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Zalando SE「ファッションEC・パートナー事業・B2B」に学ぶ自社販売と手数料と物流提供を重ねる事業設計

ファッションECの自社販売に、他社商品を載せるパートナー事業、物流・ECプラットフォームのB2B事業を重ねるZalandoの事例です。2026年上期の半期報告書から、流通額と売上のずれが示す収益構造を確かめます。

この事例の要点

  • Zalando SEは、ZalandoとLounge by Zalandoの2つのアプリ、およびABOUT YOUのコマース事業をB2Cセグメントとし、物流(ZEOS)やECプラットフォーム(SCAYLE)などをB2Bセグメントとして報告しています(Half-Year Report 2026)。
  • 2026年上期の流通総額(GMV)は9,199.7百万ユーロ、売上は6,420.6百万ユーロで、ABOUT YOUの取り込みを除いた比較では、GMVが5.0%増、売上が2.2%増と説明されています(Half-Year Report 2026)。
  • GMVと売上の差は、パートナー事業では販売価格がGMVに入る一方、売上は受け取る手数料に限られるためと、同社自身が説明しています(Half-Year Report 2026)。

どんな事業か

Zalando SEは、ドイツ・ベルリンに登記上の本店を置く欧州株式会社(SE)で、公開企業です(Half-Year Report 2026)。ファッション領域のオンライン販売を中心に、2026年6月末までの直近12か月で6,250万人のアクティブ顧客を持つと報告しています。

同社は2025年7月11日からABOUT YOUを連結しています。B2CにはZalandoのアプリ、パートナー事業、リテールメディア事業、ABOUT YOUのコマースが含まれます。B2Bには、物流受託のZEOS Fulfilment(ZFSとMCFを含む)、ABOUT YOUのEC基盤SCAYLE、プラットフォーム連携のTradebyte、メディア・広告代理のHighsnobietyが含まれます(Half-Year Report 2026)。

収益の仕組み

半期報告書の説明を整理すると、収益は大きく3つの層に分かれています。

  • 自社販売:顧客に商品を売る売上。B2Cセグメントに入ります。
  • 手数料・広告:パートナー事業の手数料、決済サービス、リテールメディア(広告)などの「その他サービス」の売上です。B2CとB2Bに配分されます。
  • 物流・基盤の提供:ZEOSの物流やSCAYLEなどを他社に提供し、B2Bセグメントの売上とします。

GMVは、キャンセルと返品を除いて顧客に売られた商品の価値(VAT込み)と定義され、B2Bの売上やパートナーの手数料、リテールメディアは含まれません(Half-Year Report 2026)。つまりGMVは「取り扱った商品の大きさ」、売上は「自社が得た分」として、別々に読む必要があります。

数字で確かめる

  • GMV:9,199.7百万ユーロ、前年同期比21.0%増(2026年上期)。ABOUT YOUを含めた比較で5.0%増(Half-Year Report 2026)。買収による増加と、既存事業の成長を分けて見る必要があることが読み取れます。
  • 売上:6,420.6百万ユーロ、22.2%増。ABOUT YOUを含めた比較では2.2%増(Half-Year Report 2026)。パートナー事業の拡大では、GMVほど売上が伸びない構造であることが読み取れます。
  • 調整後EBIT:269.6百万ユーロ、マージン4.2%(前年同期は232.3百万ユーロ、4.4%)(Half-Year Report 2026)。利益額は増えたものの、率はわずかに下がったことが読み取れます。
  • B2Bセグメント:売上631.4百万ユーロ(25.7%増)、調整後EBIT 66.4百万ユーロ、マージン10.5%(前年同期は17.2百万ユーロ、3.4%)(Half-Year Report 2026)。B2CのEBITマージン3.5%より高い水準で、物流とECプラットフォームの提供が利益面で寄与していることが読み取れます。
  • 顧客:アクティブ顧客6,250万人、直近12か月の顧客あたりGMV 307.0ユーロ、注文数4.8回、平均バスケット63.4ユーロ(Half-Year Report 2026)。1人あたりの購入額が穏やかに伸びていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、マーケットプレイス(取引手数料)、管理型マーケットプレイス、広告、物流受託の型が重なっていると読めます。顧客が集まる場所を持つと、他社の商品を載せて手数料を得ることができ、広告枠を売ることもでき、さらにその裏側の物流や基盤そのものを他社へ売ることもできる。1つの接点から複数の売上の層を引き出す設計だと考えられます。

この設計が成り立つ前提は、顧客数と購入頻度という「需要の集まり」だとOtsumuは見ます。6,250万人という顧客基盤があるから、パートナーは出品する価値があり、広告主も出稿する価値がある。その需要の上に、物流やECプラットフォームを外販しても使い手が見つかると考えられます。

一方で、トレードオフも資料から読み取れます。パートナー事業が伸びるほどGMVに比べて売上の伸びが小さくなり、物流網の再編に伴う一時的な費用がかかるなど、収益の見え方が複雑になります。自社販売、手数料、B2Bのどれを伸ばすかによって、必要な在庫・物流・人員が変わるためです。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の顧客接点に、他社の商品やサービスを載せて手数料を得る余地はあるでしょうか。
  • 自社で磨いてきた裏側の仕組み(物流・運用・システム)を、他社向けに提供できる単位に切り出せるでしょうか。
  • 取扱高と売上の差を、社内の指標でどう分けて見るべきでしょうか。

小さく試すなら

  1. 直近の売上を、自社が仕入れて売ったもの、他社商品の仲介、広告・紹介、裏側の仕組みの提供の4つに分けて集計し、現状の構成を確認します。
  2. 顧客に「自社では扱っていないが、一緒に買いたいもの」を5〜10名に聞き、他社商品を載せる候補を挙げます。
  3. 候補の提供元1〜2社に、手数料の考え方(売上のうち何をどちらが負担するか)を相談する前提で、条件のたたき台を作ります。
  4. 2〜4週間で、少数の商品だけを試験的に紹介し、売上、問い合わせ、返品・対応の手間を記録して、継続するかを判断します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Zalando SE / ファッションEC、パートナー事業、ZEOS、SCAYLE。参照資料:Half-Year Report 2026(2026年6月30日までの半期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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