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Zscaler「Zero Trust Exchange」に学ぶクラウド型セキュリティの事業設計

通信の出入口をクラウドで守るZscalerが、売上33.5億ドルの大半を代理店経由のサブスクリプションで得ている構造と、パートナー販売の厚みが生む論点を、米国の年次報告書Form 10-K(FY2026)の数値から読み解きます。

分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS

この事例の要点

  • Zscalerは、ユーザー、端末、ワークロード、AIエージェントをアプリケーションやデータにつなぐクラウド基盤「Zero Trust Exchange」を提供しています。売上は1〜5年のサブスクリプション期間にわたって計上されます(Form 10-K、FY2026)。
  • 売上の大半は、通信事業者、システムインテグレーター、再販業者、クラウドのマーケットプレイスなどの販売パートナー経由で得ています。直販チームがパートナーと組んで顧客を開拓する形です(Form 10-K、FY2026)。
  • 追加ユーザー、追加ソリューション、上位バンドル、利用量に応じた課金を重ねて、顧客内の契約を広げる設計です。同社は、特定の最終顧客が売上の10%を超えたことはないと記載しています(Form 10-K、FY2026)。

どんな事業か

Zscaler, Inc.は、普通株式をNasdaq Global Selectに上場している米国企業です(ティッカー ZS)。自社を「AI時代のサイバーセキュリティ・プラットフォーム」と位置づけ、中核の「Zero Trust Exchange」は、利用者・端末・ワークロード・AIエージェントを、ID と事業ポリシーにもとづいてアプリケーション、AIモデル、データへつなぐクラウドネイティブな基盤だと説明しています(Form 10-K、FY2026〔2026年7月31日終了年度〕)。

同社は2026年7月31日時点で約11,000社の顧客を持ち、Forbes Global 2000の40%超、Fortune 500の50%超が顧客だと記載しています。従業員1,500人超の組織は推計約20,000社あり、そのうち4,600社超に提供しているとも説明しています(Form 10-K、FY2026)。

収益の仕組み

収益はサブスクリプションとサポートが中心です。売上は契約期間にわたって均等に計上され、契約期間は通常1〜5年です。請求は月次・四半期・年次の前払い、複数年の前払いなどがあります(Form 10-K、FY2026)。

  • 入り口:販売パートナー(通信事業者、システムインテグレーター、再販業者、パブリッククラウドのマーケットプレイス)と直販チームが共同で顧客に提案します。
  • 課金:ユーザー数を軸にしたサブスクリプションに、追加のソリューションや上位バンドル、ユーザー数に依存しない従量制の価格設定を重ねます。「Z-Flex」というプログラムでは、事前に合意した支出枠の範囲で顧客が製品を選べます。
  • 継続:契約期間の前払い請求が繰延収益となり、期間にわたって売上に計上されます。パートナー契約は通常1年で自動更新、90日前の通知でどちらからも解約できます。

数字で確かめる

  • FY2026の売上高は3,352.5百万ドルで、前年比25%増でした。FY2025は2,673.1百万ドル(23%増)です(Form 10-K、FY2026)。規模が大きくなっても成長率が維持されていることが読み取れます。
  • 売上の約98%がサブスクリプションとサポートで、プロフェッショナルサービスは重要性が低いと記載されています(Form 10-K、FY2026)。売上の大半が継続契約に由来していることが読み取れます。
  • 上位5社の販売パートナー(関連会社を含む)経由の売上は、FY2026が31%、FY2025が28%、FY2024が25%でした(Form 10-K、FY2026)。パートナー経由の販売が厚く、上位への集中も年々高まっていることが読み取れます。
  • 国際顧客からの売上比率は、FY2026が47%、FY2025が49%、FY2024が50%でした(Form 10-K、FY2026)。海外比率は約半分で、わずかに下がる傾向があることが読み取れます。
  • FY2026の営業活動によるキャッシュ・フローは1,129,654千ドル、フリー・キャッシュ・フローは779,143千ドルで、GAAPの売上総利益率は77%でした。ARRは3,771百万ドルと記載されています(Form 10-K、FY2026)。前払い請求を中心とする契約が、現金の創出につながっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、サブスクリプションと代理店販売に、従量課金の要素を重ねた型だと読めます。通信の出入口を握る製品は、一度組み込まれると他社への入れ替えに手間がかかります。そのため、契約を広げる方向(ユーザー追加、機能追加、上位バンドル)に、営業の力を向けやすい構造だと考えられます。

販売パートナーを厚くすると、自社の営業人員だけでは届かない顧客層に広げられます。一方で、売上の一部が上位パートナーに寄るため、パートナーの意向や条件に事業が左右される面も出ます。上位5社の比率が上がっていることは、その両面を示す数字だとOtsumuは見ます。

自社の事業に置き換えるなら、「自社で売る範囲」と「他社に任せる範囲」の線引きが論点です。任せるほど広がりますが、顧客との接点や条件の決定権が薄まります。どの顧客層で、どの接点を手元に残すかを、先に決めておく必要があります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上のうち、他社の販売網を通る割合はどれくらいで、その上位への集中度は把握できているか?
  • 契約後に、利用者数・機能・利用量のどこから拡張できる設計になっているか?
  • 継続契約の期間と請求のタイミング(前払い・後払い)は、現金の動きにどう影響しているか?

小さく試すなら

  1. 直近の売上を、直販・紹介・再販など経路別に分け、上位の取引先への集中度を一覧にする。
  2. 既存顧客を数社選び、契約後に広がった範囲(人数・機能・利用量)を聞き取って記録する。
  3. 拡張の選択肢(追加利用者、上位プラン、従量部分)を一枚にまとめ、既存顧客の数社に見せて反応を確かめる。
  4. 経路ごとの利益と、顧客との接点の残り方を比べ、どの経路を伸ばすかの仮説を2〜4週間で立てる。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Zscaler, Inc.「Zero Trust Exchange」。参照資料:Form 10-K(FY2026、2026年7月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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