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Starling Bank「自社開発の基幹システム」に学ぶ預金と低コスト運営の事業設計

英国のデジタル銀行Starlingが、自社開発の基幹システムと預金基盤で、金利低下の局面でも税引前利益2.34億ポンドを保った構造を、Companies Houseに提出された2026年3月期の年次報告書から読み解きます。

分類:企業事例 › 銀行・決済・フィンテック

この事例の要点

  • Starling Bank Limitedは英国のデジタル銀行で、個人と小規模事業者向けの口座に加え、自社で開発した「クラウドネイティブの基幹システム」で運営しています(Starling Bank Limited Annual Report、2026年3月期)。
  • 2026年3月期は、金利の低下で粗利益が6.18億ポンド(前年比6.5%減)となる一方、税引前利益は2.34億ポンド(同1.7%増)と、わずかに増やしました(同報告書)。
  • 決済・CRMなどを自社で作って外部ベンダーへの依存を減らし、顧客あたりの運営費を下げる「作る」型の運営を、事業の強みとして説明しています(同報告書)。

どんな事業か

Starling Bank Limited(英国、未上場)は、2016年に営業を始めた英国の銀行です。個人、個人事業主、法人向けの口座を提供しており、報告書は、4.9百万口座(前年比7.1%増、内訳は個人440万、事業者49.2万)に使われていると説明しています。親会社はStarling Group Holdings Limitedで、このページの数値はSBL単体の年次報告書にもとづきます(Starling Bank Limited Annual Report、2026年3月期)。

同報告書は、技術面について、自社のエンジニアが一から作った基幹システムにより、1日あたり50〜55回のコード公開を行い、カード処理基盤やCRMも自社で作ってきたと述べています。24時間365日の英国内サポート、支出管理(Spaces、Bills Manager)、生成AIを使った金融アシスタント「Starling Assistant」などが、顧客向けの特徴として挙げられています。

収益の仕組み

報告書の構造は、銀行の標準的な「預かって、運用・貸出する」型です。ここに、次のような特徴が加わります。

  • 入り口:口座の開設と、アプリでの日常の資金管理。預金(顧客預金127億ポンド)が資金の中心です。
  • 収益:預金を貸出(貸出残高52億ポンド、うち賃貸用不動産向けのBTLモーゲージが増加)と債券・中央銀行預け金で運用して得る利息。カード利用に伴う手数料収入が補います。
  • 費用の抑制:基幹システム・カード処理・CRMを自社で持ち、外部ベンダー費用を減らす。
  • 金利変動への備え:構造的ヘッジ(60億ポンド、前年比20.0%増)で、金利低下の影響を和らげる。

手数料収入の割合は、収益全体の12.61%から13.23%に上がったと記載しています(同報告書)。

数字で確かめる

  • 税引前利益:2億3,420万ポンド、前年比1.7%増。収益は8億6,170万ポンド(6.2%減)と下がっても、利益を維持したことが読み取れます(Starling Bank Limited Annual Report、2026年3月期)。
  • 粗利益は6億1,870万ポンド(6.5%減)、粗利益率は71.8%(前年から24ベーシスポイント低下)で、金利が下がっても利益率がほぼ保たれたことが読み取れます(同報告書)。
  • 手数料・コミッション収入は1億1,400万ポンド(1.7%減)、カード取引収入は9,750万ポンドで、取引総額は2,167億ポンド(10.0%増)に増えているのに、顧客1人あたりのカード利用額は下がったことが読み取れます(同報告書)。
  • 顧客預金は127億ポンド(5.2%増)、貯蓄預金は22億ポンドで44.8%増と、貯蓄商品(Cash ISAなど)の投入が預金を押し上げたことが読み取れます(同報告書)。
  • 1ユーザーあたり収益(ARPAU)は271ポンド(9.4%減)とされ、金利低下が1人あたり収益に影響したことが読み取れます(同報告書)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。Starlingの事例で学べるのは、金利のような外部環境に左右される事業で、「自分でコントロールできる費用構造」を持つことの意味です。収益は金利低下で減っても、基幹システムやカード処理を自社で持つことで、外部に払う費用を抑え、利益を維持しやすくしていると読めます。報告書が、運営費の抑制を「作る」ことの成果として説明していることとも合います。

一方で、自社開発は人材と投資が必要で、報告書でも人件費が12.9%増えたと記載されています。つまり、固定費を増やしてでも変動費と外部依存を減らす選択であり、顧客数が増えるほど効く構造だと考えられます。収益側では、貯蓄商品を整えて預金を増やし、手数料の比率を上げて金利依存を下げる動きが見えます。

ただし、収益と顧客1人あたり収益は下がっており、利益維持は費用側の工夫によるところが大きいと考えられます。この型は、収益が伸びない局面での防御力が強みであり、成長の源泉は別に必要だと読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の費用のうち、外部に払っていて、自社で持てば下げられるものはどれですか。
  • 外部環境(価格、金利、為替など)が不利に動いたとき、利益を守るために先に打てる手は何ですか。
  • 収益の一部を、外部環境に左右されにくい別の収益へ移すには、何から始められますか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の外部支払い(ツール、委託、ライセンスなど)を金額順に並べ、上位5つを選びます。
  2. 5つのうち、自社で代替でき、かつ使用量が増えるほど割高になるものを1つ選び、代替の方法と必要な手間を書き出します。
  3. 2〜4週間のあいだ、その1つについて、代替案を小さく試し、品質・手間・費用を記録します。
  4. 結果をもとに、続けるか、元に戻すかを判断し、費用の差額を月次で確認します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Starling Bank Limited / デジタル銀行(英国・未上場)。参照資料:Starling Bank Limited Annual Report and Accounts(2026年3月期、英国Companies House提出)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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