または複数年で、サポートの水準を選べます。パブリッククラウドやマネージドサービスなどの認定事業者を通じた、オンデマンドでの利用もあります。
  • 継続:契約には、セキュリティ更新、不具合の修正、機能強化、認定されたハードウェア・ソフトウェアとの互換性が含まれます。顧客ポータル(ナレッジベースや文書)も付属します。

数字で確かめる

  • 2019年2月期の売上高は3,362,069千ドルで、前年の2,920,461千ドルから15.1%増えました(Form 10-K、2019年2月期)。成長が続いていることが読み取れます。
  • サブスクリプションは2,949,059千ドル、トレーニング・サービスは413,010千ドルです(同)。サブスクリプションの比率は、2,949,059÷3,362,069で約88%になり、収益の中心であることが読み取れます。
  • インフラ関連の提供(Red Hat Enterprise Linux、Satellite、Virtualizationなど)の売上高に対する比率は、2017年2月期の70.3%から、2019年2月期は63.4%へ下がりました。アプリケーション開発関連と新しい領域(OpenShift、Ansibleなど)は18.2%から24.3%へ上がりました(同)。主力のOSから、新しい領域へ収益の幅が広がっていることが読み取れます。
  • 売上の約10%は、米国政府とその機関によるものです(同)。公的機関が継続的な顧客であることが読み取れます。
  • 契約済みの繰延収益は、流動負債として21.6億ドル、長期として8億2,120万ドルです(同)。先に請求し、契約期間にわたって収益を認識する構造が数字に表れていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。ソースコードが誰でも入手できるのに、なぜ企業が支払うのか。この事例は、顧客が買っているものが「ソフトウェアのコピー」ではなく、「長期にわたって安心して使い続けられる状態」であることを示しています。更新・不具合対応・互換性の確認といった、継続的な仕事を引き受ける対価が、サブスクリプションです。

同社の説明では、契約者は更新や修正を受けられ、認定された環境での動作が確認されます。企業の情報システム部門にとっては、障害時の連絡先が明確になること自体が価値だと考えられます。

一方で同社は、顧客が契約条件を守らないリスクや、サポートの品質への評価が下がると契約更新に響くことを、リスク要因として記載しています。技術を公開する事業では、継続的な品質が、そのまま収益の土台になります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が提供しているものは、成果物そのものか、それとも「使い続けられる状態」を維持する仕事か。
  • 顧客が安心のために払っている対価は、更新・保守・問い合わせ対応のどれに当たるか。
  • 契約の期間にわたって価値を届ける仕組みは、売上の計上や請求の方法と合っているか。

小さく試すなら

  1. 直近1年に納品した成果物のうち、納品後も問い合わせや修正の依頼が続いたものを5件ほど選びます。
  2. 各件で、納品後に実際にかかった作業(更新・不具合対応・質問への回答)を、時間と内容で一覧にします。
  3. その作業を束ねて、年額または月額の保守・継続支援として提示する案を作り、水準を二つ(例:問い合わせのみ/更新対応を含む)に分けます。
  4. 2〜4週間のうちに、2〜3社の既存顧客に案を見せ、どの水準に価値を感じるかを記録します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Red Hat, Inc. / Red Hat Enterprise Linuxほか。参照資料:Form 10-K(2019年2月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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