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OTSUMU KNOWLEDGE

Zoom Communications, Inc.のビデオ会議に学ぶ事業設計

無料ユーザーを入り口に、有料ライセンス数と追加製品で売上を積み上げるZoom Communications, Inc.。フリーミアムと席数課金の組み合わせが成り立つ条件と、顧客の人員減が売上に響くという席数課金の弱点を学びます。

この事例の要点

  • Zoom Communications, Inc.は、Zoom Meetings、Zoom Phone、Zoom Team Chatなどを束ねた「Zoom Workplace」と、Zoom Contact Centerなどの「Zoom Business Services」のサブスクリプションで売上を得ていると説明しています(Form 10-K、FY2026)。
  • 無料ユーザーを呼び込み、直販やオンライン、再販業者などを通じて有料版へのアップグレードと組織内での拡大につなげる、と同社は説明しています(Form 10-K、FY2026)。
  • 売上高は$4,868.8 million(前年比4.4%増)、Enterprise顧客の純ドル拡大率(過去12か月)は98%でした(Form 10-K、FY2026)。

どんな事業か

同社は、会議、チャット、電話、コンタクトセンター、イベントなどをまたいで協働できるAIファーストのワークプラットフォームを提供していると説明しています。社内の協働向けにZoom Meetings、Zoom Phone、Zoom Team Chat、Zoom Docsなどを含む「Zoom Workplace」、営業・マーケティング・カスタマーエクスペリエンスのチーム向けにZoom Contact Center、Zoom Revenue Accelerator、Zoom Eventsを含む「Zoom Business Services」があります。2023年9月に投入した「Zoom AI Companion」は、対象となる有料サービスの利用者には追加費用なしで含まれます(Form 10-K、FY2026)。

顧客は2種類に分けて管理されています。直販チーム、再販業者、戦略パートナーを通じて獲得した「Enterprise customers」と、ウェブサイトから直接申し込む「Online customers」です。後者には個人の消費者から中小企業までが含まれると同社は説明しています(Form 10-K、FY2026)。

収益の仕組み

中心となるのはZoom Workplace Pro、Business、Enterpriseのバンドルで、Education、Healthcare、Government向けのプランもあります。同社は、サブスクリプション売上は主に顧客内の有料ライセンス数と追加製品の購入によって決まると説明しています。部門単位で導入が始まり他部署へ広がる「land and expand」のモデルが大規模な導入につながってきたとも述べ、無料ユーザーが会議の参加者にZoomを体験させることを見込み客の獲得モデルと位置づけています(Form 10-K、FY2026)。

費用の側では、売上に対する比率が売上原価23.0%、研究開発17.4%、販売・マーケティング28.5%、一般管理8.1%でした(Form 10-K、FY2026)。

数字で確かめる

  • 営業利益(Income from operations)$1,123,633 thousand、売上高比23.1%。粗利率は77.0%(前年75.8%)(Form 10-K、FY2026)。成長は緩やかでも営業段階で利益を出していることが読み取れます。
  • 純利益$1,900.1 millionのうち、戦略投資の評価益が$969.8 million(Form 10-K、FY2026)。純利益には本業以外の評価益が大きく含まれることが読み取れます。
  • 売上に占める割合はEnterprise顧客60.3%、Online顧客39.7%。Enterpriseのサブスクリプション売上は6.5%増、Online顧客の売上は1.2%増(Form 10-K、FY2026)。成長の中心がEnterprise側にあることが読み取れます。
  • 過去12か月の売上が$100,000を超える顧客は4,468(前年4,088)で、売上の32.8%(Form 10-K、FY2026)。大口顧客の比重が高まっていることが読み取れます。
  • Online顧客の月次平均解約率は2.8%、16か月以上継続する顧客のMRRがOnline MRRの74.9%(Form 10-K、FY2026)。長く続く顧客が小口事業の土台であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。フリーミアムの観点では、無料ユーザーが会議に他の人を招くことで、有料でない人にも製品が届く構造が要点と考えられます。無料利用は広告に代わる入り口で、有料化は直販や再販業者が担う分業と読めます。ただし販売・マーケティング費は売上の28.5%を占め、無料の入り口があっても営業への投資は続いていると考えられます。

席数課金の観点では、顧客の人数が増えれば売上が伸び、減れば売上も減ります。同社は採用の減速や席数のダウンセルにより純ドル拡大率が100%を下回ったと説明しており、このトレードオフが表れた例と読めます。同社がZoom Phone、Zoom Contact Center、Workvivoなど追加製品の販売機会を挙げていることから、席数以外の拡大軸を持つことが成り立つ条件の一つと考えられます。

裏側で必要な仕事は、2種類の顧客を別の指標で運営することです。Online顧客では解約率と長期継続顧客の比率を、Enterprise顧客では大口顧客数と純ドル拡大率を見ていると読めます。AI Companionを有料サービスに追加費用なしで含める判断も、有料プランの価値を上げて継続を支える狙いと考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 無料で使う人が、自然に同僚や取引先を巻き込む場面は自社のサービスにありますか。
  • 課金の単位(人数、件数、拠点数など)は、顧客の事業が縮んだときにどれくらい売上に響きますか。
  • 小口と大口の顧客を同じ指標で見ていませんか。
  • 有料顧客に追加費用なしで提供している機能は、継続率にどう効いていますか。

小さく試すなら

  1. 1週目:顧客を小口と大口に分け、それぞれの月次解約率と1顧客あたり売上の増減を直近数か月分並べます。
  2. 2週目:無料や試用の利用者が他の人を招待・共有した回数と、招待を受けた人の申し込み件数を記録し始めます。
  3. 3週目:課金単位が減った顧客を洗い出し、追加で提案できる機能や製品がないかを担当者と確認します。
  4. 4週目:招待からの申し込みが見えれば無料の入り口を強化し、見えなければ導線を変えて再計測します。追加提案で単価を保てた顧客があれば提案の型にします。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Zoom Communications, Inc. / ビデオ会議を中心としたワークプラットフォーム。参照資料:Form 10-K(FY2026)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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