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Stem「PowerTrackソフトウェアと蓄電の運用」に学ぶ機器販売からソフト・継続収益へ移る事業設計

蓄電池の再販売で売上を作っていたStemが、太陽光・蓄電の運用ソフトPowerTrackとマネージドサービスへ軸足を移した事例です。売上構成の変化と年間経常収益の推移を、米国10-Kの数字から確かめます。

この事例の要点

  • Stem, Inc.は、太陽光・蓄電設備の監視と最適運用のソフトウェア群PowerTrackと、それを土台にしたマネージドサービス、専門サービスを提供しています。同社は、蓄電池の再販売を戦略的に重視しない方向へ変えたと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 売上高は、2023年の461,515千ドルから2025年に156,266千ドルへ減りました。蓄電池の再販売が360,204千ドルから14,839千ドルへ縮んだ影響です(Form 10-K、FY2025)。
  • 一方、PowerTrackソフトウェア売上は28,732千ドルから37,620千ドルへ、年間経常収益(ARR)は2025年末に6,110万ドルになりました。売上総利益率(GAAP)は前年のマイナス8%から38%へ変わりました(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Stem, Inc.は米国デラウェア州法人で、NYSEに上場しています。同社は、資産の所有者・運営者向けに、クリーンエネルギー設備の開発・導入・運用を支える事業を行い、約20年の実績と55カ国での案件があると説明しています(Form 10-K、FY2025)。

中核は、太陽光・蓄電・併設型の設備向けソフトウェア群PowerTrackです。太陽光の監視・分析ソフト、エネルギー管理システム、監視制御(SCADA)、発電所制御装置、データロガー、最適運用のPowerTrack Optimizer(旧称Athena)などで構成されます。ソフトはハードウェアを選ばない設計だと説明しています。顧客は、プロジェクト開発事業者、資産所有者、EPC会社、販売代理店です(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

FY2025の10-Kは、売上を製品ラインごとに次のように分けています(Form 10-K、FY2025)。

  • 入り口:エッジハードウェア(現場のデータ収集と制御を担う機器)の販売と、導入・試運転を支えるプロジェクトサービスです。機器を置くことで、ソフトの利用に入ります。
  • 課金:PowerTrackソフトウェアは継続課金のSaaS収益です。ソフトの料金は、契約期間にわたる毎月の固定払いが中心で、初期設置の費用が付く場合もあります。
  • 継続:マネージドサービスは、蓄電・併設システムの設計、調達、試運転から運用・最適化までを担い、継続収益と市場売電による収益を含みます。蓄電池の再販売は、提携の形で蓄電システムを売る別の区分です。

同社は、蓄電システムを販売する案件で、ソフトと長期サービス契約を組み合わせるとも説明しています。機器の売上は一度きりでも、運用ソフトが続く限り接点が残る設計です(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • 2025年の売上高は156,266千ドルで、サービス・その他が87,696千ドル(前年比29%増)、ハードウェアが68,570千ドル(同11%減)でした(Form 10-K、FY2025)。ソフトとサービスの比重が高まり、ハードウェアが減ったことが読み取れます。
  • 製品ライン別では、PowerTrackソフトウェアが37,620千ドル、エッジハードウェアが53,731千ドル、マネージドサービスが30,209千ドルでした。蓄電池の再販売は14,839千ドルで、2023年の360,204千ドルは売上の約78%(360,204÷461,515として算出)を占めていました(Form 10-K、FY2025)。売上の主役が、蓄電池の再販売から、ソフトと機器・サービスの組み合わせに入れ替わったことが読み取れます。
  • 売上総利益は59,956千ドルで、前年の△11,058千ドルから改善しました。GAAPの売上総利益率は38%(前年は△8%)です。同社は、低マージンの蓄電池再販売の減少が主因だと説明しています(Form 10-K、FY2025)。取扱高を減らしても、利益率が改善し得ることが読み取れます。
  • ARRは6,110万ドル(前年は5,280万ドル)、CARR(契約済みを含む年間経常収益)は6,720万ドル(前年は6,450万ドル)です。運用中の太陽光は36.1GW(前年は29.9GW)です。ただし2025年第1四半期から、これらの指標は定義が変わっており、過去との単純比較はできないと同社は注記しています(Form 10-K、FY2025)。継続収益と管理対象の容量がともに増えていることが読み取れます。
  • 2025年の売上のうち、米国が148,534千ドルです(Form 10-K、FY2025)。収益の大半が米国市場に依存していることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、「ハードウェア+ソフトウェア(IoT)」と「サブスクリプション」の型の間にある、移行期の設計だと読めます。蓄電池の再販売は、大きな売上を作れる一方、仕入れと価格の影響を受けやすい事業です。同社の売上は大きく減りましたが、利益率は改善しました。大きな売上を追うより、継続して課金できる部分を厚くする判断だったと読めます。

この移行を支えるのは、現場に置く機器と、その上で動くソフトを一体で持っている点だとOtsumuは見ます。機器は、データを取るための入り口になり、ソフトはその設備が動く限り使われます。ハードウェアを選ばないソフトという位置づけは、他社の機器を使う顧客にも提供できる広さを持つ反面、機器の値下がりに自社の価値が引っ張られない利点があると考えられます。

トレードオフは、売上の規模を一度縮める痛みと、継続収益が積み上がるまでの時間です。同社も、顧客がサブスクリプションを更新し続けることへの依存や、クラウド基盤(AWS)への依存を、リスク要因として挙げています。数値の定義変更もあるため、経営判断の評価は、開示の継続的な確認が必要です。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上のうち、大きいが利益率の低い部分と、小さいが継続して課金できる部分は、それぞれどれくらいでしょうか。
  • 一度きりの販売で終わっている取引に、使い続けてもらうための仕組み(ソフト、運用、保守)を足せないでしょうか。
  • 売上の規模が一時的に縮んでも、利益率と継続収益が改善するなら、その判断をどの指標で説明できるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の取引を、単発の販売と継続して課金される取引に分け、利益率と件数を並べて表にします。
  2. 単発で終わった顧客のうち5社に、納品後に困っていることや、続けて頼みたいことがないかを聞き取ります。
  3. 聞き取った内容から、月額で提供できる運用・点検・レポートのような小さな継続サービスを1つ決め、価格案を作ります。
  4. 2〜4週間で、既存顧客2〜3社に提案し、継続して使う意向が出るかを確認します。意向が出なければ、サービスの範囲を見直します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Stem, Inc./PowerTrack・マネージドサービス。参照資料:Form 10-K(FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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