データマートとは
データマートとは、全社のデータを集めたデータウェアハウス(DWH)などから、特定の部署や分析目的に必要なデータだけを切り出し、すぐ使える形に整えたデータの集まりです。
身近な例えでいえば、DWHが「何でもそろう大きな倉庫」なら、データマートは「営業部向け」「マーケティング向け」のように用途別に品ぞろえした「売り場」です。担当者は倉庫の奥まで探しに行かなくても、売り場で必要なものを手に取れます。
英語の Data Mart がそのまま使われており、「マート(市場・売り場)」という言葉が用途別の小さな単位であることを表しています。
仕組み・DWHとの関係
一般的なデータ基盤は、次のような層に分かれます。
| 層 | 中身 | 主な利用者 |
|---|---|---|
| 取り込み層(生データ) | 各システムから取り込んだままのデータ | データ担当者 |
| DWH(統合層) | 顧客IDや日付の形式をそろえ、全社共通の定義で整えたデータ | データ担当者、分析者 |
| データマート | 部署や目的ごとに集計・結合済みのテーブル | 事業部門、BIツール |
データマートを作るときの主なポイントは次のとおりです。
- 目的を一つに絞る:「月次の営業会議で受注状況を見る」「広告チャネル別の獲得効率を見る」など、使う場面から決めます。
- 集計の粒度を決める:日別か月別か、顧客単位か商品単位か。粒度が粗すぎると深掘りできず、細かすぎると重くなります。
- 指標の定義を固定する:売上、有効顧客、解約などの計算方法をマート側で確定させ、BIツールごとに計算し直さないようにします。
- 更新タイミングを決める:朝の会議に間に合うよう夜間に更新する、など利用時間から逆算します。
実務での使い方・具体例
架空のBtoB SaaS企業を例にします。DWHには、課金データ、プロダクトの利用ログ、CRMの商談データが集まっています。しかし、カスタマーサクセス担当がそのままダッシュボードを作ろうとすると、毎回複雑な結合や集計が必要で、人によって数字が変わってしまいます。
そこで「カスタマーサクセス用マート」として、顧客企業ごとに「契約プラン」「月額」「直近30日のログイン人数」「主要機能の利用有無」「次回更新日」を1行にまとめたテーブルを作ります。BIツールはこのテーブルだけを参照するため、担当者は更新が近く利用が少ない顧客をすぐに抽出できます。
同じDWHから、経営会議用には「月次の売上・解約・新規獲得」を集計したマートを別に用意します。元データは一つのまま、用途ごとに見やすい形を出し分けるのがデータマートの役割です。
新しくマートを作るときは、次のような流れで進めると使われるものになりやすくなります。
- 利用者と利用場面を決める(例:毎週月曜のカスタマーサクセス定例で、担当顧客の状況を確認する)
- その場面で答えたい問いを書き出す(例:更新が近いのに利用が落ちている顧客はどこか)
- 問いに答えるための項目と粒度を決める(顧客企業ごとに1行、など)
- 項目ごとの定義と元データの場所を表にまとめ、関係者と合意する
- 試作したテーブルを実際の会議で使い、足りない項目や不要な項目を調整する
項目を後から足すのは比較的簡単ですが、最初から何でも入れたマートは誰にとっても見にくくなります。「この会議で使う」という一点から始めるのが近道です。
よくある誤解と注意点
- マートを部署ごとに乱立させると数字が合わなくなる:各部署が独自のロジックでマートを作ると、DWHを作る前と同じ「部署ごとに売上が違う」問題が再発します。指標の定義は共通化し、マートは見せ方の違いにとどめます。
- DWHがなくてもマートは作れるが、管理が難しくなる:小規模なら各システムから直接マートを作ることもありますが、元データの変更が全マートに波及しやすくなります。
- 使われないマートは負債になる:更新処理と保守のコストがかかり続けます。利用状況を定期的に見て、不要なものは止めましょう。
- 作る前に「誰が、いつ、何を判断するか」を書き出す:これがあいまいだと、項目を盛り込みすぎた使いにくいテーブルになります。
関連用語
- DWH(データウェアハウス):データマートの元になる全社共通のデータ保管庫
- データレイク:形式を問わず生データをためておく場所
- ETL・ELT:データを集めて加工する処理方式
- BIツール:データマートを参照してグラフや表を作るツール
関連記事:指標の定義が部署ごとにそろわない問題:KPI定義書の作り方
Otsumuに相談できること
データマートの設計で一番難しいのは、技術よりも「どの判断にどの数字が必要か」を決めることです。OtsumuのKPI改善コンサルティングでは、会議や業務で使う指標と定義を整理したうえで、ダッシュボード開発としてマートの設計から可視化までを支援します。
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執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01