この事例の要点
- Waters Corporationは、クロマトグラフィー、質量分析、熱分析の分析機器とソフトウェアを提供する会社で、機器に加え、カラムなどの消耗品とサービスを販売しています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上は3,165,286千ドル(前期2,958,387千ドル)で、サービス売上は1,188,186千ドル、化学消耗品は631,458千ドルでした(Form 10-K、2025年12月期)。
- 売上の59%は製薬企業向けで、2026年2月9日にはBD(Becton, Dickinson and Company)のバイオサイエンス・診断ソリューション事業の買収を完了し、事業はこれから大きく変わる局面にあります(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Waters Corporationはニューヨーク証券取引所に普通株式(ティッカー:WAT)を上場しており、自社を「分析機器とソフトウェアの世界的なリーダー」と説明しています。液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析(MS)のシステム、分離カラム、関連する消耗品とサービスが主な製品です。従業員は2025年12月31日時点で約7,900人です(Form 10-K、2025年12月期)。
顧客は、2025年の純売上の59%が製薬企業向け、30%がその他の産業向け、11%が大学・政府機関向けでした。売上の約69%は米国外で計上されています。同社は2026年2月9日にBDのバイオサイエンス・診断ソリューション事業の取得を完了し、買収額は負債を含め168億ドルで、BDの株主が統合後の会社の約39.2%を保有する、リバース・モリス・トラスト方式の取引と記載されています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
機器を売ることで利用基盤をつくり、その後の消耗品とサービスで収益が続く構造です。
- 入り口:LC・MSなどの分析機器システムを顧客が導入します。2025年のWatersの機器システム売上は1,101,826千ドル、TAは243,816千ドルでした。
- 課金:機器本体のほか、カラムなどの化学消耗品(631,458千ドル)と、保守・サポートなどのサービス(1,188,186千ドル)があります(Form 10-K、2025年12月期)。
- 継続:資料は、ACQUITY UPLC機器の設置台数の拡大がカラム事業を強化すると述べています。機器と消耗品の相乗効果が高いという記載もあります(Form 10-K、2025年12月期)。
サービスと保守がWatersの売上の35%を超えたこと(TAでは25%超)も、資料に明記されています。
数字で確かめる
- 売上:3,165,286千ドルで、前期の2,958,387千ドルから7%増えました(Form 10-K、2025年12月期)。機器中心の事業が成長を続けていることが読み取れます。
- 製品とサービス:製品売上は1,977,100千ドル、サービス売上は1,188,186千ドルで、サービスは売上全体の約38%にあたります(1,188,186÷3,165,286で計算、Form 10-K、2025年12月期)。売上の約4割が、機器の販売後に続くサービスによるものであることが読み取れます。
- 継続収益に近い項目:化学消耗品とサービスを合わせると1,819,644千ドル(前期1,679,692千ドル)です。これは資料の項目を足した数値で、同社の記載では継続収益の成長率は2025年が8%、2024年が5%です(Form 10-K、2025年12月期の項目から計算)。継続的な売上が機器より安定して伸びていることが読み取れます。
- 利益:営業利益は802,588千ドルで前期の826,353千ドルから3%減り、純利益は642,629千ドルで1%増でした(Form 10-K、2025年12月期)。売上が伸びても営業利益は前期を下回ったことが読み取れます。
- 業界への依存:製薬向け売上は2025年が59%、2024年が58%でした(Form 10-K、2025年12月期)。売上の過半が、一つの業界の投資動向に結びついていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、「ハードウェア+サービス」と「保守・消耗品によるリカーリング」の型で読めます。機器は一度導入されると、その上で使うカラムなどの消耗品と、保守のサービスが継続して必要になります。機器の売上は景気や顧客の投資計画に左右されますが、設置された機器の台数が増えるほど、消耗品とサービスの土台は広がると考えられます。
この型で重要なのは、機器を売る時点で、その後の収益の入口を持っていることです。資料が、機器と消耗品の相乗効果と、カラムをシリカや樹脂の処理から自社で行うことに触れているのは、継続収益を自社で取り込むための設計だと読めます。ただし、設置台数や継続率の数字はこの資料からは確認できなかったため、機器から継続収益がどの程度生まれているかは、売上の内訳から推し量るにとどめます。
一方で、売上の59%が製薬企業向けであることは、一つの業界の動向が収益全体に影響することを意味します。継続収益で安定を作りながらも、顧客の業種の集中をどう扱うかは、この型に共通する課題だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品やサービスを一度導入した顧客に、その後も必要になる消耗品や保守、更新にあたるものは何ですか。
- 初回の売上と、その後に積み上がる継続的な売上を、別々に数えていますか。
- 売上が特定の業種や顧客層に偏っているとき、その業種が冷え込んだ場合の備えはありますか。
小さく試すなら
- 過去2年の売上を「初回の販売」と「導入後の継続的な売上」に分けて集計します。
- 導入済みの顧客リストに、直近12か月で追加購入や保守の契約があったかを記入し、継続している割合を計算します。
- 継続していない顧客3〜5社に、導入後に困ったことを聞き、継続のきっかけになりそうな項目を書き出します。
- 2〜4週間の間、その項目を一つだけ案内に加え、問い合わせや追加購入の数を記録します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Waters Corporation / 分析機器と消耗品・サービス。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25