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TKO Group Holdings「UFC・WWE・IMG」に学ぶ権利の多面収益化の事業設計

UFCとWWEの興行IP、IMGのメディア権利販売、On Locationの観戦体験を一つに束ね、放映権・興行・協賛・物販の4つで稼ぐ構造を、Form 10-K(2025年12月期)の数値から確かめます。

分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム

この事例の要点

  • TKO Group Holdings, Inc.は、UFCとWWEが持つ興行IPに、IMGのメディア権利販売とOn Locationの観戦体験を組み合わせ、「メディア権利・制作・コンテンツ」「ライブイベント・ホスピタリティ」「パートナーシップ・マーケティング」「消費者向け商品ライセンス」の4つの活動で収益化しています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 2025年12月期の売上高は4,735.2百万ドル(前期4,884.2百万ドル)、調整後EBITDAは1,585.3百万ドル(前期1,081.9百万ドル)で、売上が減る中で利益が増えています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 放映権の契約期間は通常3〜5年、特に大きな契約は7〜10年とされ、UFCはParamountと7年、WWEはNetflixと初期10年の契約を結んでいます(Form 10-K、2025年12月期)。

どんな事業か

TKO Group Holdings, Inc.は米国の企業で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。UFC(総合格闘技)とWWE(スポーツエンターテインメント)を2023年9月に統合して設立され、2025年2月28日にEndeavor Group Holdingsから、IMG事業、On Location、PBR(プロ・ブル・ライダーズ)を取得しました。取引の評価額は約32.5億ドルに調整額0.5億ドルを加えたもので、TKO OpCoの普通持分約2,654万単位の発行で支払われています(Form 10-K、2025年12月期)。

同社は、UFC・WWE・PBRといったIP(知的財産)の所有と、IMGによるメディア権利の流通、On Locationによる高付加価値の観戦体験を組み合わせ、メディア視聴からライブ観戦まで、ファンとの接点を一社でそろえる立場にあると説明しています。報告セグメントはUFC、WWE、IMGの3つです(Form 10-K、2025年12月期)。

収益の仕組み

同社は収益を4つの活動に分けて開示しています。入り口は人気のある興行IPで、そこから複数の課金先に展開する構造です。

  • メディア権利・制作・コンテンツ:ライブイベントと独自番組を放送局・配信事業者にライセンスします。IMGの取得後は、権利者に代わって放映権を販売する流通業務も収益に加わります。UFCは2026年からParamountが米国での全イベントの独占配信を担い、WWEはNetflixがRawの世界独占配信を担っています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • ライブイベント・ホスピタリティ:チケット販売や、On Locationなどによる観戦パッケージです。
  • パートナーシップ・マーケティング:Meta、Ram Trucks、Anheuser-Busch、IBM、Procter & Gambleなどとの提携が例示されています。
  • 消費者向け商品ライセンス:ブランド商品のライセンスなどです。

放映権は複数年の契約が中心なので、収益の見通しを立てやすい一方、更新の時期には条件の再交渉が必要になります。

数字で確かめる

  • 総売上高は4,735.2百万ドルで前期の4,884.2百万ドルから減り、調整後EBITDAは1,585.3百万ドルで前期の1,081.9百万ドルから増えました。IMGの売上が減っても全体の利益が伸びており、利益の源泉がIPを持つ事業側にあることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • UFCの売上は1,502.2百万ドル、調整後EBITDAは851.0百万ドルで利益率は57%、WWEは売上1,709.4百万ドル、調整後EBITDAは896.5百万ドルで利益率52%でした。IPを自社で持つ事業は、売上の半分以上が利益に残る構造であることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • IMGのライブイベント・ホスピタリティの売上は611.3百万ドルで前期の1,156.8百万ドルから減り、セグメント全体の売上は1,367.3百万ドル(前期1,970.2百万ドル)、調整後EBITDAは160.0百万ドル(前期は△48.0百万ドル)でした。売上が縮んだ一方で、調整後EBITDAが赤字から黒字に転じたことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • WWEのメディア権利・制作・コンテンツの売上は1,000.6百万ドルで前期の865.5百万ドルから増え、パートナーシップ・マーケティングは159.6百万ドル(前期83.0百万ドル)に増えました。放映権の更新と協賛の拡大が同時に進んでいることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 営業活動によるキャッシュ・フローは1,285,725千ドルで前期の586,084千ドルから増え、繰延収益は663,015千ドル(前期416,695千ドル)でした。前受けを伴う契約が積み上がっていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「コンテンツIPの多面展開」の型で読むことができます。一つの試合や番組という資産から、放映権・チケット・協賛・商品という複数の収益を取り出す構造です。UFCとWWEの利益率が5割を超えているのは、競技や物語という「中身」を自社で持ち、配信先やスポンサーが増えても中身を作り直す費用がほとんど増えないためだと考えられます。

もう一つ注目したいのは、IMGの位置づけです。IMGは他の権利者のために放映権を売る流通側の事業で、売上は大きい一方、調整後EBITDAは小さい水準です。自社IPの事業と、他者の権利を扱う事業を並べて開示することで、どこで利益が生まれているかを比べやすくしています。売上の規模より「何を持つか」が利益を左右することを、この開示は示していると読めます。

この型で課題になるのは、依存先の集中です。大きな放映権契約が少数の配信事業者に結びついているため、更新の条件が収益に大きく響く可能性があります。複数年の契約で見通しを得る代わりに、契約の更新が大きな意思決定になる、というトレードオフが中心にあると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が持つ「中身」(ノウハウ・コンテンツ・データ)を、一つの売り方だけでなく複数の課金先に展開できていますか。
  • 自社の収益のうち、自社で所有する資産から生まれる部分と、他者の資産を仲介して得る部分は、それぞれいくらですか。
  • 大きな契約が少数の相手に集中していませんか。更新の時期に備えて、他の売り先を用意できていますか。

小さく試すなら

  1. 自社が提供している成果物(動画・資料・講座・データなど)を一覧にし、現在の売り先と課金方法を表に整理します。
  2. 同じ成果物で、まだ売っていない相手(法人向けの利用許諾、協賛、物販など)を2〜3案挙げます。
  3. 最も実現しやすい1案について、既存の顧客3〜5社に簡単な提案を出し、反応を聞きます。
  4. 2〜4週間後に、追加で作り直さずに売れた成果物の割合と、売上の増え方を記録して、続けるかどうかを決めます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:TKO Group Holdings, Inc. / UFC・WWE・IMG。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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