← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Yum China「KFC・ピザハットの会員デジタル基盤」に学ぶ外食チェーンの事業設計

中国でKFCとピザハットを展開するYum Chinaは、約18,000店の注文の大半をデジタルで受け、会員基盤と物流を自社で持ちます。直営とフランチャイズの組み合わせを、10-Kから確かめます。

分類:企業事例 › 外食・レジャー

この事例の要点

  • Yum China Holdings, Inc.は、中国でKFC、ピザハット、タコベルのブランドを運営・再許諾する独占的な権利を持ち、2025年末で18,101店を展開しています。2025年の収益は11.8十億米ドルです(Form 10-K、2025年12月期)。
  • KFCとピザハットの会員は合計5.9億人を超え、会員の売上はシステム売上の61%を占めました。2025年の会社売上の約94%がデジタル注文でした(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 店舗の約83%を直営、約17%をフランチャイズとして運営しています。今後は新規店のうち、フランチャイズの割合を引き上げる方針です(Form 10-K、2025年12月期)。

どんな事業か

Yum China Holdings, Inc.は米国の企業で、米国の市場に上場し、SECにForm 10-Kを提出しています。事業は中国(香港、マカオ、台湾を除く)で、KFCとピザハットのブランドを、独占的に運営し、再許諾する権利に基づいて行っています。ブランドの商標は、米国のYum! Brandsの子会社との基本ライセンス契約に基づいて使用しています(Form 10-K、2025年12月期)。

2025年12月31日時点で、KFCは12,997店(2,500を超える都市)、ピザハットは4,168店(1,000を超える都市)です。そのほか、Lavazza、黄記煌(Huang Ji Huang)、小肥羊(Little Sheep)、タコベルなどを展開しています。黄記煌と小肥羊は、同社が知的財産を自ら持つブランドです(Form 10-K、2025年12月期)。

収益の仕組み

収益は、直営店の売上と、フランチャイズからの収入が中心です。

  • 入り口:アプリや微信(WeChat)のミニプログラムで会員登録を受け、注文、ポイント、特典を提供します。
  • 課金:直営店の売上が収益の中心です。フランチャイズ店からは、加盟金と、売上の一定割合の継続的な料金(システム売上の平均約6%)を受け取ります。そのほか、食材・包材の販売や、広告、配送などのサービスの対価もあります。
  • 継続:会員向けの有料の特典制度を導入し、来店頻度と購入額を引き上げようとしています。34か所の物流センターが、直営店、フランチャイズ店、第三者向けに供給します。

数字で確かめる

  • 2025年の収益は11.8十億米ドルで、前年から4%増えました。うち新規店の貢献が3%、既存店売上の伸びが1%です。営業利益は11%増えました(Form 10-K、2025年12月期)。出店が増収の主な要因であることが読み取れます。
  • 店舗数は2016年末の7,562店から2025年末の18,101店に増えました(年平均成長率は約10%)。同社は2026年に20,000店、2030年に30,000店を目標としています(Form 10-K、2025年12月期)。出店を続ける前提で事業を設計していることが読み取れます。
  • KFCとピザハットの会員は5.9億人を超え、会員売上がシステム売上の61%を占めました。デジタル売上は10十億米ドルを超えています(Form 10-K、2025年12月期)。売上の過半が、顧客を識別できる形で積み上がっていることが読み取れます。
  • 配送売上は、KFCとピザハットの会社売上の約48%を占めます。KFCの90%超、ピザハットの95%超の店舗が配送に対応しています。同社は、配送比率の上昇が収益性の圧力になりうると記載しています(Form 10-K、2025年12月期)。売上を伸ばす手段が、費用の増加も伴うことが読み取れます。
  • フランチャイズの割合は約17%で、今後は2026〜2028年の新規店のうち40〜50%をフランチャイズとし、2028年に全体の割合を20%台にする計画です(Form 10-K、2025年12月期)。直営中心から、直営とフランチャイズの組み合わせへ移す方針であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、ブランドの権利、会員データ、物流、店舗運営を一体で持つことで、新しい店を増やしやすくしている設計だと読めます。注文の大半がアプリ経由なら、新しい店舗でも、既存の会員に案内できます。会員は、新しい業態(コーヒーなど)を試す入り口にもなります。同社が、KFCの店内に併設するコーヒー店を、約50店(2023年)から約2,200店(2025年)に増やした点は、その使い方の一例と読めます。

さらに、フランチャイズの割合を増やす方針は、出店に必要な資金を分担する狙いがあると考えられます。会員基盤と物流を自社で持っているため、店舗の運営を委ねても、顧客と供給の流れは手元に残る。ただし、品質の一貫性を保つ負担は、フランチャイズの割合とともに大きくなります。資料も、加盟店が基準を守らない場合のリスクを挙げています。

留意点は、配送比率の上昇に伴う費用と、食の安全への信頼を失うリスクです。会員基盤の強さは、これらの影響が出たときにも、顧客に直接伝えられるという意味で効くとOtsumuは見ます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の顧客の取引のうち、誰が買ったかを把握できている割合はどのくらいか。
  • 新しい商品やサービスを出すとき、既存の顧客に最初に案内できる経路を持っているか。
  • 事業の一部を他社に任せる場合、顧客との接点と品質の管理は手元に残せるか。

小さく試すなら

  1. 1週目:直近3か月の売上を、顧客を識別できるものとできないものに分け、割合を出す。
  2. 2週目:識別できない取引について、会員登録や連絡先の取得を促す簡単な仕組み(来店特典、予約など)を1つ決める。
  3. 3週目:仕組みを一部の店舗・商品・窓口で試し、登録率と再来率を記録する。
  4. 4週目:登録した顧客に新商品を案内して反応を測り、会員向けの特典の有無で購入額がどう変わるかを比べる。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Yum China Holdings, Inc.「KFC・ピザハットの会員デジタル基盤」(中国)。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗