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Sphere Entertainment「Sphere」に学ぶ専用会場とコンテンツ自製の事業設計

ラスベガスの球体型会場Sphereを、自社制作の上映、コンサート、協賛・外装広告で稼働させ、MSG Networksの放送契約と組み合わせる構造を、Form 10-K(2025年12月期)から確かめます。

分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム

この事例の要点

  • Sphere Entertainment Co.は、Sphereセグメント(ラスベガスの会場Sphere)とMSG Networksセグメント(地域スポーツ・エンターテインメント放送)の2つで事業を営んでいます。2025年12月期の連結売上は1,220,045千ドルで、Sphereが約64%を占めます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • Sphereの収益源は、自社制作の上映「The Sphere Experience」のチケット、他社が主催するイベントの会場使用料、協賛・看板・外装広告「Exosphere」・スイート、飲食、物販などです(Form 10-K、2025年12月期)。
  • Sphereセグメントの調整後営業利益は144,562千ドルで、前期の△19,663千ドルから黒字に転じました。ただし減価償却を含む営業損益は△268,157千ドルでした(Form 10-K、2025年12月期)。

どんな事業か

Sphere Entertainment Co.は米国の企業で、Class A普通株式をニューヨーク証券取引所に上場しています。旧Madison Square Garden Entertainment Corp.として2019年に設立され、2020年にMSG Sportsから分離されました。2021年にはMSG Networksを合併し、2023年にはMSG Entertainmentの事業を再び分離しています(Form 10-K、2025年12月期)。

最初のSphereは2023年9月に開業し、ラスベガス・ストリップの1ブロック先にあります。会場の外装は全面がLEDのExosphereで、広告主やアーティストの表現の場になっています。会場内は16K×16Kの内側スクリーンを備え、23のスイートを持ちます。コンテンツは、バーバンクの「Sphere Studios」で、専用の技術と設備を使って社内で制作しています。今後はアブダビへの展開と、メリーランド州ナショナル・ハーバーでの新会場の開発を発表しています(Form 10-K、2025年12月期)。

収益の仕組み

Sphereセグメントは、複数の収益を一つの会場に重ねる設計です。

  • The Sphere Experience:自社制作の上映のチケット。上映回数、座席の稼働、価格、公演の組み合わせで収益が決まります。
  • 会場の使用料:他社が主催するコンサートやイベントで、同社が主催・共催する場合と、会場を貸す場合では、収益と費用の計上が異なります。
  • 協賛・看板・Exosphere広告・スイート:企業向けの継続的な収益で、スイートは複数年の契約を含みます。
  • 飲食、物販、チケットの手数料などです。

MSG Networksセグメントは、地域スポーツ・エンターテインメント放送で、収益の中心は配信事業者との契約(affiliation agreements)による料金です。2025年は431,476千ドルの「メディア関連」収益を計上しています(Form 10-K、2025年12月期)。

数字で確かめる

  • 連結売上は1,220,045千ドルで、Sphereが781,412千ドル、MSG Networksが438,633千ドルでした。Sphereの売上は前年の617,673千ドルから27%増えました(Form 10-K、2025年12月期)。
  • Sphereの増収の内訳は、The Sphere Experienceが103,938千ドル、イベント関連が64,271千ドル増えた一方、協賛・看板・Exosphere広告・スイートは9,416千ドル減りました。主力が自社制作の上映に移っていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • The Sphere Experienceは880回の上演で、1回あたりの平均売上は約497ドル(前年は862回で約386ドル)でした。「The Wizard of Oz at Sphere」が2025年8月28日に始まり、1回あたりの売上を押し上げたと説明されています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • Sphereセグメントの調整後営業利益は144,562千ドル(前年△19,663千ドル)、連結の調整後営業利益は261,824千ドル(前年109,840千ドル)でした。一方、Sphereの減価償却費は327,769千ドルで、営業損益は△268,157千ドルでした。会場の建設費が大きく、償却を含めると黒字には届いていないことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • MSG Networksの売上は438,633千ドルで、調整後営業利益は前年より12,241千ドル減りました。放送側が会場側を支える安定した収益源である一方、利益は減っていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「施設運営・興行」の型で読むことができます。巨額の会場への投資を、上映、コンサート、広告、スイートという複数の収益に重ねて回収する構造です。固定費が大きい会場では、稼働を上げるほど一回あたりの追加費用が小さくなるため、稼働の質と数が利益を決めると考えられます。1回あたりの売上の上昇は、その方向で進んでいることを示しています。

注目したいのは、コンテンツを自社で作っている点です。会場専用の上映を自社制作することで、他社の興行に頼らずに稼働の核を持てます。さらにスタジオの技術は、他の都市に会場を増やす際にも使い回せる資産になりえます。ただし、これは会場が増えた場合の見方で、資料は計画と意向を述べているにとどまります。

MSG Networksの放送契約は、会場の変動する収益を補う安定収益の役割を果たしていると読めます。他方、減価償却を含めると損失が大きく、会場型の事業は先行投資の回収に時間がかかるというトレードオフが中心にあります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社で大きな固定費をかけている設備や仕組みは、どれだけの種類の収益に使い回せていますか。
  • 稼働の核になるコンテンツやサービスを、外部に頼らずに自社で持てていますか。
  • 変動の大きい収益を補う、安定した継続収益はありますか。

小さく試すなら

  1. 自社の設備・場所・チームの稼働状況を、時間帯や曜日ごとに記録し、空いている部分を洗い出します。
  2. 空いている部分で提供できる、小さな有料の企画(貸出、体験、法人向けの利用など)を2〜3案作ります。
  3. 1案を選び、既存の顧客や近隣の事業者に声をかけて、2〜4週間で試験的に実施します。
  4. 稼働率、売上、追加でかかった費用を記録し、続けるかどうかを決めます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Sphere Entertainment Co. / Sphere・MSG Networks。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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