分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS
この事例の要点
- Similarwebは、自社を「中核はデータ事業」と位置づけ、ウェブとアプリの利用状況を推計したデータを、製品、API、AI向け連携(MCP)などの形で提供しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 無料版で試してもらい、有料契約に進んでもらう導線を持っています。大口顧客の多くは、小さな契約から支出を増やしていったと同社は説明しています(Form 20-F)。
- 年間の継続収益(ARR)のうち、複数年契約が占める割合は、2023年末の42%から2025年末の60%へ上がりました(Form 20-F)。
どんな事業か
Similarweb Ltd.は、イスラエルのギバタイムに本社を置き、株式は米国のニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しています(Form 20-F、2025年12月期)。同社は、ウェブサイトやアプリで起きている行動や取引の推計を、構造化・標準化した「Similarweb Digital Data」として提供しています。
同社は、製品化されたソフトウェアや、API、モデルコンテキストプロトコル(MCP)、ウェブサイトやアプリの利用推計を示す無料サービスで知られる一方、「中核はデータ事業」だと述べています。利用者は人間の意思決定者だけでなく、AIシステムやデータ基盤を持つ企業にも広がっています(Form 20-F)。
収益の仕組み
Form 20-Fの記載を整理すると、次のような段階構造として読めます。
- 入り口:無料の利用推計サービスで、ウェブやアプリの数字を確かめてもらいます。同社は、無料層の利用者が組織内で有料契約につながることを期待していると述べる一方、転換が進まない可能性もリスクとして挙げています。
- 課金:SaaSとしての製品、データをそのまま渡すData-as-a-Service、APIやMCPでの連携を組み合わせます。製品化されていない課題には、アドバイザリーサービスも提供します。
- 継続:契約は更新と拡大が前提で、同社は純ドル保持率(NRR)を重要な指標として挙げています。複数年契約の比率を、顧客がデータに価値を見いだしている指標と見ています。
数字で確かめる
- 売上高は、2023年が218.0百万ドル、2024年が249.9百万ドル、2025年が282.6百万ドルで、前年比の伸びは2024年が15%、2025年が13%でした(Form 20-F)。伸び率は鈍っても、毎年増収が続いていることが読み取れます。
- 2025年12月31日時点の有料顧客は6,128社です(Form 20-F)。顧客数が数千社の規模に広がっていることが読み取れます。
- 年間契約額(ARR)10万ドル以上の顧客は454社で、ARR全体の63%を占めます。同社は、これらの大口顧客の多くが小さな契約から始まり、時間とともに支出を増やしたと述べています(Form 20-F)。少数の大口にARRが集まる構造だと読み取れます。
- 複数年契約がARRに占める割合は、2023年末42%、2024年末49%、2025年末60%と上がりました(Form 20-F)。契約期間が長くなる方向に動いていることが読み取れます。
- 2025年の営業キャッシュフローは14.6百万ドル、フリーキャッシュフローは13.0百万ドルでした。売上のうち米国外の顧客から生じた割合は、2023年が約53%、2024年が約52%、2025年が約45%です(Form 20-F)。収益はキャッシュを生む段階にあり、米国の比重がやや高まったことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、フリーミアム、サブスクリプション、従量・データ提供の型が重なって見えます。無料の入り口が、製品を知ってもらう広告の役割を果たし、有料の段階では「同じデータ」を、画面、API、AI向けと、使い方に合わせた形で売り分けています。データ自体を資産として持ち、出口の形を増やすことで、顧客あたりの支出を広げる設計だと考えられます。
複数年契約の比率が上がっている点は、顧客側にとってデータが業務の前提になってきたことを示すと読めます。ただしこれは企業側の指標であり、契約の中身や解約の実態までは資料から分かりません。
トレードオフは、データの質と取得範囲に事業が左右されることです。同社自身も、アクセスできないデータが生じた場合にNRRなどへ影響しうるとリスクに記しています(Form 20-F)。無料の入り口が有料に転換するかどうかも、継続的な検証が必要な点だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が持つ知見やデータのうち、無料で見せることで信頼を得られる部分はどこでしょうか。
- 同じ中身を、画面、レポート、連携の形に分けて売るとしたら、どの形が顧客にとって使いやすいでしょうか。
- 契約期間を長くしたくなるのは、顧客がどんな状態になったときでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の成果物のうち、無料で公開してもよい要約や指標をひとつ選び、見せる形を決めます。
- 公開した相手のうち数社に、続きが欲しいかどうか、欲しいなら画面、定期レポート、データ連携のどれがよいかを聞きます。
- 聞いた結果をもとに、有料の形を二つまでに絞り、期間を区切った試行料金の案を作ります。
- 2〜4週間で、無料から有料の相談につながった数と、期間を延ばしたいという声の有無を記録し、続けるかを決めます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Similarweb Ltd. / Similarweb Digital Data。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25